【感想・ネタバレ】七つの海を照らす星のレビュー

あらすじ

様々な事情を抱えた子どもたちが暮らす児童養護施設・七海学園では、少女にまつわる七つの怪異が言い伝えられ、今でも学園で起きる新たな事件に不可思議な謎を投げかけていた。孤独な少女の心を支える“死から蘇った先輩”。行き止まりの階段から、夏の幻のように消えた新入生。女の子が六人揃うと“七人目”が囁く暗闇のトンネル……勤めて二年目の保育士・北沢春菜は、児童福祉司の海王の力を借り、謎解きを通して子どもたちが直面する悩みを解決すべく奮闘する。過去と現在を繋ぐ六つの謎、そして七番目の謎が解かれる時明らかになるもう一つの真実とは。第18回鮎川哲也賞受賞作。/解説=宇田川拓也

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匿名

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児童養護施設に潜む謎を通して子どもたちの悩みを見ていく短編集。そしてその謎が一つに繋がった時思わず唸る。

1
2025年09月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

心が温まり未来の希望に満ち溢れた素敵なミステリーでした。短篇集ではあるものの一話一話にしっかりとしたトリックがあり、「そういうことか」と毎話驚かされました。
最後の章で、これまでの短編が全て繋がる所には興奮しました。
この作品に巡り会えたことに感謝を。

0
2023年06月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公の学園の子供たちへの二人称が「アンタ」なのがちょっと気になった。サバサバした性格を表したかったのかな?
児童養護施設の子供たちの問題を絡めながら幽霊やちょっとした事件を解決していく…
トンネルで聞こえた天使の声の不思議だけ、ちょっと真相が意味わからなかった…そんな勘違いする?

0
2025年03月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

児童養護施設を舞台に、子どもたちを巡る日常の謎をテーマにした短編集。六つの物語が最後に収斂するつくりはすごいな、と思いました。鮎川賞受賞作ということは、デビュー作なのでしょうが、解説にもある通り、伏線のはり方や読者を上手に誘導していく書き方は完成度の高さを感じます。「夏季転住」とか伏線でだいたいオチの予想がついたのですが、最後の七章でそれをひっくり返してしまうのも驚き。個人的には人の優しさがほの温かい「裏庭」が好きです。

0
2019年05月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

総合評価 ★★★★☆
 児童福祉法に基づく児童養護施設である「七海学園」に勤めて2年目になる北沢春菜の視点から描かれる連絡ミステリ。探偵役となるのは児童福祉施設の福祉司である海王さん。七海学園を舞台にした6つの短編と,それらの短編で残された謎をまとめる7つ目の短編からなる。そして,7つ目の短編で3つ目の短編の真相が暴かれる。6つの短編の中での白眉は「滅びの指輪」。ミステリとしてのデキはそこまで高いとは言えないが,金持ちという地位を捨てて浮浪者になりたいほど恐ろしい父との関係にもインパクトがあるし,滅びの指輪というタイトルと意味深なラスト。インパクトがすごすぎる。あとの5作品は短編としてのデキは夏期転住こそ平均的以上だがそのほかは平均点程度。これらをまとめるラストが面白い。野中佳音という一見モブキャラだと思わせる存在が中心的な存在にすり替わる展開はミステリとしての上手さも感じる。総じてレベルの高い,完成度の高いミステリ。★4で。

サプライズ ★★★★☆
 個々の短編のサプライズは少ないが,脇役として登場し,探偵役兼聞き手と思われた野中佳音が「夏期転住」のヒロイン「小松崎直」だったという展開は驚ける。なにより,サプライズがあるような作風ではない点が大きい。個々の短編が最後に一つのつながりを持つという作品は多いが,個々の短編でできてた謎,謎の少女が全て同一人物で,野中佳音であったというのは上手い。伏線がかなりちりばめられているので,納得のいく驚き。ただ,「驚愕の真相」,「どんでん返し」がある作品として読んでしまったので,やや読めてしまったのが残念。全く予備知識なしで読めばサプライズは★5だったと思う。★4で。

熱中度   ★★★☆☆
 文章・文体が非常に洗練されている。小説としての完成度が高いと感じる。その分,何が起こるんだろうという印象は少ない。安心感がある。熱中度としてはそこまで高くないので★3か。

インパクト ★★★★★
 文章・文体が洗練されていていて,人物もきちんと描かれている。そのため,サプライズ型の作品っぽくない。それでいて,野中佳音=小松崎直というラストはサプライズもあるしインパクトがある。また,「滅びの指輪」は一つの短編としてインパクトが高い。★5で。 

キャラクター★★★★★
 北沢春菜を始めてとする七海学園の生徒や関係者,海王さんなど魅力的なキャラクターに溢れている。文章が洗練されており,人間がきちんと書けている印象が強い。★5で。

読後感   ★★★★☆
 野中佳音にも悲しい過去があったことが分かる。そのため,完全に読後感がよいという訳ではないが,読後感の悪さはない。北沢春菜のキャラクターの良さもあいまり,この作品に登場したキャラクターが総登場し,活躍する最後の「七つの海を照らす星」を読む限り,読後感は良い。★4で。

希少価値  ★☆☆☆☆
 現状は絶版ではないし,電子書籍もある。手に入らない,読めないということはないだろう。しかし,あまり売れている感じはない。「アルバトロスは羽ばたかない」だけ置いている大き目の本屋もある。将来的には希少価値が着いてしまうかも。現時点では★1。

メモ
〇 今は亡き星の光も ★★★☆☆
 七海学園の問題児で洋子が,七海学園に移ってくる前にいた児童施設で経験した不思議な体験について語る。かつて救護院といわれていた問題児を預かる自立支援施設というところに移って死亡したはずの玲弥という少女が死んでから自分を見守っていたという話である。葉子は1年前にも玲弥を見たという。海王は北沢春菜に自分の「解釈」を伝える。玲弥は不良だったのではなく病弱だったのではないかと。葉子は行政的な事情から1日ではなく別の日に別の施設に移され,調理師のところで預かられていた。その場を洋子が目撃したのではないかと言おう推理である。七海学園に来てから見た玲弥の姿についての謎は謎として残る。玲弥の人物像が海王の視点でがらっと変わるどんでん返しの教科書のようなミステリ。教科書どおりの印象の分,サプライズ感は少ないが,文体も読みやすくよくできている作品。★3で。

〇 滅びの指輪 ★★★★★
 七海学園の生徒で18歳になる浅田優姫がヒロイン。浅田優姫はかつて戸籍がなかった。廃屋で生活しているところが見つかり,「三条美寿々」と名乗ったが,その名前の少女は別に存在していた。「浅田優姫」の出生届があったので就籍をして,七海学園に移ってきた。優姫は特殊な専門学校への進学を希望していたが,進学にはかなりのお金がかかる。北沢春菜は進学についての相談を受けていたがお金が足りない。しかし,ある日多額の金銭が振り込まれていた。海王に相談したところ,海王は驚くべき真相を語る。「浅田優姫」と名乗る少女に「三条美寿々さん」と話しかけた。海王は浅田優姫と三条美寿々が入れ替わっていたと推理する。その伏線も多く描かれている。「浅田優姫」の証言によると「三条美寿々」の父は異常者だったという。「浅田優姫」は学費をもらうために,「三条美寿々」に連絡を取ったのだった。ミステリとしては浅田優姫と三条美寿々の入れ替わりしかないので,ミステリとしての驚きは少ないが小説としては,なんとも言えないすごみがある作品。傑作といっていい。特に入れ替わった後の三条美寿々とその父親との関係を想像させるラストがなんとも言えない。浅田優姫が感じる不安が何か分からない点も不気味さを感じさせる。★5で。

〇 血文字の短冊 ★★★☆☆
 北沢春菜の大学時代の同級生である野中佳音が登場。ちなみに服装によっては10代に見えるなどの伏線もある。この話は「三単現のS」が伏線となり,鍵となる短編。沙羅と健人とその父である秋本譲二が登場する。母親が家を出て父親だけでは育児ができないので施設に入れている。秋本譲二が吉川さんという相手と再婚しようとしている。沙羅は父親から嫌われているという話を春菜にする。春菜の話を聞いて佳音が謎解きをする。秋本譲二は外国人。沙羅と健人も一目で外国人と分かる外見。日本人と思わせる叙述トリックが描かれている。父親は再婚相手の「藍(あい)」について「Ai hate ~」と伝えた。三単現のSが苦手な沙羅は「Ai」を「I」だと誤解したというオチ。ミステリとしてはたわいない話。叙述トリックもそこまでの意外性はなく,そこそこ。★3で。なお,「お父さんが怖い。殺される」と書かれた短冊が見つかるという七不思議の話が謎として残る。

〇 夏期転住 ★★★★☆
 「遠い夏の日。幻の新入生。少女は行き止まりの非常階段で姿を消し,その記憶はただ一人,少年の胸にしか残されていない。」
 俊樹と美香という七海学園出身の二人が結婚するという。しかし,俊樹は12年前に夏期転住として田舎で生活していたときに小松崎直という少女が連れてこられた。俊樹と直は一緒に生活をし,思い出を作る。しかし,直の父親が直を探しに来て,直は姿を消してしまう。春菜の推理は直は突然視察に来た政治家の子どもで虐待をされていたというもの。一時保護委託という制度を利用して実誠学園に直を一時保護委託した。春菜は直が男の子だったと推理する。直の消失は実誠学園の旗を利用して実誠学園の生徒に交じって逃走した。この短編は,最終的に明らかになる直=佳音の伏線が潜んでいる。ダミーの真相である直=男性の真相もそこそこ意外性がある。この短編単独で見ると★3だが,全体の中の位置付けでも評価したい。この短編集の鍵となる作品★4で。
 
〇 裏庭 ★★★☆☆
 七海学園の裏にある「開かずの門」。「開かずの門の浮姫」という七不思議をめぐる話。塔ノ沢加奈子は七海学園を代表して自治会連合会に参加する。合同定規に参加する。七海学園の高校二年生の明と大日愛児園の瑞枝という少女と付き合っているという。それが問題となった。マスコミに手紙が出され「施設の子は恋愛をしてはいけないのか」という話になる。「子どもの人権侵害」という話題を避けたい行政が戸惑う。明は行事を中止させないため,そして加奈子と杉山のために,自分と瑞枝付き合っているふりをし,それからマスコミに手紙を出した。加奈子が裏門から入ってくる子を見たのは小学校1年生のときの話。このときの話は謎として残る。ミステリとしては弱い。恋愛話。悪くもないがよくもないこの作品の中では平凡なデキ。★3で。

〇 暗闇の天使 ★★★☆☆
 女の子6人で通ると幽霊が出るというトンネルの話。15年前に7人目の女の子の声を聞いた千香に偶然に会って話を聞く。そして今回,舞という少女が「天使の声」を聴く。15年前の出来事は佳音が,排水管が「伝声管」の役割を果たしたのではないかと推理する。真相はトンネルの出入り口にいた警備員(男性)が天使の声の人であるというものだった。舞が見た天使のような女性の話が謎として残る。ミステリとしては意外性もそれほどなく,平凡なデキ。ギリギリ★3といった程度か。

〇 七つの海を照らす星
 最後の話で6つの話の「謎」がつながる。野中佳音は海王と知り合いであり,「小松崎直」であることが分かる。夏期転住の山荘で行き止まりの非常階段から天空へ消えた少女=直が野中佳音だったが,それだけでなく,七海学園にやってきた洋子が門のところで見た死んだ玲弥に似ていた娘,優姫が七海に来る6年前に廃屋に住み着いて幽霊と呼ばれた女の子,七夕の短冊に助けを求めるメッセージを書いた子,学園の開かずの裏門を越えて入ろうとして人の気配に逃げ出した少女,トンネル悪戯をした小さな女の子,これら全てが野中佳音だった。そして,天使事件のときに現れた謎の美少女(天使)も野中佳音だった。「野中佳音(のなかかのん)」もローマ字回文となっている。これまでの話をまとめるようなエピローグのような話。完全な脇役かと思われていた野中佳音の過去が描かれ,物語の中心人物にすり替わる展開はかなりのインパクト。この短編は,この短編だけで評価はしにくい。作品全体で評価すべき短編

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2018年09月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ネタバレ注意です!

「もし、私がこのことを小説に書くんだったら、ペンネームは絶対ローマ字回文になるようにするな。そうしたら冒頭どころか表紙に載るもんね。『最大の伏線は本を開く前から読者の目の前に!』とかってコピーができるわよ」
にこの物語の全てが集約。
児童養護施設という社会的テーマをも扱いつつ、日常の謎を混ぜ込み、最後の話で大風呂敷をきちんとまとめたところが小気味よい。謎の論理的組み立てはもうちょっとなるほどーというものがあるともっとよかった。

けれど、個人的には若竹七海の「ぼくのミステリな日常」の方が驚きは大きかった。

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2015年08月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

書店にて、今作の続編『アルバトロスは羽ばたかない』が平積みされていて、その横に「まずはシリーズ1作目のこちらからどうぞ!」とのおすすめが
せっかくなので同時購入

読みながら「妙に描写が古いな……さては時間誤認系の叙述トリックが仕込まれているな!!」なんて勝手に妄想をしていたら
( 例えば『第四話 夏期転住』での海王さんとのやりとりに手紙を利用していたり、『第六話 暗闇の天使』で佳音とのやりとりがメールで行われていたりなど)
そんなのなにも関係なく、ただ単にそういう時代のお話というだけでした

というかそもそも初版が2013年なんですもの!
そこにびっくりですよ!

冒頭に書いた書店でのおすすめ、これが新刊コーナーの近くで平積みされていたものだから、てっきり近年の作品だとばかり……
勝手に思い込んで、勝手にびっくりしてしまいました(笑)

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2025年08月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

児童養護施設を舞台に展開されるミステリー。短編の中に出てくる人物が実は主人公の近くにいる人間であると言いうのはとても驚いた。途中まで、海王さんは悪い人だと思っていたがそんなことも無くいい人である事が分かり、良かった。

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2021年03月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

物語としては、うーん。レビュー評価が高く、期待しすぎました。

最後のエピソードなんかは驚かされたし、たくさんの伏線を丁寧に回収していて、よく出来ているんだろうなとは思うものの、「そんな都合よく?」「いや、その要素を答え合わせで足すの?」みたいな感覚が多くていまいち盛り上がれない。自分がミステリーをあまり読まないから馴染みがないだけなのかもしれません。

むしろ、児童養護施設の子たちと接する機会が多いので、職員の大変さ、子どもたちの抱える問題や対応の難しさを多少なりとも理解できる部分もあって、その要素の方が興味深く読めました。
でもだからこそ、現実はこんな爽やかに納まるものでは決してなく、あくまでフィクションだから希望の要素を前面に出しているんだろうな、とか余計なことを考えてしまい、これまた複雑な気分になってしまいました。

アルバトロスはどうしよう。

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2019年10月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

鮎川哲也賞受賞ということで読んでみた。
全7話で、舞台・登場人物は同じ。養護施設で働く主人公が日々の生徒たちとのかかわりあいの中で知ることになる施設にまつわる不思議な話。それを安楽椅子探偵役?の相談員が話だけで解決していく。さらに7つ目の話で、この6つの話が全て一つの時系列に見事につながっていく展開は見事で、緻密に計算されたミステリとしての完成度は高い。
が、しかし・・・その一方でミステリとして見ると、養護施設の抱える問題や社会的な位置付け等、問題提起の部分も多くて、これが毎回出てくるので話が不要に長くなる。
キャラも今一つ浮足立ってるような、表面を軽く撫でたような印象でリアルさに欠けている。
作者は養護施設関係で働かれているのかもしれないが、そこでの営みを詳細に描きこんだことが、皮肉なことにミステリとしての爽快感やスピード感を殺してしまったような気がして残念。

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2016年09月28日

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