【感想・ネタバレ】「満鉄」という鉄道会社 証言と社内報から検証する40年の現場史のレビュー

あらすじ

五島新平を初代総裁に、日露戦争後の明治39年(1906)に設立され、第二次世界大戦終結時の昭和20年(1945)まで、満洲経営の中核を担っていた南満洲鉄道株式会社、通称「満鉄」。創業100年以上を経て、時の流れに埋もれようとしている満鉄の歴史を、OB組織である満鉄会の全面的協力を得て、貴重な証言と写真資料とともにたどる。満鉄のリアルな姿を、改めて心に刻みつけてみたい。

佐藤篁之(さとう ひとやす)
岩手県九戸郡出身。慶應義塾大学文学部仏文学専攻科卒業後、ヨーロッパ、ユーラシアなどの音楽、旅行、文化等ユマニスム系の取材・原稿執筆を中心にキャリアを重ね、近年は社会インフラ、ビジネス、環境等へ興味の対象を拡げる。

※電子書籍の仕様による紙版と異なる図版・表・写真の移動、本文中の参照指示の変更、ほか一部修正・訂正を行っている箇所があります。予めご了承ください。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

前半は満鉄の鉄道史・鉄道社員史、後半は満鉄の社史、という印象。鉄道好きは前半を楽しめ、政治・経済好きは後半を楽しめる一冊かも知れない。
本書を読んで、個人的に初めて知り衝撃的だったのが、満州~朝鮮半島間の国際列車愛称が「ひかり」「のぞみ」「あさひ」であったこと(p.29)。後年どこまで意識してこの名称が新幹線に流用されたのかは分かりませんが、こと鉄道史に関していえば、意外に戦前と戦後は断絶せずわりと連続したものだったんだろう、と感じました。また、日本の庶民にはなかなか得られない高給を得られるチャンスが満鉄や満州にはあったという正の側面と、「匪賊」と呼ばれた現地の満鉄や日本支配に対する反発という負の側面、その両面が(バランスはよくないにせよ)それぞれ書かれている一冊とも感じました。
社史、というか社長史の部分は、「いかにも日本の組織だな…」という感じ。こういう組織を上に見つつ、現地雇用された満州現地の人がこの会社をどう見ていたのか、それが書かれていればもっと深みのある一冊になったんじゃないか、と思います。いろいろと歴史を振り返る機会の多くなる、夏の鉄旅に連れて行きたい一冊。

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2012年08月20日

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