あらすじ
その筋では知られる書店『四谷書廓堂』の文庫文芸担当として働く女性店員、楠奈津。なによりも本を愛する彼女が、日々店にやってくる困ったお客様や出版社の営業担当を相手に奮闘する姿をコミカルに描いていく――。
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Posted by ブクログ
体育会系の書店で働く新人バイトと教育係の物語。店内を見張る隠しカメラが仕込まれていたり、お店に住みつく神様(比喩でなく)がいたりと型破りなお店なんだけど、厳しいながらも楽しそうな環境だと感じる。こんな本屋が近所にあればいいのになあ。
フィクションながら、書店や出版の業界のことも主に最初の二章で紹介してくれている。田口幹人著『まちの本屋』の直後に読んだのだけど、なんか繋がりがあって面白かった。特に「新刊は年に8万冊も出ている」というところから、書店員は全ての本に向き合うことはできない、でも頑張って向き合おうとしているという想いが両書とも通底しているように思われて、その想いにフィクションとノンフィクションの両方で触れられたのが面白かった。
誤植がわりと目についたのは残念。午前と午後が間違っていたりとか。たくさんの本が出るからその全てに向き合えない、というのを、図らずも示してしまった感じ。でも、本書でも語られているように書店員さんが一つ一つの本に向き合えないのは仕方ないとしても、せめてメーカーたる出版社は、出す本の全てに誇りと愛情を持ってほしいんだけどなあ。ということで星1つ減。
本屋さんの話ということで、作中作が主に2作出てくるけれど、この2つともが素晴らしい。第三章のヨマドーの作者の語りは、主人公二人の普段の会話が軽いこともあってとてもインパクトがあるし、第四章の『佐藤君は終端速度で』なんて、作者にこれ一冊改めて書いて出してほしいくらい。
お仕事小説は、基本こんな風に登場人物が暑苦しいくらいのほうが好みだなあ。作者さんの続巻、お待ちしてます。