あらすじ
1945年の終戦直後、焦土と化した東京では、家も家族もなくした浮浪児が野に放り出されていた。その数、全国で3万以上。金もなければ食べ物もない。物乞い、窃盗、スリ……生きるためにあらゆることをした。時に野良犬を殺して食べ、握り飯一個と引き換えに体を売ってまで――。残された資料と当事者の証言から、元浮浪児の十字架を背負った者たちの人生を追う。戦後裏面史に切り込む問題作。
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Posted by ブクログ
年端もいかぬ小学生、恐らく10歳にもならない子が煙草を吸っている。
そんな衝撃的な表紙とタイトルに惹かれ、購入。一気に読みました。
私も、1970年代生まれの筆者と同世代。戦後世代です。生まれた時から戦争の雰囲気は周囲にありませんでした。学校や親から、戦争はよくないとか、食料の大切さをアフリカの難民等を引き合いに出して諭されてもピンときませんでした。頭では理解しますが実感・共感できない。
今、親となり子供を育てるにあたり、平和の有難みや食べ物の大切さを、空疎ではない言葉で語ろうとした時、このような本を読ませたら実にリアリティをもって子供に伝わるのではないかと思いました。それくらいビビッドに当時の浮浪児たちの厳しい境遇が描かれています。
そこには犯罪があり、売春があり、強盗があり、飢餓があり、死が満ち溢れていました。米軍がいて、テキヤがいて、ヤクザがいて、在日外国人グループがいました。今の尺度や道徳観でいう”良くないこと”にも手を染めなければ生きていけない状況がそこにはありました。ただ、それを批判することは簡単ではありません。彼らも生きるためにそうしていたからです。そうしなければ死ぬのです。
当書は、戦後混乱期にあった日本で、東京は上野を根城にしていた浮浪児たちの体験を聞き込み、これを淡々と記録に残しています。特段の道徳的教訓を引き出すわけでもなく、戦争を大表に批判するわけでもありません。当時浮浪児として蔑まれた子供たち、そして成長し老いた彼らの現在の心境、彼らを支え囲んだ人々のインタビューです。
そうした様子が淡々と映し出されれば映し出されるほど、彼らの境遇の厳しさを感じずにはいられませんでした。同じ日本人として彼らに共感し憐憫の情を持たざるを得ませんでした。他方でこうした悲惨な境遇は今も世界のどこまでいまだに起きており、援助の手が差し伸べられるのを待っている子供たちがいるはずだと思います。
人は必ず死にます。それでも、親を突然失う悲しさ、子を一瞬にして失う悲惨さ、こうした悲しみは容易に想像がつきます。こうした悲しみが少しでもこの世から消えてなくなることを祈ってやみません。
Posted by ブクログ
まことに遺憾ながら、書籍をフラットに読むことは難しくなってしまった。
なにも知らなかったならば左様でございますかと受け入れることもできるが、おおむね左巻きな印象が知らず忍びよってきて眉をひそめることになる。ルポルタージュとしては労をねぎらいはすれど、感傷的に混入した成分がダブスタを醸成することになるのでエッセイになってしまう。ルポルタージュを目指す著者は、本文に感想を混ぜないでほしい。
2009年に『阿片王 満州の夜と霧』を呼び水として10冊くらい戦中戦後に関する書籍を読んだ。ざっくりとその頃の日本史を学ぼうという意図だったが、ヤクザとか在日朝鮮人とかが絡むアンダーグラウンド方面が面白くなってしまい、横道にそれてしまった。
本書が参考に上げた図書は一冊しか読んでいないので、読み手の素養不足を補う十分な余白がある。それらに触れて、本書を照らすとしよう。
以下、あとがきより引用。
主要参考文献(順不同)
『問題児』(小林文男、民生事業研究会)
『東京闇市興亡史』(猪野健治編、草風社)
『昭和を切り拓いた男』(綱島信吉、朱鳥社)
『日本を走った少年たち』(村上早人、法令総合出版)
『雨にも負けて風にも負けて』(西村滋、主婦の友社)
『浮浪児の栄光 戦後無宿』(佐野美津夫男、辺境社)
『奈落』(熊谷徳久、展望社)
『俺たちは野良犬か!』(山田清一郎、郁朋社)
『東京大空襲と戦争孤児』(金田茉莉、影書房)
『終わりなき悲しみ』(金田茉莉、コールサック社)
『戦争孤児の記録』(田宮虎彦編、太平出版社)
『春風のなかの子ども』(永井萠二、太平出版社)
『孤児たちの長い時間』(創価学会婦人平和委員会編、第三文明社)
『私の上野地図』(山田吉生、マルジェ社)
『光は新宿より』(小津豊子、K&Kプレス)
『ルペン社会の研究』(宮出秀雄、改造社)
『戦火をくぐった唄』(西村滋、講談社)
『戸籍も本名もない男』(村上早人、講談社+α文庫)
『戦後値段史年表』(週刊朝日編、朝日文庫)
『千人の孤児とともに』(久保喬、PHP研究所)
『戦争って何さ』(中村健二、ドメス出版)
『生きてゐる』(大谷進、悠人社)
『日本貧困史』(吉田久一、川島書店)
『アメ横の戦後史』(長田昭、ベスト新書)
『MPのジープから見た占領下の東京』(原田弘、草思社)
『上野駅100年史』(日本国有鉄道上野駅)
『アメ横三十五年の激史』(塩満一、東京稿房出版)
『東京大空襲・戦災史第一巻』(東京空襲を記録する会)
『東京大空襲』(早乙女勝元、岩波新書)
『図説 東京大空襲』(早乙女勝元、河出書房新社)
『写説 占領下の日本』(近現代史編纂会編、ビジネス社)
『女の防波堤』(田中貴美子、第二書房)
『戦後少年犯罪史』(檜山四郎、酒井書店)
『焼け跡の子どもたち』(戦争孤児を記録する会、クリエイティブ21)
『国家売春命令物語』(小林大治郎・村瀬明、雄山閣出版)