あらすじ
【電子書籍化にあたり、地図・図版をカラー化しました】
街の風景は気づくと変わっている。しかし、何がどう変わったかなかなか思い出せないことも多い。そのような日々のささやかな変化の積み重ねがいまの街のすがたを形づくる。
日本のさまざまな地域の歩みを「定点観測」でたどってみたい。時代の異なる同じ地域の地図を数種類比べることで、それぞれの時代になにが大切にされ、どのような変化があったのかが見えてくる。
明治時代の地図を見ると干潟に塩田が広がる千葉県谷津。昭和36年の地図では干潟が埋め立てられ、遊園地となり、海上にジェットコースターが延びる。その後、平成19年の地図では団地がならび、干潟のごく一部だけが保存されている。
日明貿易で発達した大阪の堺市は明治の地図を見るとその「大きさ」が実感できる。昭和15年の地図には多くの鉄道が描かれ、大浜海水浴場や水族館で賑わう街の様子がうかがえる。その後、太平洋戦争では度重なる空襲を受け、戦後はさまざまな工場が建ち並び、風景は一変する。
このほか、名古屋の中村、仙台の長町、東京の立川や銀座、博多や横浜など、全28景を追いかけていく。
谷津と堺は地名変更や大阪都構想に揺れる。詳細な地図をもとに日本各地の街の歴史を考えることで、国のかたちが浮かび上がってくる。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
タブレットに東京時層地図というアプリを入れて、たまに都心の地図やら自分の住んでいる周りの過去を調べたりしているのでこの本はその全国からピックアップされた場所を今尾先生の解説で理解を深めるという贅沢な本であった。どんどん海岸線が変わっていく湾岸の地域などは面白いし、消えた路線をたどるのも楽しい。出身地の名古屋や、土地勘のある堺などなど、興味深く読んだが、全く行ったことのない広島、宇品の変遷にも興味津々。
私も今尾先生同様、昔の地名はそのまま残しておいてほしい派。昨今の似たりよったりのひらがな地名やらキラキラした変な地名や駅の周りは自分だったら住みたくないなーと思う。
Posted by ブクログ
今尾氏お得意の定点地図比較の本です。
一万分の1の地図を使用しているので、銭湯や交番などの
場所も今と昔で確認することができます。
千葉や川崎の海岸線などは、同じ場所とは思えないくらい
の変わりようです。
そんな地形の移り変わりを「見てきたかのように」実感
できる一冊です。
Posted by ブクログ
このテの本はだいたい東京だけ、大阪だけなど限定的なパターンが多いものだ。しかしこの本は京都のみならず名古屋、武蔵浦和、習志野、横浜、仙台、尾久、川崎、博多などバラエティに富んでいる点が素晴らしい。
一冊で様々な土地の変遷や由来を知ることができ、どれも非常に頷けるものばかり。トータルバランスに優れる良書。
地図好きや土地にゆかりのある方はは一回手にとってみてはいかがだろうか。
Posted by ブクログ
映画「Always 三丁目の夕日」のような近過去を回顧する風潮は諸外国には無く、都市の改変が激しい日本独特の風潮であると川本三郎が述べていた。本書は正にそれを地で行く内容である。それほど大規模なものでなくても、よく街で新しい建物や店舗を見かけると、あれ、ここは前はなんだったっけと考える事が多い。そんな時、過去の地図を眺めることでその疑問は解消される。今までも古地図に関する本は読んできたが、それらは昔と今でその間はあまり語られることがなかった。本書はその間を語っているところが肝と言える。
Posted by ブクログ
西荻窪に住んで既に30年余りになるが、駅前なども土地が無いのでロータリーやバス停を含め余り変化が無いように思えるが良く気を付けて見れば随分と街は変わっている。先日は昔住んでいた善福寺公園の周りを散歩して見たら、かつては大きなお屋敷だった場所もいつの間にか切り売りされて住宅になっていたりするしな。でも所詮はここ2-30年の記憶しか無いのでその昔がどうであったかは知るすべも無い。
本書は古くは大正時代、昭和初期、高度成長期、平成期に発行された地図をベースにいかに一つの街が変遷していくのか具体的にまた詳細に定点観測して見せるもので何とも興味深いものだ。かつては田甫だったものが大きな工場になり、そして更に住宅地化の流れに押され工場も消えてマンション群になったりしているのが地図から読み取れる。
こんな場所もある。大正10年の地図には京王電気軌道が開通していた都内西部地区「くわやくこまえ」なんてのがあるのは何処の街だろう?なんとこれが今の「明大前」のことなのだからビックリ。起源は江戸幕府の煙硝蔵で、明治維新後に陸軍に引き継がれ、第一次大戦後の軍縮のながれで大正13年に廃止されるまで存在し、その後土地は明治大学と築地本願寺に払い下げられ、それぞれ大学と和田堀廟所になっているという。
明治、大正、昭和、平成と時代は移ろうがそれらを追っていく街の変化はまさに歴史の変遷という感が強く感じられる。古地図というと江戸時代のものばかりが注目されるが明治以降の地図ももう少し良く見てみると面白いのかも知れないし、つい昨日のような昭和の時代の地図も今は消えた何かが再発見できるかも知れない。
それにつけても地図は楽しいのだが如何せん地図の中の文字が小さく厳しい。老眼が進行しているのを改めて痛感してしまったようだ。