あらすじ
ペレス警部のもとに、アンスト島でエレノアという女性が失踪したとの知らせがはいる。彼女はテレビ番組の制作者で、親友の結婚式への出席と取材を兼ねて、夫や友人たちと島を訪れていた。現地に渡ったペレスが捜索をはじめてまもなく、エレノアは死体で発見される。島に伝わる少女の幽霊――1930年に溺死した“小さなリジー”のことを取材していた彼女は、失踪する前日に「浜辺で踊る白い服の女の子を見た」と話していたが、そのことと事件との関係は……。シェトランド諸島を舞台に、繊細かつ大胆に織りあげられた、現代英国本格ミステリの優品。/解説=松浦正人
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
シェトランド島シリーズの六作目。
ペレス警部はだいぶ復調したようで良かった。
事情聴取ではひたすらに相手の言葉を待ち、
ふらりと単独捜査に出てしまうペレス警部に、
ウィロー警部がいらいらするのはよくわかる。
単独捜査をするならするで、
ガーっと猪突猛進してくれた方が良いかも、と。
アントス島で行われた里帰り結婚式に参加していた女性が殺される。
彼女は海岸で踊る白い服の少女を見たと言っていた。
少女は島に伝わる幽霊なのか。
それとも実在する子供なのか。
そしてサンディ。
相変わらず、捜査中にお昼の心配をしたり、
あわててパニックになりながら手にメモを書いたり、
ウィローとペレスにはさまれてあわあわしたりと、
相変わらずなところもあるが、
ペレス警部に学んで、証言の引き出し方がうまくなっていた。
地元に貌が広いのも、愛されキャラなのも、
警戒心を相手に抱かせないのも、警官の重要な資質だよね。
警部にも「指導すべき子供」から「同僚」と認められて、良かった。
事件を通じて、
昔のガールフレンドと再会したけど、うまくいくのだろうか。
Posted by ブクログ
シェトランド諸島を舞台に、その自然の美しさや住む人の人情の厚さや人間関係などもうお馴染みになったしまっているはずなのに読むごとに発見する新しい、もしくは古い因縁めいた出来事に心奪われる。
そして今回もまた。
幽霊譚、過去に起きた悲しい事件をも踏まえて、今を生きるカップル、親子関係も事件に関わってゆく。
謎は深く絡み合ってそこでまた枝葉を広げるがごとくストーリーはより複雑に・・・
ぜひぜひこのぺレスシリーズまだ続いてほしい。
今後もシェトランド諸島の新しい面を発見してみたい。
Posted by ブクログ
シェトランド諸島最北端に位置するアンスト島にて、里帰り結婚式が催された。
新婦キャロラインと新郎ロウリーは、大学時代の友人とそのパートナーの本土人4人を招いていた。
アンスト島にはその昔、島きってのお屋敷の幼い娘が水難事故に遭ってから、その子の幽霊"小さなリジー"が現れるという民間伝承がある。
新婦友人のエレノアはパーティ後、同行者3人とのクールダウンの語らいの場でその"小さなリジー"を見たとの目撃談を披露。
"小さなリジー"を見るとその後子を授かるという風説、流産によりいっとき心身喪失状態に陥っていたエレノアという組合せにより、一同は戸惑いを隠せない。
からの翌朝のエレノアの失踪、そして見つかる遺体というお決まりの流れ。
ジミー・ペレスの完全復活回。
途中ペレスの復調をサンディが喜ぶシーンがあるほど、その行動力や洞察をウィローが半ば嫉妬気味に羨み、部下の振る舞いとしては反感を買うほどに事件に積極的に入り込む。
『地の告発』で先取りしてしまったサンディの色恋沙汰の芽生えも書かれており、ああこうやって始まったのかと、逆順に読む恋の種明かし的展開も興味深い。
この一冊としての事件を巡るWHOとWHYを最終盤まで引っ張る構成力もさることながら、これまで一貫して築き上げてきた、主要登場人物達の立ち振る舞い、シェトランド諸島という閉鎖空間のもたらす場の空気感、混入されるミステリーに何とも言えない没入感を得る。
長い年月、数多の事件を経て辿り着いた現在地点のように感じるが、僅か6作目(自分は間違えて『地の告発』を先に読んでしまっているので7作目)。
決してそこまで多く巻数を重ねているわけではないのにペレス、サンディに感じるこの愛着感は何なのだろう。
何と言ってもやはり4作目に配した大きな転換点が効いている。
あの出来事を起点にすることで過去、現在、未来が広がりを見せているし、その存在感が浮き上がる。
次はいよいよグランドフィナーレ(なのか?)『炎の爪痕』。
あぁ、終わって欲しくない。