あらすじ
なんでも器用にこなす栄二と、お人よしだが愚鈍なさぶ。二人は幼いころから仲良しで、いつも栄二はさぶの兄貴分だった。だが、無実の罪で栄二が石川島に流されたことをきっかけに、その関係性に陰りが見え始める。自分は陥れられた、ここを出たら復讐してやろうと世間を恨んでばかりいる栄二は、島の罪人とも口を利かず、会いに来たさぶのことも冷たく突き放した。しかし、大あらしから島を守るための防波堤を作る作業中、栄二はうっかり足をすべらせて生き埋めとなってしまう。普段は冷たく接していた罪人たちが、どうしてこんな自分のために危険も顧みず、躍起になって助けようとしてくれるのか。徐々に心を開いていく栄二だったが――。1人の男が精神的な成長を遂げる感動物語。
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Posted by ブクログ
時代小説にちょっとばかり免疫がついたと思い、この作品を読んでみることにしました。
主人公はさぶ、じゃなく英二…。ふたりは同じ年で江戸の下町で表具屋の職人、栄二は男前で仕事も器用にこなすが、さぶは要領が悪く愚図だが誠実ではあるが、ともに友情を育んでいた。ある日、栄二は信用していたお得意様から盗人の濡れ衣を着せられることに…自暴自棄になった栄二は暴力沙汰を起こし、人足寄場で罪人として収容されてしまう…。さぶは栄二を探し出し、わが身より栄二を思い足しげく人足寄場を訪れるさぶ…そして栄二と同時期に収監されていた罪人の仲間たち…栄二は徐々に頑なだった心を開いていく…。
栄二が濡れ衣を着せられた件についての真相が、ラストであきらかになりますが、「それでいいの?栄二??」って尋ねてみたいところです。だけど、この作品は栄二の心の成長と、さぶと栄二の友情の物語といっていいかと思います。さぶのような友達をもてる自分になりたいし、逆にさぶのような友達って思われたいとも感じました。友達っていいなって、改めて思わせてくれる作品でした。