あらすじ
「ラッセル=アインシュタイン」宣言から半世紀。第二次大戦中、アメリカの原爆開発プロジェクト「マンハッタン計画」に参加した物理学者と、師から核廃絶の遺訓を託された仏法者との対話は、戦争の廃絶という究極の目的を共有しながら、「不戦の世界」の実現の可能性を探究する。
【目次】
まえがき ジョセフ・ロートブラット
はじめに 池田大作
第一章 ラッセル=アインシュタイン宣言
第二章 ヒロシマ・ナガサキの「人類への教訓」
第三章 反戦精神を培った「師弟の道」
第四章 マンハッタン計画の真実
第五章 パグウォッシュ会議の挑戦
第六章 核廃絶への闘争
第七章 「核抑止論」という欺瞞
第八章 不戦の世界を―国連と世界市民
第九章 科学者の責任、宗教の使命
第十章 後継の青年たちへのメッセージ
発刊に寄せて ロバート・ハインデ
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Posted by ブクログ
ここ一ヶ月で核問題への関心が高まった。それにともなって議論が高じている気もするが、この本が発刊されたのは、その1年も前のこと。
学者ではない、平和のために実際に行動してきた二人だからこその対話がある。どんな批判や脅しや誤解にも屈せずに進みつづけた二人の偉大な対談。
誤解がある人ほど、読んでほしい一書。
Posted by ブクログ
池田先生とロートブラット博士の対談集。
ロートブラット博士は2005年8月に96歳で亡くなった。2006年に発刊された本書が博士の遺稿となった。
ジョセフ・ロートブラット博士は、マンハッタン計画に参加した科学者の一人であったが、後に計画から離脱した。1955年、ラッセル・アインシュタイン宣言に署名した11人の科学者の1人であり、後にパグウォッシュ会議を立ち上げる。この功績により1995年にノーベル平和賞を受賞。
20世紀は科学の世紀であった。と同時に、戦争の世紀でもあった。科学と戦争。この2つには密接な関係がある。科学が大量殺戮兵器を生み、また戦争が科学を進歩させたからだ。
ロートブラット博士は、ナチスに世界を支配させてはならないとの信念からマンハッタン計画に参画する。しかし、ナチスに原爆を作る計画がないと知って、この計画から離脱する。
しかし、原爆は広島、長崎に落とされ、ロートブラット博士は自責の念から、反核運動、反戦運動に人生を捧げることになる。
池田先生と博士は、「戦争の文化」を「平和の文化」に転換しなければならないという点で意見が一致する。戦争ありきで政治、外交を考える文化をなくすという意味である。
そして、そのためには、教育が根幹であるという点でも意見の一致をみる。世界市民の意識を育む教育が必要という意味である。
それにしても、ロートブラット博士の崇高な人生に敬服する。全編を通して、博士の高貴な人格がにじみ出ている。96歳にしてなお、仕事に取り組もうという意欲、使命感、そして学ぶ姿勢。若々しい。
崇高な理念のために生きる一生は、多くの人の心に火を灯す。