あらすじ
小鳥のように愛され、平和な生活を送っている弁護士の妻ノラには秘密があった。夫が病気の時、父親の署名を偽造して借金をしたのだ。秘密を知った夫は社会的に葬られることを恐れ、ノラをののしる。事件は解決し、夫は再びノラの意を迎えようとするが、人形のように生きるより人間としていきたいと願うノラは三人の子供も捨てて家を出る。近代劇確立の礎石といわれる社会劇の傑作。
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Posted by ブクログ
イプセンはウェルメイド・プレイの構成生かし、自己認識と独立を現実的に反映するために劇という象徴を用いて理想主義のもろさを明らかにしている。
観客が、この戯曲が女性の解放を表している作品であるという先入観に縛られ続けているため、ウェルメイド・プレイであるという構成が、同じ結末を保証するものではないということを忘れていることを暗示している。
作品の大半ではノラが完璧であろうという家族像にしがみついている様子が描かれている。従って、観客はこの戯曲の理想的な結末がどのようなものであるべきかを振り返り、結局ノラの家出がこの戯曲の山場、すなわちクログスタッドとの対立・衝突を解決しているか否か、その判断が観客の観点に委ねられる。
つまり、この作品は女性の独立と社会進出を描いた作品なのか、それとも女性であることを最大限に利用し夫を操り支配するノラの利己心を描写しているのか、考えさせられる作品だ。
Posted by ブクログ
読みやす〜い!
ノラの態度が最後で劇的に豹変したように見えるが、彼女が言う通りそれまでの彼女は演じていただけなんだろう。
「あたしは何よりも先に、あなたと同じように人間であると信じています、ーーいいえ、むしろ人間になろうとしているところだといったほうがいいかもしれません。」
Posted by ブクログ
母親なのに子供置いていくのはどうなの?と思ったが、そもそもこの考え方が女性に特定の役割を期待するものであったことに気がついた。知らず知らずのうちに差別意識を抱いていた。
子供を置いていくなんて、などと反発が出ることも織り込み済みでこんな展開にしたのだろう。
Posted by ブクログ
なぜ家族の中で人形として扱われていたのに旦那の病気に 騙してまでお金を使ったのかが よくわからなかった。 気楽だからそのまま 演技し続けたかったのだろうか。 そこのところがうまく飲み込めなかった 。女性解放の 書とは 必ずしも 言い切れないと思う。それに過去のヨーロッパの話だが 現代日本でも実際にこういう話は多いんじゃないかと私は思う。 世間体でだけ存在して実際には腹を割って話し合ったことがない 夫婦のこと。
Posted by ブクログ
舞台part2を観に行くので、予習。
発表された当時の雰囲気はどのようだったのだろう。最後のシーンの絶望と胸がすく感じ、70年近く経ってもまだ共感できてしまうところが凄みであり、救いのなさも同時に感じる。
ノラの秘密に対して、その迂闊さや無知さに若干の苛立ちを覚えたけれど、誰も教えてくれず、教えないようにして、抑圧してきた時代は暗闇の中手探りするようで、完璧な立ち回りなんて出来るわけがない。そう思うと、ノラの勇気と知性──実は幸福ではなかったこと、既に愛していないことを認め、伝えることができる強さは清々しい。
イプセンの現実を切り出す明晰さが全てだ。解説では問題提起としては時流を過ぎ、既に陳腐化というような言及があるが、とんでもないと思う。(もちろん相対的に状況は改善している。)
とはいえ、男女の平等は近づきつつあるけれど、それは多くの人が(男女を問わず)ヘルメル化しているということであって、21世紀に入ってなおノラは、今もまだ孤独と絶望を抱えて踊っている。だからこの戯曲は幾度も演じられ、告発は続いているのではないか。
現代に至るまで数多の闘いがあり、勝ち取られてきた権利の庇護下に置かれている私は、擁護者たる自覚が希薄なのだと、最近はとみに思う。
Posted by ブクログ
ずいぶん昔に読んでいたが、内容をすっかり忘れていた。
ノラは確かに可愛いのだけど、愛情の為にやった事なら罪ではないと考えるようなお目出度い人。しかしある事をきっかけに夫に対する不信感が芽生え家を出て行く事に。戦前の日本でもこの芝居を見た年配のご婦人は「しょうのない嫁」だと嘆いたんだとか。
ノラの気持ちもわからなくもないが、その時代に女が1人で生きて行くなんて並大抵の事じゃなかったはず。それまでまるで子どものママゴトのような日常を送ってきた人が果たしてやってっけるのかと余計な心配をしてしまう。
社会をまったく知らない箱入奥様のノラに対して自力で生きてきたリンネ夫人は逆に家に入るという選択をする。現在もさほど状況が良くなっているとも言えない。わかっていながら敢えて夫の人形になってしまうリンネ夫人のような女性が実は最も多いんじゃないかな。