【感想・ネタバレ】いつかの人質のレビュー

あらすじ

宮下愛子は幼いころ、ショッピングモールで母親が目を離したわずかなすきに連れ去られる。それは偶発的に起きた事件だったが、両親の元に戻ってきた愛子は失明していた。12年後、彼女は再び何者かによって誘拐される。一体誰が? 何の目的で? 一方、人気漫画家の江間礼遠は突然失踪した妻、優奈の行方を必死に探していた。優奈は12年前に起きた事件の加害者の娘だった。長い歳月を経て再び起きた、「被害者」と「加害者」の事件。偶然か、それとも二度目の誘拐に優奈は関わっているのか。急展開する圧巻のラスト35P! 文庫化に当たり、単行本から改稿されたシーンも。大注目作家のサスペンス・ミステリー。(解説:瀧井朝世)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

愛子ちゃん理不尽に2回も誘拐されて可哀そうだが、ちゃんと家族からの庇護にも向き合って成長を感じた。
愛子ちゃんの周りにいい人が集まりますように。

夢を追うのをやめるのと、続けるの、どっちも難しいのかなぁ。

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2023年11月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

芦沢さんの作品好きなんですよね。
面白かったです。

まずとにかく、モヤッとさせるのが上手い。
ミステリー部分は丁寧に組み立てられているため真相にとてもスッキリとできるのに、読後のこのモヤモヤ感。それが好き。

なんと言うのかな、人間の嫌な部分、見たくない部分、を描くのが上手いよなあ。
江間夫妻や優奈、優奈の母もですね。決して根っからの「悪人」では無いのだけど、それぞれにとても傲慢に感じる。
でもそれは、きっと誰もが持っているもので、それが見方によっては、描き方によっては、気持ち悪くて押し付けがましい傲慢さとして感じられる。怖いなあ。自分の中にもあるんだろうな、直視するのが怖いだけで。

終わり方も、個人的には物凄くモヤる。
いやお前、結局諦めきれないんかーい!とw
あれだけ逃げておいて、結局、もしかしたらいつかは…って、そこでタイトル回収するんかーい!
なるほど。「いつかの人質」は過去誘拐され、再び誘拐されてしまう愛子のことでありながら、「『いつか』(というものに囚われた、という意味で)の人質」は優奈だった、ということなのかな。
解説読む感じ、単行本とはラストが違うらしいのでちょっと気になる。「やっぱり夢を追うラスト」は明るいエンドなのかもしれないけど、私にはめっちゃ後味悪く感じた。後味悪いの大好物なので良いんだけど。

そして、作中1番サイコなのはやっぱり礼遠。
人の気持ちがわからない、一部の才能が突出、目的のためには手段を選ばず計画的に物事を進める。いやー良いねぇ。1番やばいわ。
本人としては本当に純粋に正しいと信じてるんだけど、「頑張って!君ならできる!一緒に夢を叶えよう!頑張ろう!!」て成功してる本人に言われ続ける絶望よ…そしてどんなに逃げても何としてでも追いかけてくるとか…。
「あたまのおかしい夫に追いまわされて、身の危険をかんじた」は事実なのよw でも礼遠は優奈を庇うための方便だと思っているし、優奈もそう思ってしまっているよね?
いやほんとに怖い。真っ直ぐで真っ白な猛毒だ。綺麗な悪意、とでも言うべきか?

優奈や優奈の母、宮下夫妻の自己愛や傲慢さは「人間らしさ」だと思えて、モヤモヤ感含めて理解できるけど、礼遠は違う。
優奈は礼遠を、凄すぎて自分では釣り合わない人、と思ってるようだけど、それは違う。
妻がホスト通いで借金してたら怒るのが人間だよ。
この「どっかおかしい」礼遠は、結局のところ優奈に依存していたってことなのかなぁ…。
そのために、全盲の女子中学生を誘拐してスタンガン当てて暴力振るう訳でしょ。まじでやばすぎ。

愛子ちゃんがもう、ただただ可哀想。
そんな中でも健気に成長していく愛子ちゃんはほんと、作中唯一の純水のような存在。
宮下夫妻が愛子ちゃんの気高さに引き上げられるように、家族として幸せになってくれることを願うのみです。


色々と考えさせられ、ミステリーとしての面白さもあり、モヤモヤ感も味わえてお得な1冊でした。

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2023年02月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人間の怖さを描くのが得意な芦沢さん。
読みやすくて展開もはやい。
犯人側の人間は身勝手の極み。自己中心的…

最初の章では意図としない不運なことが立て続けに起こって運命って恐ろしいなと思ったけどなんだか犯罪者の気質みたいなものが元々ある親子なんだろうなと思った

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2023年01月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

視点が変化しながら話が描かれていくことでスルスル読める面白い本であるのは間違いないと思った。だがそれと同時に救いが少なく、読んでて苦しい本でもあった。

視覚障害者である愛子が誘拐される描写は個人的に特に重かった。しかし最後まで希望を見失わずに、そして自己の成長までする姿は今作の救いだと思った。

優奈を探すためには、誘拐犯の加害者に仕立て上げるしかない。と考えてそれを実行する礼遠が、優奈に執着する理由が薄いような気がした。最愛の人であり自分を漫画家にしてくれた人だからか、、?
途中まで優奈を懸命に探す夫という立ち位置からのどんでん返しは凄いと思った。

宮下家では夫婦間の過保護な母親と、娘の視覚障害を受け入れきれてない父親の関係性、
江間家では才能のある礼遠と、夢を諦めきれず夢から逃げれない優奈。
どの立場になっても共感できる部分があり、月並みだが人の細かい心情描写がスっと入ってくるからこそ読みやすかった。

読後、タイトルが凄く秀逸だと感じた。

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2025年11月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

誘拐事件を題材にしているけれど、ここに登場する人々の心理に引き込まれてハッとさせられることが多かった。一番はやはり被害者の愛子。彼女を通して、視覚を閉ざされた人が被害に遭う危険性の高さについて、その心細さや恐怖について、たくさんのことが伝わってきた。人の手助けが必要なのにどこかで人を信じ切ってはいけないという、相反する感情を持ち合わせて日々生活していくのは想像以上に神経を使うと思う。幼い頃の誘拐事件を通して歪になってしまった家庭が、娘の勇気と自立によって今やっと正しい方向に向かい始めたのかもしれない。愛子の諦めない姿勢には希望のようなものをもらった。とても眩しい。
礼遠はどこか何かが欠落した人物像なのだと思うけれど、妻を捜すためにそこまでするか、と思わずにはいられない。そして優奈も往生際が悪いというか、いつも何かのせいにする癖があって自分と向き合うことができていない。この夫婦は客観的に見るとあの元同僚の意見が正しかったのかもしれないなと思った。
蓋を開けてみればみんな不安や不満を抱えて何かに依存することで生きている、そんなふうに見えた。

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2024年09月08日

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