あらすじ
問題作復活! 落語界を揺るがした大事件。
師匠に翻弄される弟子たちの悲哀と混乱、そして敬愛と憎悪のすべて。
「もう決めた、あたしゃ、伝家の宝刀を抜く!」
昭和53年、名人・三遊亭円生は、柳家小さん率いる落語協会の真打ち量産体制に異を唱え、一門を率いて協会を脱会した。
この騒動に落語界は大揺れし、円生の弟子たちは翻弄された。
当時、自身が見た真実をどうしても書かずにおられないと、弟子の一人で騒動の最大の被害者でもある円丈が書き上げたのが、本書である。
見たまま、感じたままを、忖度なく実名で書き綴った赤裸々な本書は、刊行当初、世間を騒がせ、関係者を困惑させ、あるいは激怒させた。
その問題作を、30年あまりの時を経て復刊した。
この間、立川談志、古今亭志ん朝、先代三遊亭円楽ら、登場人物の多くが鬼籍に入った。一方、本書の文芸としての価値が見直された。
文庫化にあたって、後日譚を書き加え、さらに三遊亭円楽・小遊三両師をまじえ、騒動のその後を語った「三遊鼎談」を収録した。
感情タグBEST3
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ここまで赤裸々に書かれていて、よく理解できた 昔から知っていた五代目圓楽の素顔には驚いた それと業界は違っても師匠と弟子という微妙な関係や思いというのを、共感を持って読んだ
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落語協会分裂をめぐる最良のノンフィクション。円丈師匠の立場を臨場感をもって追体験できる。この筆力は、並の作家では真似できない。
落語に興味のないビジネスパーソンも、上司とのしがらみから会社の派閥争いに無理矢理巻き込まれ、派閥争いに負けた側の悲哀が十分伝わってくる。円楽師匠に対する見方が変わってくる本。
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以前、神田伯山がラジオで紹介していたので気になり読んでみた。
落語協会分裂騒動についてはそういうことがあった程度の知識しかなかったので、その詳細を知り驚き呆れ楽しんだ。
全編、歯に衣着せぬ物言いであるが、なかでも三遊亭圓楽(五代目)に対する罵倒がすさまじく、出版当時の反響を想像し戦慄した(巻末に文庫版で追加された六代目圓楽と小遊三との鼎談があり、少しホッとした)。
主要な関係者がほぼ鬼籍に入っているせいか、「スキャンダル」というよりも「落語史」として受け取れた。
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どこかで書評を目にしてからずっと読みたかった1冊。
何だこれ、めちゃくちゃ面白いじゃないか!
『赤めだか』を読んで笑って泣いて。落語家の世界の特殊さと懐の深さと才能にずっと感動していた。
これは方向性が真逆!伝統の世界ってこんなにしがらみだらけなの?つまらないプライドや派閥が蔓延るの?
そのせいでこんなに沢山の人が泣いて苦しまなきゃいけないの?面白いのに苦しくて思わず一気読み。
全てを曝け出す覚悟と、そうしなければ自分の心が壊れそうという叫びが書かせた文章。圧巻。そもそも文章が面白いのに、何という作品。
再出版に際しての対談は、その時の熱が冷めていた。そりゃそうなんだけど。でもその対談すら歴史的なものだとは。呑気に笑点観てる場合じゃなかった笑
事実は小説より奇なりを地で行く感じ。
もはやドラマ。創作より創作。
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円丈師匠、私の中ではドラゴンズ好きなオジさんというイメージしかなかったが、最近落語を聞き出し、いろんな一門を知り、落語協会分裂騒動はwikiだけでなくぜひこの本読まなきゃと手にしてみた。いやー面白かった。
そして先代圓楽が嫌なヤツだなと深く刻まれた。
圓生師匠、噺家としては一流だけど組織の中で動く人としては実に難あり、多くの弟子を預かる身としては実に危なっかしい人であることがよーくわかった。その後の人生が大きく変わった人もいるわけだし。
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今から40年前の昭和53年、東京の落語界を二分する
大騒動が巻き起こった。
その前に東京の落語会システムを簡単に説明。東京には上方落語にはない「真打ち制度」がある。真打ちとは文字通り「真を打つ」、つまりお客を納得させるだけの芸の持ち主を真打ちと認める制度。
この真打ち昇格が分裂騒動の端緒となる。当時の落語協会会長 柳家小さんが行った「大量真打ち」。落語ブームに乗り大所帯になった落語協会。これまでの芸の熟成を待った真打ち昇進の方法では、時間がかかり、中々真打ちが出てず、❛つっかえ状態❜が続く。その打開策として現実主義の柳家小さんは、10人をまとめて真打ちに昇進させる。
そのことに対し「粗製乱造の極み!」と真向反対を示したのが落語原理主義者の三遊亭圓生。圓生は芸に厳しく、落語協会会長時代は実力の伴わない落語家を真打ちにさせなかった。現実主義者VS原理主義者のガチンコ対立のはじまり〜はじまり〜である。
普通なら、理想と現実の齟齬を話し合いを持ち、妥協するところは譲り、よりよい方向を探っていくところだけど、圓生はその手続きを取らず、一門を率いて協会離脱を決意する。
この圓生師匠、名人の誉れ高い圧倒的な芸の力があるものの政治力はなく、そこに加え一言居士の性格も災いし、ついつい不興を買ってしまう可愛くない人柄。
要するに小さんのような包容力もないから、人も寄りつかない、そんな人がクーデターを起こしても賛同を得るなんて夢のまた夢。これを百も承知で御輿に担いだのが立川談志と5代目三遊亭圓楽(歌丸さんの前に笑点の大喜利の司会をしていた巨顔馬面の御仁)。
マスコミは「落語協会分裂騒動」とやんや書き立てはしたが、大勢はあっけなく決着。当初、新協会に参加予定だった古今亭志ん朝・月の家円鏡ら大物落語家も次々と元の落語協会へ復帰となるわ、定席の寄席からは閉め出しを喰らうわ、圓生の理想とする新団体構想は露と消える。
圓生は協会とは袂を分かち、一番弟子の圓楽とも不仲に。一方、名人圓生の芸は枯れるどころか独演会は常に満員、弟子たちを率いて全国を精力的に落語行脚するも過労がたたり、約1年後に急死。
そんな顛末を、この騒動から6年後に上梓。
本人曰く95%事実であり、登場人物はすべて実名表記。また、その多くが現役バリバリの落語家ばかり。
世間は大いに驚き、ある関係者は怒り狂い、別のある人は困惑したり無視を決め込んだりしたというそこまで言って委員会本。
とりわけ著者が大嫌いな兄弟子三遊亭圓楽についての
筆誅は容赦なく、自身が真打に昇進した際の御祝儀額
まで暴露するわ、いかにやな奴であるかを仔細に執拗に描く描く。
僕もテレビ画面を通じてであるが、傲岸不遜な人格と睨んでいただけに、裏付けるエピソード満載で我が意を得た気分。
あくまでもこれは著者から見た「私家版騒動顛末記」。例えば、お茶碗を横から見れば三角形、上から見れば円形に見える。それと同じで今回の場合は、その人のことを好きか嫌いかにより描かれる風景は天と地ほどに差が生じる。
巻末には「三遊鼎談」という、6代目三遊亭圓楽(楽太郎)・三遊亭圓丈・三遊亭小遊三の3人が参集し、40年の時を経て、当時を語る。楽太郎は本書を指して「うちの師匠は破ったか捨てた」と言い、小遊三はこの本を読んだ時の印象を「はじめてエロ本を読んだときの衝撃を受けた!」さすがは笑点のレギュラー、名人圓生師匠の抜いた伝家の宝刀譚をエロ本のドキドキ感に例えるととは…、シャレが効いてますわ。
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噂には聞いていたが、読むと非常に面白く、どんどん読み進められる
当事者が語る歴史小説(明智配下の末端幹部が語る本能寺の変?)、のような感じで、混乱と不信の中で動いていたことがよく分かる
五代目圓楽氏についても、最後の会談を読む限り、評価の部分はさておき物事の一面としては間違ってないのだろう。いろいろな人が集まっているのが落語の世界であることはよく分かる
Posted by ブクログ
噺家さんの書くものにハズレはない、それが内幕を暴露するものであればなおのこと。本著に記された事件はまさに落語界のパワー・ポリティクスであり、当事者の混乱ぶりが手に取るように伝わってくる。それが部外者にとっては滑稽でしょうがない。
Posted by ブクログ
三遊亭円生がしかけた、落語協会からの分裂騒動。
その渦中にいた弟子である円丈による、事の顛末の詳しい説明。
円生に心酔していた志ん朝が分裂に最終的に加わらなかったところが、キーポイントの1つかな。人望という点では円楽、談志は彼の足元にも及ばないとのこと。
円生は師弟の信頼関係より、秘密主義を選択してしまった。ここに新協会が敗北した原点があるということだ。作戦を遂行するために、騙すには身内からという作戦もあるが、失敗した場合のリスクはかなり高いね。
「円生は三遊本流の総帥なのだ。いつも三遊派の繁栄を考えて、先を読み、次の世代に円生を継承しなければならない。その円生は、俺たちを戦争孤児にしてしまい、落語協会に戻る弟子たちは三遊難民なのだ。いくら円楽、談志にそそのかされたとはいえ、絶対許さん。」というところに円丈が自分の師匠に対する気持ちが凝縮されている。
円生と五代目円楽の亀裂も赤裸々に描かれている。
師匠を慕って入門したはずなのに、弟子は師匠に守ってもらえず結果的に憎しみにかわるという、なんとも悲しい一門のように思えた。定
結果的に、分裂騒動は五代目円楽一門会という形で残っている。やはり定席にでることは難しいみたいだけど、なんだかアットホームな雰囲気を感じる団体です。分裂騒動が反面教師となっているのかなぁ。
ぼくが生きている間に、新しい円生は誕生するのだろうか。