あらすじ
九州新幹線「つばめ」やJR九州の特急列車を中心に、常に話題作を発表し続けてきたデザイナー・水戸岡鋭治。
ユニバーサルデザインやバリアフリー対策、さらには地産地消的考えをも取り込んだ、彼の独特な鉄道デザインの原点にあるものを、個々の「仕事」を通して展望する。
水戸岡 鋭治(みとおかえいじ)
1947年岡山県生まれ。岡山県立岡山工業高校デザイン科卒業。1972年、ドーンデザイン研究所設立。建築・鉄道車両・グラフィック・プロダクトなどさまざまな分野のデザインを手がける。なかでもJR九州の車両・駅舎のデザインで、国際的な鉄道関連デザインの賞であるブルネル賞など数多くの賞を受賞。ほかに岡山電気軌道の路面電車「MOMO」、和歌山電鐵の「たま電車」「いちご電車」、富士急行の「富士登山電車」なども手がける。著書に『ぼくは「つばめ」のデザイナー』(講談社)、『旅するデザイン』(小学館)などがある。
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Posted by ブクログ
どういう分野であれ、「或る仕事で一定以上の実績を挙げた人達の貴重な経験談」というものは傾聴に値する。そういう意味だけで本書は一読に値するであろうが、鉄道車輌や駅施設、更に多くの人の目に触れる包装紙やロゴマーク等の“公共”のモノを造る、或いは創ることに関る意見というものは非常に貴重で、より広く読まれなければならないものであると思った。評価の高い車輌が登場した背景に興味を抱く「鉄道ファン」に奨めるべき一冊であることは間違いないが、これは「“鉄道ファン”は特殊な領域に居る人達で、自分は無関係」と思っている人達にこそ奨めなければならない一冊かもしれない。更に加えると…「“鉄道ファン”は特殊な領域に居る人達で、自分は無関係」と思っている人達の中にも「“公共”のモノを造る」ということに携わっている人は多い筈で、そういう人こそこの種の意見には耳を傾けておかなければならない筈だ…
Posted by ブクログ
博多駅にいくと、九州新幹線つばめをはじめ、かもめ、にちりんソニック、ゆふいんの森号・・・とユニークな列車が多い。外観だけでなく、車両のなかも和装のデザインだったり、質感高く個性的だ。
きっと通勤客で稼げないJR九州の戦略として、バカンス客に力を入れているのだろうと思っていたが、その背景には一人のデザイナーの熱い思いとそれを支える人たちからなる、何とも素敵なビジネスストーリーがあった。
いまの仕事に悩みがある人、仕事で成長したいけどその将来像が見えないと悩む若い人すべてに読んでほしい!
Posted by ブクログ
お会いする度に、素敵な笑顔が!その笑顔が醸される所以がここにあるなと感じた!デザインが支えるもの、ことが、キッチリと描かれた!それが水戸岡さんの仕事になっている。この本を読み終え、小布施に存在する水戸岡さんデザインの小布施鈴花さん、レストラン花屋さんをまた楽しもうとわくわくしている。小布施に素晴らしい記憶と仕事が刻まれているんだという実感!
Posted by ブクログ
水戸岡鋭治氏の鉄道デザインに関する本。 工業デザインはシンプルで機能的、という常識から外れ、見た目の楽しさ、利用する楽しさを追求するデザインを推す理由とは? 色の時代に始まり、形の時代を経て、今は「素材の時代」として九州新幹線800系を手がける。そしてその先に目指す未来とは?
Posted by ブクログ
デザインという整理、という言葉が印象的。
デザインの背景にある想いの深さ。
利他主義、社会デザインなどについての話題もあり、対人援助職の方に特にお勧めしたい一冊。
JR九州の列車に乗って、旅に出たくなりました。
Posted by ブクログ
一つ一つのシーンをイメージし、感動するシーンを作る
――そのために、最後の1%を担うのがデザイナーである(1%がだめだとそれまでの99%が台無しになる)ということ、
服飾や列車名の印字までなんでもやる(分業制にしない)ということ、
また、ファミリーを作る(PTのようなものを自分の周りにつくる)ということ――など、、
グッとくる教えが多い。
公共空間の在り方について真摯に考察し、おごらず、サービス精神をもって、そもそものところから熟考し、よいものを作ろうとする。その姿は、土木の者には心に響くものがあるのではないか(土木のデザイナーにも通じるところがあるようにおもった。そういえば土木デザイナーも、NHKのプロフェッショナルとか出てほしい!)。
土木との関連でいえば、フィールドも、全体的に土木デザインの世界に近い。効率から、工業的に、形態が決まってきたことの多いこの分野にあって、いかに人のことを考えて良質な空間をつくれるかという発想は、本質的だし、一方でしがらみの多さゆえこれまで難しかったのだという状況も、近いと思った。だからこそ、「ファミリー」(コラボ)のことも重要。
また、「サービス」のところで、客人のためにお茶や弁当や和菓子を、考えて(相手を想って)出せるか、というのは確かにサービスであり、そしてデザインである。本質的。
デザインって、結局、サービス精神だと改めて思った。
Posted by ブクログ
車両で話題を提供し続けるJR九州の鉄道デザインを一手に引き受ける水戸岡鋭治さんの一冊。予算面やいろんな制約がある中であれだけ尖った鉄道を生み出してきたのはすごいし、素直に感動。まして最初の頃は既存の車両を改造というか少しいじるだけで全く違った印象にしていたわけだし。
九州新幹線も良いけど、九州はあえて新幹線でなくのんびりな旅行でよかったのかもしれないですな。最終的に彼の思いが実って寝台列車が走るのはスローライフ志向が芽生えた現代にぴったりなのかも。
Posted by ブクログ
今や鉄道車両のデザイン(特にリニューアル)については第一人者となった著者。既成概念を打ち破りつつも伝統を重んじようとする感性には好意が持てる。しかしながら、九州だからこそ成功したことを軽視して、他の地方に持ち込むのはどうかと思う。
Posted by ブクログ
【出会い】
JR九州の車両に惚れて
【概要】
水戸岡氏が鉄道デザインに関わったきっかけから、手がけてきた仕事の事例と進め方を、インタビューの記録としてまとめている。
【感想】
共感するところもあれば、意外に思う考え方も。
考え抜かれた意図が形として表れていることを、事例、特に苦労談から知った。
こだわりと愉しみを持って仕事をしているところ、職人といえるような雰囲気を感じた。