あらすじ
恨みを詰め込んだ実話! 屍臭が充満する怪談! 日常世界が少しずつ腐り落ちる…怨念を貪る恐怖譚!
真白圭が炙り出す、奇妙に歪んでいてどこまでも昏い怪異の数々。人により脚の数が違うように見えるという。その数が教える恐るべき意味…「零から六の脚の話」、いつも見かけるこの世ならぬ者、ある夜ついつい手を合わせると…「先まわり」、仕事をバリバリこなす女性が手にした見知らぬ口紅。おぞましい欲望が溢れ出る恐怖「口紅」ほか全45話を収録。怪異を好むあなたの魂も、膿み腐れてもはや救いようもないほど崩れている――かもしれない。
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Posted by ブクログ
全45話が収録されている充実の怪談本。不可解なはなしや、気味の悪いはなしが分かりやすくまとめられ、一話一話がスッキリと読みやすい。手軽に読める一冊である。中には思わず鳥肌が立ちそうになるはなしもあり、面白い本だった。
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お気に入りの話をご紹介。お気に入りの話は「心霊スポット」、「赤黒い」、「筆石」、「伝言板」、「片手箱」。 「心霊スポット」は心霊スポットを訪れた後、車に幽霊が乗り込んでしまい、しばらくの間悩まされるというもの。しかし、真の恐怖はそこではなく、その先にある展開だった。偶然といえばそれまでだが、あまりに出来すぎており、因果を感じずにはいられない 。巻き込まれた霊感のある友人は可哀そうでならない。「赤黒い」は暮らしているマンションで起こった不気味かつ不可思議な話。漫画家である語り手はマンションを二部屋借り片方を仕事場としていた。仕事場へ向かう語り手は携帯に気を取られながらエレベータに乗り込み、目的の階へと急ぐ。やがてエレベータは語り手を仕事場のある階へと運んで行ったが……。展開が展開なら、まるでジブリの世界だが、行きついた先が、 不気味な夕焼け空の世界。異様さを感じ、急いでエレベータの中に引き返したことで事なきを得たが、あのままあの世界に滞在していたらどうなっていたことだろう。さながら神隠しにあったように、煙の様に消えてしまうのだろうか。 「筆石」はなんとも幻想的な話。語り手の地元にある、賽の河原と呼ばれる川。川といっても海べりにある洞窟から海へと流れ込むだけの小さな川で、別段目立ったものではなく、その日もたまたま部活帰りに砂浜をぶらついていただけであった。しかし、その何となくした行動によって、まるで魔法の世界の様な光景を目に出来ているのだからうらやましい。 読んでいて何となく脳裏に「蟲師」の映像が浮かんだ話だった。とにかく幻想的。 「伝言板」はただひたすらに気味の悪い話。語り手はいつも利用している駅に伝言板が設置されていることに気が付いた。その伝言板には誰が書き残したとも知れぬ不気味なメッセージが残されている。
その文言に興味をひかれた語り手は思わず、その言葉をメモ帳に書き残す。しかし、翌日になってもう一度駅を訪れると伝言板は忽然と消えていた。一貫してすべてが謎であるが、謎であるがゆえにうすら寒さを感じられる恐怖を孕んでいる作品だった。(文言が災いを起こす兆候があるわけでは無いが)語り手がメモに取った文言が語り手に災いをもたらさないことを祈るばかり。 「片手箱」は異国の地で起こった恐怖体験。 ダイビングを趣味としている語り手は、同じ趣味を持つ友人と連れだって、フィリピンのセブ島を訪れる。
そこでダイビングを楽しんでいた語り手達であったが、潜っている際に小さな箱を発見した事により状況が一変する。箱の中に入っていた物も恐ろしいが、その箱を開けてしまったことによって起こった出来事、そして後日フィリピンに詳しい友人に、事の顛末を話し終えた後の、友人のセリフが怖すぎる。 こういうオチで徹底的に落としてくる怖い話は面白い。