あらすじ
壮絶な介護の末に母を送ったあの日から10年。いま、冬子は自ら終わりを見据えはじめる……正面から「人生」と向き合い問い続けた先に開ける、真の自由を描く著者20年ぶりの傑作長篇!
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Posted by ブクログ
【母と娘の血縁と解放】
語りての冬子が認知症になった母を介護しているシーンから始まり、
半ば、7年にわたる介護を終えますが、
自身の人生の終わりを意識した終わりにいたるまで、
母の生き様が冬子の生き方の土台にあるような、
そんなお話でした。
フィクションですが、著者の体験記的小説となっているようです。
・・・
シングルマザーとして冬子を育ててきた母。
神経症を患いながらも、一人娘を育て上げる。
冬子は10代から、母とは一定の距離を置き生きてきていた。
22歳で新卒で入った出版社を31歳まで勤めたのち、独立し、絵本書店「ひろば」を始める。
そして今は自分が母の世話をする。
子どものような無垢な母。
すぐ、「あっち側」に行ってしまう母。
母に育てられた日々を思い返さずにはいられない。
母はどんな思いで生きてきたのか。
__子どもという存在が、大人を「こっち側」に引き留めておくのだ。(本文より)
神経症の症状がなくなったのは、祖母(母の母)が他界したとき、冬子の実の父が他界したとき、だったか。
それは母にとっての何かしらの解放だったのか。
そしてふと訪れた7年の介護への終止符。
いつしか自分も老いていく。
__いくつかの死を体験して、子どるの頃の重圧であり、母の介護が始まってから再びの重圧となった死への恐怖は、すでにいまのわたしにはなかった。
わたしが子どもを迎えたいと思わなかったのも、子であることの重さに耐えられないと思ったからかもしれない。この母のために死んではならないという思い詰めた日々。なんという重さだったろうか。わたしという子どもを迎えた母も、同質の重さをずっと抱えていたに違いない。血縁という鎖を先に解くことができたのは、認知症になった母のほうだったが。(本文より)
72歳になった冬子が、41年間続けてきた「ひろば」の経営を、信頼する同僚に譲り渡すところで、ストーリーは終わる。
・・・
かけがえのない親との関係、
それを分かっていてもどうにもならない何かがある。
解放でもあり、未練でもあり、常に両面が合わさっているような経験。
どんなに考えても知ることはできないお互いへの思いが二人をつなぎ、突っ放し、引き戻し、その存在を受け入れるときに、緩まるような。
私たちもそれぞれに避けては通れない、関係の変化をもたらす出来事を経て、この奇妙なつながりを思い返し、付き合い方を学んでいくのだろうと思いました。
Posted by ブクログ
読み終わってまず、著者の体調が心配になった。
だって冬子は体の異変を感じ、精密検査の結果を待つとこで終わるんだもの。
いつも若々しい落合さんも73歳なんだものね。
お母さんを自宅で10年以上介護して著者が幼い頃から強迫神経症と闘ってきていたおかあさんと一緒に落合さんも闘っていたんだね。