あらすじ
大正から昭和へと時代が移り変わる激動のさなか、検閲の嵐が文学を直撃する。円本(文学全集)誕生の経緯も交えながら、文学者、編集者、出版社が織り成す苦闘のドラマを活写する。
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Posted by ブクログ
検閲は過去のものではないという前置きで、たしかに認識を改めなければならないなと思った。程度の差はあれ、完全なる自由というものは存在しないということを念頭において書物を読んでいく必要がある。
1926-27年という限定的な期間の話ではあったけれど、実際の検閲がどういうものだったのかが想像できた。
そして検閲制度自体に明確な基準がなくブレがあり、少人数での運営だったことや、検閲する側とされる側でなるべく不利益を減らす方向で調整していたことなど、興味深く読んだ。
政治と文学の接点を考えるのは面白かった。新聞などの記事と違って文学には人の心を動かす力があり、御上はそれを恐れたということなのだろうか。
どんな階級の人にも手に届くようにと総ルビの全集が作られ、文学を民衆のものにするという動きには胸が熱くなった。権力が反対意見を封じてきた歴史は消えない。先人たちが苦労の末に勝ち取った権利を享受していることを忘れずにいたい。そして今後も、封じられたり利用されたりすることのないよう目を光らせていなければならないのだと思った。