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Posted by ブクログ
「ポストコロニアル」の思想を、日本の近代史と漱石を中心とする近代文学に則して展開した書。
近代の日本が「擬態」と「模倣」を繰り返しつつ「自己植民地化」の過程をたどってきたこと、その過程において沖縄やアイヌ、朝鮮、台湾などが「野蛮な」「他者」として創出されてきたことが、テクストを精読することを通して鋭く抉り出されている。
Posted by ブクログ
近代以降の日本と東アジアの歴史の歩みを、「自己植民地化」として読み解いている本です。
近代以前の東アジアには、中国を中心とする「朝貢外交」の秩序が存在していたのに対して、近代日本は西洋による「万国公法」の秩序をいち早く内面化し、それによってアジアに対する植民地主義の主体として自己を規定することへと向かっていくことになります。さらに著者は、専門である漱石の文学作品をとりあげ、そのテクストのなかに植民地主義的構造を読み取っています。最後に、戦後の日本の歴史観のうちに、植民地主義をみずからの問題として引き受けることを隠蔽するような構造が存在しつづけていることの指摘がおこなわれています。
「植民地的無意識」と「植民地主義的意識」が表裏一体となって近代以降の日本の歴史をつらぬいているという本書の基本的な見方は、岸田秀の考えを連想させるものです。ただし、岸田がフロイトの精神分析を社会心理学として理解する立場から日本の集団心理を読み解いているのに対して、「ポストコロニアル」をタイトルにもつ本書は、ポストモダン左派的な観点から「文学」と「歴史」の政治性を明らかにするという立場に立って議論がなされています。