あらすじ
私は30年以上にわたって毎年のように西洋の美術作品を巡って歩いてきたが、美術作品も、それが位置する場所の力と相まってオーラをまとうようである。(中略)無数の眼差しが注がれてきた美術作品は、巡礼者の信仰を吸収した聖遺物と同じく、膨大な人々の情熱と歴史を宿し、あるべき場所で輝きを放っているのである(「まえがき」より)。イスラエルで訪ね歩いたキリストの事蹟から津軽の供養人形まで、本質を見つめ続けた全35編。
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Posted by ブクログ
東大文学部卒、美術史家、神戸大教授
● ポンペイの壁画
「赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス」
画面下部の中央にいる鷲は、ヘラクレスの父であるゼウスと同時にローマ皇帝を表している。擬人像や寓意によって物語を表現するのは、古代から西洋美術に特有の手法であった。
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●美術史の意義
美術というものは古今東西を問わず、どんな天才的作品でも必ず過去の作品と密接な関係をもっており、時間と空間の制約の中からしか生まれないものであって、芸術家の天分や創意工夫などといったものはごくわずかな要素にすぎないのだ。
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美術を見るということは、感性だけの営為ではなく、非常に知的な行為なのだ。知識があればあるほど作品の意味や機能、作者や注文主の意図がわかって深く鑑賞できる。知識があって鑑賞の邪魔になることはありえないし、知識を軽視して、自分の感性や好き嫌いだけで見ても、ほとんどの美術作品は何も語りかけてくれないだろう。
Posted by ブクログ
評価は3.5があればそれにしたい。
●美術は場も影響してくる
→非常に納得がいった。同じ絵でも日本で見るのとその作者の故郷で見るのとはまた違ってくるだろうし、前後にある絵との兼ね合いによっても変わるだろう。
自分の心境や見る時間帯によって、さらには年齢によっても変わってくるのではないか。
これは美術以外にも言えると感じた。例えば、飲食においても東京で同じものは食べられるがやはり本場に行った方が美味しいと思う場面も多々ある。
物の本質を高めるには、そういった外的要因というのも考慮するべきだ。
●絵の背景を見ること
→その時の社会やアーティストの感情等、複数の情報を得て見ることで感じ方が変わる。
今までは心を無にして見ることで心の琴線に触れる絵が良いものだと考えていたし、なぜかそう習って来たような気もする。
ただ、それは正解であって正解でなく、より突き詰めるのならば絵の背景をより学ぶことで見え方が全く異なる。
作者はそれを知的なものだと捉えており、たしかに歴史的背景や美術界の移り変わりによって描かれているものが左右されてきたということもあるようだ。
これは美術以外にも、建築物やそれこそ本においても同様なことが言えるのかもしれない。
背景を学んでから自分の目で見てみるというのは非常に大事と学んだ。