あらすじ
古い文明は必ず美酒を持つ。醸造酒でありながら世界的に見ても珍しい蒸留酒並のアルコール度を誇る日本酒。麹カビから育てた酒の文化史・社会史を古今の書に探り、科学の眼で語る。「火入」「生もと(きもと)」「山廃造り」等、日本の酒造りの方法はどこが興味深くまた優れているか。醗酵学者・坂口博士(1897-1994)の決定版・日本酒読本。
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Posted by ブクログ
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世界の歴史をみても、古い文明は必ずうるわしい酒を持つ。すぐれた文化のみが、人 間の感覚を洗練し、美化し、豊富にすることができるからである。それゆえ、すぐれた 酒を持つ国民は進んだ文化の持主であるといっていい。一人びとりの個人の場合でも、 或る酒を十分に鑑賞できるということは、めいめいの教養の深さを示していると同時 それはまた人生の大きな楽しみの一つでもある。
酒の神さま・坂口謹一郎先生に「名酒と はどんな酒だと思われますか?」と聞いてみたことがあった。する のど と、すかさず返ってきた返事が、「喉にさわりなく、水の如く飲め る酒」というものであった。雑味が無く、淡麗妙味なる酒。坂口謹 一郎先生は本物の酒の神さまであった。
Posted by ブクログ
原書は1964年刊行。当時の醗酵学のえらい先生が書いたもの。学者であると同時に、酒の愛好家といった風情が文章から伝わってくる。特に酒の味・香りを論じだして、食事とのバランス、飲むタイミングにまで話が及ぶのは酒飲みの視点である。日本の酒の歴史や製法や、微生物学的なバックグラウンドまであつかう。
・明治初期の資料に残る酒は超辛口だった
・今はあまり使わないが「ピン」という味の表現。キュッと残る後口を表す
・食事との相性軽視、熟成軽視が洋酒と違う
・戦争前後の原料難と西洋文化尊重が、近代以降の日本酒文化の蓄積を阻んだかも
・昔は年中つくっていた。寒造りが広がったのは江戸期から
・杜氏、山地の民の冬の副業が起源か
・速醸もと:乳酸を人工的に添加する⇔生もと、山廃
半世紀近く前の本なので、ところどころの記述に時代を感じる。当時より続く日本酒消費の衰退傾向に歯止めがかかっていないのは残念。しかし、日本酒の平均的な品質は上がってきているとも言える。作り方、飲み方、流通させ方によっては、まだまだ未発掘の魅力があるかもと思わせる。