あらすじ
〇情報通信技術は世界の姿を一変させ、さらにグローバル化は進む。保護主義は時代錯誤だ。貿易ではなく、知識のフローの変化こそが重要なのだ。いまこそグローバル化の真実に目覚める時だ――。本格派国際経済学者が放つ話題の書。
〇人類史上のグローバル化の歴史を整理し、産業革命以前を「グローバル化前史」、産業革命以降、1990年以前を「オールド・グローバリゼーション」、90年代以降を「ニュー・グローバリゼーション」と名づける。産業革命以降のグローバル化により、先進国と新興国という「大いなる分岐」が進んだ。しかし、90年代以降のコミュニケーション技術の進歩により、モノ、アイデアの移動の制約が著しくなくなり、グローバル・バリューチェーン革命により、グローバル化の質が大きく変化、世界の富の分布が変わり、G7諸国と一握りの新興国との経済は収斂しつつあると論じる。そして、さらなる情報テクノロジーの進歩により、ヒトの移動さえ制約が解消されるグローバル化の未来を大胆に展望します。
〇最新の国際経済学の研究をもとに、収斂が進むグローバル化のリアルな姿を、豊富なデータ、日本をはじめとする各国の経験をもとに説得力豊かに描き出します。また、従来の比較優位理論や貿易政策・産業政策はもはや有効ではない、と説きます。世界の現実を理解するうえで欠かせない必読書です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
なんて凄い本だ。あらゆる人に読んでほしい。政策立案に関与する人には特に読んでほしい。
【以下のレビューにネタバレあり】
筆者はグローバリゼーション進展を、①モノの移動コストの低下、②アイデアの移動コストの低下、③ヒトの移動コストの低下の三段階に区分し、産業革命は①を引き下げることで世界に「大いなる分岐」をもたらしてG7の発展につながり(第一のアンバンドリング)、近年のICT革命は②を引き下げることで世界に「大いなる収斂」をもたらし、その結果世界では途上国が急速に成長しているとする(第二のアンバンドリング)。
第二のアンバンドリングにおいては、競争力の源泉は国ではなく、企業やサプライチェーンを源泉とするため、従来の経済政策は思うように効果を上げられない。経済政策には今、発想の転換が求められている。
…本書のこうした議論を読んで、グローバリゼーションに対する理解がとてもクリアになったように思う。この本に書かれているのは、革新的な「世界の捉え方」だ。
本書の最後では、ヒトの移動コストが下がった未来に何が起こるかを論じている。個人的には、この未来予測にワクワクせざるを得なかった。
読み終わる頃には、これからの世界と日本に思いを馳せていた。
超良書。ずっと大切にしていきたい本。
ただ一点、訳は惜しかったなぁ。
Posted by ブクログ
オールドグローバリゼーションとニューグローバリゼーション。
1990年以降、世界貿易に占めるG7の割合は低下し、中国、韓国、インド、ポーランド、インドネシア、タイが増えた。
オールドグローバリゼーションは、蒸気機関の発明による産業革命で物流コストの低下がきっかけ、ニューグローバリゼーションはICT革命によるアイデアの移転コストが低下したことがきっかけ。
オールドグローバリゼーションは選手のトレード、ニューグローバリゼーションはコーチの派遣。
次の革命は、人間の移動に変わるテレプレゼンスとロボット化で人間が移動するコストが低下するのと同じ効果が表れる。
比較優位が国単位ではなくなった。比較優位が無国籍化した。部品だけでもサプライチェーンの一躍を担えるとすると、世界経済に組み込まれることは容易になる。自国の能力だけで比較優位を確立することはできない。
北の発展は人口の増加によるもの。市場の規模の拡大が工業化のインセンティブになった。
ニューグローバリゼーションでは、北に近い部分のみに起こった。ダイソンは工場を移転したが、サービス部門は移転しなかったため、縮小しても雇用は守られた。先進国はサービス部門に特化した。
オールドグローバリゼーションではセクターレベルで比較優位が争われたが、ニューグローバリゼーションでは行程レベルで比較優位を生かせる。
賃金が上昇しても、貿易は減らない。サプライチェーンに組み込まれているから。
今後は生産は3Dプリンターでモノの移動もなくなる。
どこでも生産できるようになる。