【感想・ネタバレ】ヒューマン・コメディのレビュー

あらすじ

第二次世界大戦中、カリフォルニア州イサカのマコーリー家では、父が死に、長兄も出征し、14歳のホーマーが学校に通いながら電報配達をして家計を助けている。彼は訃報を届ける役回りに戸惑いを覚えつつも、町の人々との触れあいの中で成長していく……。大人たちと子供たちの悲喜交々を笑いと涙で描き、懐かしさと温かさに包まれる長篇。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

人間讃歌、と言う言葉が自分としては一番、しっくり来る作品だった。人物が(少数の例外はあれど)皆、それぞれの形で人間と世界の善性を何処かしら信じている、何かトラブルや不幸があったとしても、きっと乗り越えて行けるという、宗教で刷り込まれたような頭での信念と言うよりも、魂の奥にある性向とも言うべき心が感じ取れる。

世界とは、本来そういうものなのだ、そうあるべきなのだという、サローヤンのメッセージと受け取れた。不幸があっても、周りが支えてくれる、自分を想ってくれる人が必ず居る、だから「それでもなお」と思うことが出来る。

最後には(予想通り)マーカスに不幸が起こるのだが、それでも暖かな感じが残るのは、おそらくそのようなメッセージが感じ取れるからか。
コメディ、とは、元々悲劇で無い劇を指すものであったのならば、この物語は正に、そう言う意味でのコメディ以外、何物でも無いだろう。

サローヤンの私生活を思うとやや見え方も変わるものの、解説にあるように、そう在りたい、あって欲しいと言う信念ないしは願いが込められている作品とも思える。

個人的に好きなエピソードはいくつもあるのだが、一つ目はホーマーがサンドヴァル夫人に電報を届ける時の居た堪れないような怒りの気持ちと、それを母に話すところ。やり場の無い無念、それが、自分たちと関わりのない場所で、安全な場所から人を害するだけの強欲な存在によって引き起こされていると言う怒りの感情は、本当に言葉にし辛い。

他に好きなのは、ハードルレースで不実を働いたバイフィールドに対して、「弁明の機会を与える事こそアメリカ」「それを理解しない者こそ外国人」と言われるシーン。我が国も含めた今の世界を思うと、この言葉を言える事こそ、本当の誇りだと思えてしまう。

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2025年07月20日

Posted by ブクログ

優しい文章で読みやすかった。
戦時下、アメリカの小さなイサカの町で繰り広げられる人々のあたたかなやり取り。
私もイサカに行ってみたくなった。
優しい気持ちになった。

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2024年08月24日

Posted by ブクログ

twitterで日本の古本屋さんが年に一度は読むと紹介していたので、飛びついたのですが、そこで紹介されていたのは恐らくバルザックの方。でも、結果間違って良かったかも!
マコーレイ家のホーマーの健気なこと、老電信士との心温まる交流…戦争や老いによる死からは逃れようもないけれど、それでも人間は、人間の良心は素晴らしいと思いました。
世の垢にまみれた心を洗い流してくれる一冊でした。
私が読んだのは晶文社 文学のおくりもの16 小島信夫訳のです。

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2023年02月19日

Posted by ブクログ

サローヤンの少年時代と、主人公ホーマーを重ねて読んでみると面白い。
いろんなストーリーが組み込まれている物語

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2022年02月03日

Posted by ブクログ

第二次世界大戦中のアメリカを舞台にした物語。戦時中の人との繋がりや人間性に訴えてくる心に響く良書である。
現代(2025)においても、残念ながら戦争は起きている。ニュースやネットでは戦争の様子が直ぐに状況が反映され、それらの情報の正否や偏りは正確にはわからならいが、現地で起きている凄惨なことが起きていることは想像に難く無い。
この作品においては、戦争中には人と人との繋がりを強調している。そして、多様な価値観だろうが、人種、宗教関係なく、困難な時代を生き残るために、皆で支え合う姿がとても心にくるものがある。
この作品で好きな言葉がある。「悲しいときほど、人に優しく」だ。この言葉は戦時中でも現代の私たちにも活かせる言葉だと私は思うのだ。

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2025年05月11日

Posted by ブクログ

素直に良い本だと思いました。
4歳から少年兵まで、何気ない日常にいろいろな感情、気持ちをおりまぜて、うまく表現されています。
ふつーにという感じですが、それをこんな風に書けたらいいな、と思う内容でした。
だんだん、悲しいような感じがするんですが、でもす~と読み終えました。

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2024年01月12日

Posted by ブクログ

表題ほど明るいわけでは無いけど、希望を感じることができるお話しだった。

日本が太平洋戦争で世相が暗くなる一方の中、太平洋の向こうの「敵国」で生きる、貧しき市井の人が、どういう生き方をしていたのかを感じることができた。

民主主義に対する絶大な信頼とか、健気に生きるホーマー少年に対する電報局長の優しさとか、兵士が敵兵を恨まない姿勢とか、アメリカ人のアメリカ人たる所以とも言えるような美点を感じることができたのは良かった。

P276
「名前は両親にではなく施設でつけられ、両親がどんな人物なのかも知らず、どこの国の人かも知らず、自分が何人の血を引くのかも知らないのだからね。(中略)」
「きみはアメリカ人だ」マーカスがいう。

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2023年08月08日

Posted by ブクログ

大好きな音楽アーティストがこの本を何回も読んだと言っていたので、読んでみました。
本を読む習慣がなかなか身に付かない私が古典作品を読んだので、なかなか読み進められなかったですが、心が温かくなる良いお話だと思いました。
すごいな、強くて優しい人だなって思う登場人物が印象的でした。主人公も頑張って生きててすごく優しいなと思いました。

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2020年06月18日

Posted by ブクログ

苦しみや悲しみなど、否定的なもの全てを含んでも、それでも人生は生きるに値するものだと…。悪人は登場せず、悪く思えても必ず何かしらの頷ける理由があり…。
みんなが「一生懸命」なのです。
「古典」が古典たる所以を教えてくれる一冊でした。

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2018年02月21日

Posted by ブクログ

いろいろわかっているつもりで、半分もわかっていなかった。すべてを理解するには一生あっても足りないかもしれない。誰だってそんなものなのかもしれない。でもぼくは知りたいんです。知らないままで終わりたくない。

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2024年05月24日

Posted by ブクログ

いっぱい本読んでると、またこの展開か、またこういう設定か、と「自分は一体なんのために本を読んでいるんだい?」と頭がぽわわすることがある。(ほぼ毎日)しかしだな、この本はだな、第二次対戦の最中の、耐えしのぐ国民を近所ぐるみで描いているのだが、いちいち心持ってかれるのよ。ホーマーつう14歳の子がもぐりで電報配達の仕事してる。そうさ、大体が「息子が戦死しましたよ」つう内容。皆呆然として、ホーマーを抱き締める。その日はショックで、次の日のご飯の時におかんにポツポツ話す。4歳の弟もアイドルみたいに可愛い。

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2020年10月28日

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