あらすじ
赤ちゃんのことを告げられなかった。まさか、こんな形で知られるとは……。
旅で訪れたギリシアの島で気品に満ちた男性と出会ったベス。浜辺で言葉を交わすうち強く惹かれ合い、めくるめく夜を過ごした――連絡先も名字も告げず、ただ思い出だけを分かち合い、ふたりは別れた。やがて妊娠に気づいたベスは厳格な両親の不興を買って実家を出たが、数カ月後、仕事でロンドンにいる間に激痛に襲われ、破水してしまう。搬送先の病院で早産の赤ん坊を取り上げることになったのは、なんと、あの忘れえぬ一夜を共にした、おなかの子の父親エリアス!再会の衝撃に動揺するベスとは対照的に、彼はいたって冷静だ。生まれてくるのが我が子だと知ったら、彼はなんと言うかしら?しかし、エリアス側にもまた、重大な秘密があるのだった……。
■命の現場にたずさわり、自らの人生経験が遺憾なく発揮された真に迫る作品で人気の作家キャロル・マリネッリ。本作では、牧師の娘として生まれた内気なヒロインと、高貴な生まれゆえに懊悩するヒーローとの、劇的なシークレットベビー・ロマンスを満喫できます。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
良かったです。
感動に包まれて涙しそうになった場面が随所にありました。そして、それらのシーンの積み重なりが控えめだけれど清らかな光を放つかのように、この作品を極めて心暖まる作品にしています。
正直、ハーレクインを読んで泣いたのは初めてかもしれません。
いつも波瀾万丈のストーリーとトキメキを感じて面白く読むのですか、今回は少し違っていました。
互いのこともろくに知らず、浜辺で知り合い一夜限りの恋に落ちた二人。
それで納得して翌朝には別れ、ヒロインは予期せぬ妊娠をしてしまう。
―と、ここまではよくあるお話なのですが、そこからが従来とは一線を劃していました。
何と、早産で救急外来に運び込まれた先でヒロインの出産に立ち会い、赤ちゃんを取り上げたのは他ならぬ赤ちゃんの父親である男性だったからです。
一夜限りの恋の相手が医師というのもよくある設定かもしれませんが、医師にして王族というのは―笑
しかも、存在どころか相手の女性の妊娠も知らないのに、いきなり出産に立ち会い、我が子を取り上げるという意表をつかれる展開は珍しいだけでなく、読者の興味をかりたててやみません。
NICU―新生児集中治療室、救命医療の現場の臨場感溢れる描写、小さな命が危機に瀕して必至で生きようしている姿、それを見守る両親の悲痛な祈りなど、単なる恋愛小説の枠を越えた感銘的なシーンが次々と出てきます。そこに読者は異色の設定に興味だけでなく、「生命の尊さ」を見ることになるでしょう。
著者が元は救命医療現場の看護士であったという経歴が大いにいかされ、また、そういう「命の現場」を見た人だからこそ描けるリアリティ溢れる作品に仕上がっています。
すばらしい!!
本の帯には「おすすめ」と書いてありますが、確かに「オススメ」どころか超お勧めです。
私は普段から読んで
―人生も捨てたものじゃない、生きるって良いな。
と思える作品が好きです。
何故なら、そういう作品を読むと、自分自身も元気を貰えるような気がするから。
この作品は、まさにそういう作品です。
刺激的な恋愛の顛末よりは、「命の重さ」に重点が置かれて描かれている珠玉の作品です。
また、予期せず子供の両親となった若い二人が戸惑いつつも次第に距離を縮めてゆくプロセスも素敵でした。
大抵は、予期せぬ子供がいると判った途端、ヒーローは「結婚しよう」と宣言するのですが、このヒーローは子供に対して深い愛情と理解を持ち、誠意を尽くそうとはするものの、結婚に対して慎重な態度を貫きます。
そういうところも、「隠し子発覚」いきなり結婚というパターンとは違っていて良かった。
最後に。
以前、王子が医師であるというお話は読んだことがあるのですが、そのときは母国で医師として活躍しているという筋書きでした。
その時、王族が医師として普通に現場で働けるものだろうかと、少し疑問に思ったのです。
ですが、この作品では「母国では王族は医師として活躍できない」ということで、王子が他国で医師として働いている時、ヒロインと出逢いました。
そういうリアルな設定も良かったですし、何より、ヒーローがありがちな「俺様」ではなかったところが私にはとても好感度が高かったです。