あらすじ
復讐が合法化されセックス&バイオレンスが充満した世界を描く、松本次郎の最高傑作、愛蔵版にて復刻!!
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成功せず死にたく世恨み足掻く
「私とは何か」「生の意味は何か」苦しくてこう考えてしまう状態に近代人は追い込まれたようですね。
倫理には他者を傷つけないを根本として様々な習慣・常識がありますが、その諸習慣をギリギリまで削ったとこにハードボイルドとかヤクザ・ギャングものが成り立つ。
例えば、健さんの任侠は仲間の仁義だけは守る。 マーロウのいう「優しくなければ生きていく資格がない」とかですね。
二つが融合して作られるサイバーパンク。『ブレードランナー』とか『攻殻機動隊』とかが代表的で、どちらも倫理・道徳最小限世界で「私とは何か」「生の意味は何か」を求めてもがく。
で、『フリージア』その荒いタッチが美しくてエロくてパンクな倫理極最小限世界、かつ「生の意味は何か」の見事な描写。
殺人者への敵討ちが合法化される設定がパンク。中盤で登場する元ヤクザの更生ボランティアと、そのダチで敵討ち対象のダメ男。ダメ男を仕事上警護するけど、本当は成功しないから死にたいから警護なんて死ねる仕事しているダメ女の話が秀逸で、ダメ女はこう思っている:
「私はこの世の中の全ての物に借りがあるんだからさ……そいつら全部に仕返ししなきゃ収まらないんだよ」
ほぼ倫理ゼロで社会への怨念を動機に足掻いて誰かに殺されたがっている。
これは近代で色んな国で見られる現象で、成功しなければ生きる意味がないと、敗者は自殺したり、暴動起こしたり、道連れ自殺したりしている、その動機をよく示したセリフに思えます。
殺されかねないのにダメ男を助けるのかと呆れるダメ女に元ヤクザが:
「俺は自分を救いたいだけだ。そのためにすべき事をしてるんだ。人の事なんか俺にはどうだっていいんだ。あんたもそーだろ。あんたがこの仕事をしているのは俺と同じ理由なはずだ。だけどね… 今のまんまじゃあんたは救われないぜ。昔の俺と同じことやってんだからな」
暴力衝動であばれるダメ女に昔の自分を見る元ヤクザに敵討ち警護なんか辞めろと言われ一悶着あった後:
「あんたは変わるべきだ。あんたを束縛しているのは親じゃなくて自分自身だ」
そんな言葉で変われるダメ女じゃなく、やっぱり護衛は失敗して、インテリ女に上品な言葉で無能だとトドメを刺され、自宅兼事務所で自暴自棄で暴れまわるダメ女。
インテリ女や、実力差を見せつけられた主人公の言葉が、思い起こされ、
極めつけで上引の「あんたは変わるべきだ」が思い出され、改心して絶叫する展開が素晴ら