あらすじ
われわれは何故このロボットの虜になったのか?
“夢”を次々と“現実”へと変えていった小さな国が30年前に見た、今なお手の届かないとてつもない空想にして万感の思いが込められた産物。戦後日本の歩みが『機動戦士ガンダム』という一点に収束した過程を追っていくことで、この国の過去と未来への扉を開く。
目次
第1章 ジオン公国と大東亜共栄圏
第2章 「ザク=零戦」「ガンダム=戦艦大和」か?
第3章 スペースコロニーと宇宙への夢
第4章 二人のシャア――富野由悠季と小沢一郎
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Posted by ブクログ
この本はガンダムシリーズを論じている物でも、キャラクターとしてのガンダムを論じている物でもない。機動戦士ガンダムというひとつの作品と、それに関わった富野由悠季という人物を掘り下げているものである。
第二次世界大戦から高度経済成長期にいたるまでの社会情勢がどのような変遷へて、この作品に対して影響を与えたのかを全体の6割にもわたって書かれてある。
この「世界観はどのようにして生まれるのか、そして生まれたのか」をアニメ関連の書籍で書かれることはかなり少ない。大概はそういった歴史的背景や文化的背景など除外され、出てくるロボットのディティールや美少女、美少年に対する言及であったりする。
私は常々キャラクターグッズを中心とした偶像崇拝的な今の商業主義に関しては大いに論じるべきではないかと考えている。某社がだしたガンダム携帯などはまさにそういった本当のファンがどのような意匠を求めているかを完全に無視している。たしかに、そういったガンダムをシンボルとして捉えた意匠に対して愛を感じる層が沢山いるということはよく理解しているが、あの意匠に対して24時間365日肌身離さず、毎月7000円近くも24ヶ月間払い続けるのだろうかと考えると甚だ疑問である。
それならば、富野由悠季その人にもしファーストの世界観にケータイがあったらどのような意匠にしたのか、どのような機能を持たせ、どのように使わせたのかというガンダム的文化背景をフィードバックすべきなのではなかったのだろうか?
このように、通常とは違った論点と語り口で述べられているため、非常に楽しく読むことができた。また、他の書評でもあるようにシャア・アズナブル=小沢一郎、富野由悠季という所は非常に面白い。もちろん、シャア=富野については常々、某国内大手掲示板でも論じられていることなのでこれに関してはごもっともなのだが、小沢を比較対象に出しつつ、彼の育った家庭的、政治的背景まで提示しているあたりにガンダムとは何だったのかを今一度整理させてくれる要素がある。
題名であるガンダムと日本人の発端となっているのは間違いなく18mを再現してみせたお台場ガンダム(現在は東静岡ガンダム)であるが、これは商業主義であるバンダイが富野という人へ歩み寄ったから成し得た奇跡でもあった。目論見は150万人で合ったのに対して450万人が来場し、日本人だけでなく海外からもたくさんの人が訪れたというこの事象に関していえば、偏に妥協を許さなかった富野由悠季氏とそれに耐えたスタッフの忍耐ではなかったのだろうか。21世紀の大仏となったガンダムだが、1000年間生き延びることができるか、それはまだわからない。
第二次世界大戦から米ソ冷戦を経由し、様々な困難を乗り越えた日本だからこそ生まれたガンダムはこれからも続いてくのだろう。ガンダムという作品は細分化された富野由悠季であるが、それにいたるまでには全共闘時代も影響はあるし、宇宙開発も大いに関係し、SF作品の影響もある。もちろん、鉄腕アトムも貧乏サンライズも商業主義のクローバーもザンボット3もダイターンも、彼を取り巻いてい影響を与えたすべての事柄がこのガンダムへと続いているのだ。
そういう背景が常にあり続けたということをリスペクトしてこそ、ファンと言えるのではないだろうか。
この本はそういったファンのあり方を改めて提言しているような気がする。
少なくとも私にはそう思えた。
Posted by ブクログ
最初著者はジオン軍をナチスドイツに例えようとします。
確かに服装的には似て非なるものを感じますが何か違う。
そこで日本軍と重ねてみると大東亜共栄圏とスペースノイドが重なって来ます。
コロニーの解放と亜細亜の解放が重なるように思います。
ジム対ザク
量産機対決で言えばジオン軍はドムやゲルググ等の後継機が投入されたことと比較して基本性能を上げたカスタム機を投入した連邦軍に分があったと分析されます。
個人的にはシードのムラサメが好きなのでこの考察は好きです(笑)
壊し屋「シャア」と「小沢一郎」
オールドタイプの破壊に共通点が…
この辺りから例えがキツくなってくるんですよねσ^_^;
全体的には面白く読めましたがやっぱり戦前戦後と宇宙世紀の例えが1番良かったですね。
Posted by ブクログ
タイトルとは裏腹に,議論の中身はかなり深いです.キーワードは,第二次世界大戦,冷戦,55年体制,小沢一郎,あたりでしょうか?旧体制の破壊を目論む小沢は,赤い彗星のシャアなのだそうです.さすがに,アニメと実物とではイケメン度にかなりの開きが・・・.(笑)
しかし,改めて作品の世界観を味わってみると,ガンダムは確かにストーリー設定,キャラ設定が深い.作り手が相当な時間をかけて熟成させたことが垣間見えます.
昭和史としての日本人論を,機動戦士ガンダムになぞらえて解説する手法は,「もしドラ」にも共通する部分があるかも知れません.こちらの方は,どちらも難しそうに感じましたが・・・.
Posted by ブクログ
戦前戦後の日本と「機動戦士ガンダム」の世界の関連性や類似性について論じた本。
全体としては戦時中の日本が一年戦争時のジオン公国に、アメリカ(戦後日本の目指す道)が地球連邦に例えられていることがわかる。真珠湾攻撃以降の日米の対立構図は、まさにジオンvs連邦だった、というもの。日本及びジオンが負けた理由として、そもそもの国力の差と人材(人的資源)の軽視が挙げられている。
面白いのは、帯にもある小沢一郎=シャア・アズナブルという指摘。小沢は55年体制を打破し、強大な権力を自分のもとに収斂するため、衆院選での小選挙区制を導入させた。また、戦力保持や愛国心教育を通じての「普通の国」へのシフトを主張した。
著者はこれを、シャアが「人類は地球を離れ、宇宙で独立すべき」という主張や、地球に小惑星アクシズを落すことを企んだことを通じて、オールドタイプからニュータイプへの「人の革新」を謳ったことに準えている。正直違和感が拭えないが、話としては面白い。
第二次世界大戦前後の軍事的な事柄や、日本の産業の歴史については、ある程度勉強になったと思う。しかし、全体としては薄味な印象と、著者が何を伝えたいのか今一つわかりにくいということも感じた。オタクを自負する人(ガンダムと名の付くものなら全て制覇した、という人)には、表面的な議論に終始しているように見えるかもしれない。
興味関心の優先順位が、政治=経済>戦略>戦術>個人戦と、おおよそガンダムファンらしくない自分にとっては、それなりに楽しめる内容だったかなあ。こうして、1つの作品(シリーズ)を通じて、社会や自分の行く末を考えるというのも、刺激的な営みだと思った。
Posted by ブクログ
小沢一郎とシャアの章からつまらなくなった。その前までは、結構面白く読めた。万人受けはしない本だが、ファーストガンダムと世界史の知識がないと面白くないと思う。
Posted by ブクログ
ファーストガンダム評論は数あれど、近頃の最大公約数的な評価でよく見るのは「ジオン=大日本帝国」「連邦=日本国」という流れ。
本著は明示的にそれを言わないまでも、十分にそれを意識した内容になっている。
戦艦大和の建造をビグザムに重ねてみたり、
零戦の改良をザクのバリエーションに重ねてみたり、
ワシントン海軍軍縮条約を南極条約に重ねてみたり、
小沢一郎をシャアに重ねてみたり。(え?)
日本の役人に連邦高官を重ねてみたり。
しかしタイトルほど「日本人」をテーマにしているとは言いがたく、
どちらかといえば「ガンダム」をテーマにして手当たり次第に学問的アプローチを掛けているイメージがぬぐえなかった。マルサスの人口論やスペースコロニーの現実、超合金とガンダリウム合金の考察はそれら単体にはそれなりの興味がそそられるものの、必ずしもガンダムの考察になっているとは言いがたい。
(そして近年そういった新書が玉石混交なれども流行ってきている。例 もしドラ)
ともあれ、質の悪くない大学の教養課程の学問の啓蒙書的にはそれなりに面白い本であるし、その導入としてガンダムを持ってきたのは面白い試みであると思う。近年そういった本が増えているので、ちょろちょろとレビューを書いてみようと思います。
Posted by ブクログ
「ガンダム」の持つ様々な要素を日本人の精神や現代史に結び付けて論じた本。こういう本が出ること自体が、いかに「ガンダム」が存在感があるかを示している。特に第2次大戦の戦艦大和やゼロ戦、そこから生まれる生産の概念と、ザクとガンダムを結びつけた2章はなかなか面白い。全体的にテーマのためにこじつけた感が漂うことは否定できないが、一つの見方として興味深い。ただし、ガンダム(特にファースト)について全くの予備知識のない人間が「ガンダムとはどういうものか」知れると思って読むと大やけどするので注意
Posted by ブクログ
「小沢一郎はシャア・アズナブル?」
このあおり文句をみて、購入を即決しました。
『機動戦士ガンダム』というアニメが世代を超えて支持される背景を詳解しています。
もしかしたら、ガンダム好きの方々の間ではすでに語りつくされている内容なのかもしれませんが、エセガンダムファンの私にとっては驚きの連続でした。
学校では学ばなかった「日本の現代史」を学ぶこともできます。。
ところで、都合が悪くなると「これが民意です」とのたまう政治家さんとシャア・アズナブルに共通点があるなんて、いったいどういうことでしょう。
どこかケチがつけられるところは無いのか、と読んでみました。
結果、小沢さんのこともシャアのこともよく知っているわけではない私としては「・・・そうかもしれない」と納得せざるをえない内容でした。
(ただ、帯のあおりにも、最後に「?」をつけていて、けっしてオザワさんとシャアが『同じだ』といっているわけではありませんものね)
しかし!
100歩ゆずって、小沢さんとシャアがその点で共通しているというのならば。
今より3倍がんばってくれよ、オザワさん。
Posted by ブクログ
冷めた感じで読み始めたのですが^^;予想以上に面白かった。
まあ、強引さやこじつけはあるにせよそれはそれで著者の見方だ。
ホント、ガンダム一つでこういう本が山ほど出せるんだからやはり「ガンダムはスゴイ」(^^;)
Posted by ブクログ
ガンダムの根底には現代史がある。
よって、成長し、教養が増すにつれ、共感も増す。
序盤は世界史をきれいに当てはめていくが、日本戦後史あたりからちょっと怪しくなり、小沢=シャアに至ってはスッと冷めてしまう。
ガンダムを語って、そこに実歴史を当てはめればよいのに、途中から、戦後日本政治史を語り始めてしまい、そこに思い出したようにガンダムを当てはめる構造になった。