【感想・ネタバレ】エピローグのレビュー

あらすじ

現実宇宙の解像度が上がり、人類がこちら側へと退転してしばらくしてからの物語。現実宇宙を制宙するOTCの構成物質を入手すべく行動する特化採掘大隊の朝戸連と相棒のアラクネ。二つの宇宙で起こった連続殺人事件の謎に挑む刑事クラビト。宇宙と物語に何が起こっているのか? 「ベストSF2015」国内篇第1位の傑作

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Posted by ブクログ

ネタバレ

終盤に「でも、そろそろお前の言葉も頭も、この意味がわかるくらいには変化していたっていい頃さ」とあるのは読者への語りかけでもあるが、うーん、そこまでテキストVS私において「理路整然とやわらか頭」にはなれなかったので、検索してネット上のあれこれを拾ってみよう。。。
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東浩紀「円城塔が『エピローグ』でOTCと呼んでいるのは要は虚構の想像力のことだということに気が付いて、すらすら読めるようになった。」
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退転、というのは、物理的現実を捨てて、ソフトウェア化することなのだが、次第に、退転とはメディアを乗り移ることだということが分かってくる。コンピュータだけとは限らず、書物だったり石版だったりオールドなメディアへの退転もあったらしい。というわけで、どうもこの作品に出てくる人間は、物理的には書かれた文字であるっぽく、ここらへんでメタフィクション的な色合いが出てくる。
演出としても、文字の順序を変えたりするなどのことがなされたりする。
人類のデータを維持していくためのシステムが、データを管理するために使っているのが「物語」で、その中でもどのような世界でも通用する物語として「ラブストーリー」を選び出す。最終的には、この物語を作るシステムとラブストーリーとのラブストーリーだったということが分かってくる。
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作者の興味(目的)は、「果たして人間と機械(AI)との間に"差"は存在するのか」という点に絞られているからだ。本来はスパイスである筈の作者の薀蓄(ソフトウェア工学及びAIを含む計算(機)理論、情報理論、位相幾何学を中心とする数学、命題論理、一番の専門である物理学)を楽しむ事がメイン・ディッシュであり、物語の核はシンプルな方が(機械学習にとって)相応しいのである。ある意味において、本作は「『物語』を題材とした物語」なのだから。
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このあたりだろうか。
筒井康隆がインタビューに「佐々木さんはその小説を読むたびに、読者に新たな物語が生成される。そうしたプログラムが内包された小説をパラフィクションと呼ぼうと提唱しています。どういうものかというと、メタフィクションが作者がその物語を書いていることを作中で暴露することで、“作者の存在を意識させる”のに対し、パラフィクションでは、読者がその物語をいま読んでいることを指摘することで、“読者が当事者であることを意識させる”ということです。」と答えている。
メタもパラも自己言及的で小説を退屈にさせる悪徳なのだが、筒井に負けず円城の小説は抜群に面白い。
わくわくするし抒情的。

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2018年04月24日

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