あらすじ
失意の銅山経営から帰国した是清は、実業界に転身。銀行業界に入り、正金銀行副頭取を経て、日銀副総裁へと出世する。折しも日露戦争が勃発、是清は祖国の命運を担い、外債募集のため、アメリカ、そしてイギリスへと赴くが……。破天荒な青春を経て財政の神様となった明治人の生涯。〈解説〉井上寿一
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日本がロシアの属国になるかどうかの瀬戸際だった日露戦争における高橋是清の活躍は、改めて素晴らしかったと思った。また外債を引き受けてくれたヤコブ・シフやアーネスト・カッセル卿などの人々は日本の恩人である。
自伝上下巻を読み終え、明治の外交史、財政史、経済史を学べた上、是清の「利害を打算せず、常に条理に基づいて行動する」という姿勢はこれから社会人になる自分にとってとても参考になった。
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自伝の後半は銀山経営で詐欺にあい、無一文になった是清に友人たちが助けの手を差し伸べ、日銀に職を得るところから始まる。建築所事務主任。日銀本店の建物は是清の知恵と努力の賜物だった。
銀行家としての実績を積み上げ、横浜正金銀行の経営に乗り出し副頭取に。やがて日銀の内紛に巻き込まれ、日銀副頭取となる。
やがて日露関係が悪化し、日露戦争が勃発。ここからが下巻のクライマックスである戦費調達のための5回にわたる外債起債だ。
起債のために数多くの英米独仏の有力者と信頼関係を築き、市場動向を見極めながら次々と起債を成功させていく。
最初の起債では、イギリスでは希望の半額の500万ポンドしか発行できないところに、アメリカ人のシフというユダヤ人がロシアのユダヤ人救済の気持ちを現したいということから残りの500万ポンドを一手に引き受けたという話が出てくる。この話は初めて知ったが、是清には運も味方した様だ。
自伝は52才までの記録で終わる。この後政界でも大活躍し、最期は2.26事件で思わぬ人生の最期を迎えてしまうわけだが、どうやら『随想録』を読むとこの続きが読めるようだ。
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波乱万丈の高橋是清の半生を描いた口述自伝。ペルー銀山の開拓に失敗しどん底から実業界に転身した是清が、着々と立身を重ねついには日露戦争における資金調達という国運を左右する大仕事に挑む下巻。
上下巻通して読んでいてまず感じたのは、その桁違いの馬力。常に無私の境地でものごとを押していく感じの凄さがあった。そしてリレーション力。主にロンドンにおける日露戦争間後の外債発行においても、光明を見出すきっかけとなったユダヤ人アメリカ金融家シフとの出会いを始め、各国の要人とするすると関係を築いていってしまう。自身の口述ゆえ淡々と描かれているが、この人以外にはできない芸当だったであろうことが伝わる。歴史を紐解くと時たま、その時代が呼び寄せたヒーローと思うような人物が見つかるけど、その類だったんだろう。この自伝は第五回外債発行に成功するところで終わっているけど、数十年後、「財政の神様」として昭和恐慌下に陥った日本をもう一度救うことになる。
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単調な筆致で少し飽きてくるところもあったが、これだけ流転を繰り返す人生は珍しく、とても興味深かった。英語以外に専門性があるようにも思えないが、本質をとらえて専門家の話を聞いて調整して決めるのがポイントのように感じた。
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是清人生のハイライトの1つ、日露戦争の戦費獲得のため外国を飛び回る。そこでこの自伝は終わる。52歳。81歳まで生きてるから先を知るには続編の自伝を読まなければならないようだ。