あらすじ
特定のメディアの偏りばかりが目につくとしたら、それは観察する者が何かの立場に強くコミットメントしているためだ――
人と人とのコミュニケーションに、偏りが存在しない状態はない。この世に「真実そのもの」が仮にあったとしても、それをまっさらに伝えることのできる「なかだち」は存在しない。文字であろうが映像であろうが音であろうが、伝えられる情報量は有限だ。
ニュースは出来事を要約して伝えなければならないし、仮に無限の伝達が技術的に可能であろうと、人の時間は有限である。すべての情報は断片的で、切り取られたものだ。何かの断片的で編集された情報を手にしたうえで、「真実を知った」と思い込むのは誤っている。
〈本書まえがきより〉
評論家・ラジオパーソナリティとして活躍する著者による、分断の時代のメディア論。
本書では、安保法制や軽減税率など過去の新聞記事を引用しながら、あるいは独自データを用いながら、各メディアの「クセ」が示される。
それを見て、「やれやれ」「やっぱり」と溜飲を下げるかもしれない。が、本書の目的は、むしろ、そうした“ふるまい”へのリハビリにある。
「バイアスのないメディアなど存在しない」という前提に立ち、その「クセ」を詳らかにすることで、分断する社会で溢れる情報とつきあう具体的スキルを提示する一冊だ。
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Posted by ブクログ
保守系が最も強く右派大衆寄りの産経新聞、高所得者の保守系を意識した読売新聞、リベラルな朝日新聞と毎日新聞、経済に特化した日経新聞という色分けができる。
産経新聞は過激な記載も多いことが右派大衆に受けているが、一方で政府を庇いきれなくなると前言を簡単に放棄する傾向もある。
日本のウェブ上では、右派的な発言が奨励され、右派・リベラルな発言は嘲笑される傾向がある。いわゆる愛国主義が増長される傾向があるので注意が必要。
池上氏などが毎日各紙に目を通すという意味が理解できた。ただし、これを実践するにはお金も時間もかかり、サラリーマンが毎日こなすのには厳しいと思う。
・一要なメディアには、それぞれの特徴がある。同じニュースを取り扱っていても、取り上げ方や意見は大きく異なっている。しばしば、特定のメデイアだけを取り上げて、「偏向している」と批判する人もいるが、それは正確ではない。バイアスのないメデイアなど存在せず、どのメディアにもそれぞれの偏りがある。特定のメディアの偏りばかりが目につくとしたら、それは観察する者が何かの立場に強くコミットメントしているためだ。
・全国紙としての販売部数は、多い順で読売新聞>朝日新聞>毎日新聞>日経新聞>産経新聞の順。日本ABC協会が発表しているレボートには、各社が自社のスタンスについて短い文章を寄せている。
・読売新聞「真実を追求する公正な報道」「勇気と責任ある言論」
・朝日新聞「ともに考え、ともにつくるメデイア」「課題解決模索型報道」
・毎日新聞「毎日新聞150年そしてその先へ」「選ばれるメデイアを目指して」
・日経新聞「マクロ・ミクロの経済情報を分かりやすく冷静に報道」
・産経新聞「日本にあって良かったね」「読者第一」
・朝日新聞が他紙に言及する際は、産経相手にかかわらず、どの新聞相手にも割とフラットな記述が続く。
・他方、産経新聞は、朝日新聞を徹底的に批判することを売りとしており、言及頻度だけでなく、その語調も強い。全国5紙の中でも、最も過激な言い回しを用いていると言える。
・朝日と毎日の意見がぶつかることは少ないが、読売と産経との間に温度差が出ることはしばしばある。産経は読売よりも右派色の強い読者を相手に記事を届けており、特にウェブ時代を経てからオピニオンをより前面に出すようになっている。
・各紙による安倍内閣の支持率は、産経86%、読売43%、日経41%、朝日14%、毎日9%。一方不支持は、産経5%、読売29%、日経38%、朝日70%、毎日59%。この結果は読者層も表しているが、世論調査の調査方法も統一されていないことも考慮する必要がある。
・個人的には特に、「態度の学習」という観点に着目する。一部ウェブ上では、朝日新聞的なもの、民主党的なもの、左派、リべラルやフェミニズム的なものを潮笑し、韓国や中国を嫌い、マスメディアを攻撃するという態度を取ることが、「普通の日本人」「情報強者」として正しいとする「ふるまい」が見て取れる。そうした「ふるまい」を、あくまでネタとして消費しているつもりでも、態度の模倣を繰り返す中で思想が形成されていくということも考えられる。
・もともと日本のウェブ空間は、ある時期から右派的な「ツッコミ文化」を醸成しており、それが慣性として継続されているとも考えられる。こうした点は、海外のネット政治の動きとの比較が必要になるだろう。
・個人的には新聞書評は、すでに売れているベストセラーをプッシュするものというよりも数千部の本が1万数千部になる、2万部の本が3万部になるのを手伝うというのが重要な役割だと思っている。そのために、関心がありそうな潜在購読者の好奇心をくすぐる、読んで面白い書評を目指す。
・書評欄は、社説などほかの紙面と比べると、イデオロギー対立が目立たないようにも見える。
・毎日は、一つ一つの書評に力を入れる傾向があるため、時間がかかりタイムリーさという面では落ちるが、書き手の個性は出やすい。
・露骨なのは、紙面の下段に掲載されている広告だ。特に書籍の広告はあからさまである。リべラル系新聞にはりべラル寄りの書籍広告が、保守系新聞には保守寄りの書籍広告がそれぞれ掲載される。そうした広告欄と比べると、書評欄のほうがより広く、社会に開かれているとも言える。
・僕は日々、複数の新聞を読んでいる。ひとつの出来事でも、各紙によってオピニオンが異なるため、自覚しながら読み比べることが重要だ。
・紙の新聞を読み比べるメリットとして、紙面づくりの違いをビジュアルで直観的に比較できるという点がある。「この新聞はこれが一面記事か」「この新聞は、独自スクープをトップに持ってきたな」というものから、「あれ、この新聞は、この出来事を取り扱ってないな」「この新聞は、この事件の取り扱いがとても小さいないな」というものまで。
・何を掲載し、何を掲載しないのか。何を大きく扱い、何を小さく扱うのか。その優先順位は、その新聞の特色を露わにする。
Posted by ブクログ
肌感覚で新聞から感じることを各種データで裏付け。データのとり方に問題が無いのが前提ですけど。
雑誌 新聞ダイジェストが無くなったのは、痛い限りです。
新聞社へ応募する人は、いろいろな新聞社へ応募すると思うのですが、各社のバイアスはいったい入社何年目から影響を受けるのか。こんなのも言及して欲しかったです。自分は保守系だから、朝日・毎日は受けなかった、なんて人がいたらご容赦ですけど。
いらないわたしの持論:
新聞とNHKにポリシーは関係あるのか?勧誘員のしつこさじゃないのか?個人的環境だと、読売が一番しつこいです。朝日、日経、東京は勧誘にすら来ませんでした。
P5 「メディアが信用できるとなっては本末転倒」な部分は共感できました。