あらすじ
彼女を非難できる人は幸せかもしれない。
自尊心を失い、喉を掻きむしる地獄を知らないからだ。
精神障害を抱えても、自殺未遂をしても、生活保護を受けても、終わりじゃない。
それでも人や社会と繋がることをあきらめず、生き直した人がここにいる。
<主婦 / 『夫のちんぽが入らない』著者 こだまさん>
うつ、自殺未遂、生活保護、親との軋轢、貧困ビジネス……。
問題ばかりの人生を生き抜く、自伝的エッセイ!!
月給12万、ボーナスなし、社会保険なし、休みなし。
エロ漫画雑誌の編集者としてブラック企業で働いた結果、心を病んで自殺未遂。
仕事を失い、うつ病と診断され、生活保護を受給することに。
社会復帰を目指すも、やる気のないケースワーカーに消耗させられ、
患者を食い物にするクリニックの巧妙なビジネスに巻き込まれる日々。
自由もなく“ただ生きている”ことへのうしろめたさからよみがえる希死念慮。
未来の見えない絶望の中、ふたたび巡り合った「漫画の編集」という仕事で運命を拓こうとするが……!?
女一人、「再生」するまでの記録。
普通に働いて、普通に生きたかった。
その「普通」が、いかに手に入れるのが困難なものかを知った。
宝石も高価な服も要らない。
ただ、その日その日をつつましく生きたいと願っていた。(本文より)
“生きづらさ”を感じる多くの方に読んで頂きたい一冊です。
<目次>
はじめに
第1章 精神障害、生活保護、自殺未遂
第2章 ケースワーカーとの不和
第3章 「お菓子屋さん」とクリニックのビジネス
第4章 漫画の単行本をつくる仕事
第5章 普通に働き、普通に生きる
第6章 ケースワーカーに談判、そして
第7章 人生にイエスと叫べ!
おわりに
特別収録 コミック「女編集者残酷物語」
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
僕は精神病に興味がありますし、貧困にも興味がありますが、この著書はビジネス系のウェブサイトに寄稿していた著者小林エリコさんの記事を読んで知りました。
序盤読み進めることが辛くなってしまい途中で辞めようとも思いましたが、最終的になんとか読み切れました。とてもいい本でした。
著者自身のこれまでのことを書いている内容です。
就職の失敗、自殺未遂、生活保護、貧困ビジネス、再就職の過程です。
人間誰しも負のスパイラルに巻き込まれるとなかなか抜け出すことが大変ですが、著者はなんとか踏ん張ったわけですね。
本当によかったね。と言ってあげたいです。
貧困には経済的な意味合いがまずありますが、それだけでなく、健康の貧困、そして、関係性の貧困があります。
経済、関係、健康いずれもとても重要なもので、それらの一つでも失うことで貧困へと至り易くなってしまうのです。
どれを失っても辛いものですが、逆に言えば、それらのうちどこかに手厚いサポートが加われば貧困から脱却できるチャンスも高まります。
関係性の貧困が解決すれば、社会制度の活用や就職のチャンスも高まるでしょうし、必要な医療制度に接続することもできるでしょう。
また、人はどこかに所属しているという感覚がとても重要です。自分がどこかに所属している。他者から必要とされている。他者や社会に貢献出来ている。そう感じられて人は自信を持つことができ、そして、生きていくエネルギーが生まれます。
自分の居場所があることはとても重要です。
小林さんはいずれも失ってしまうのですが、そんな状態からよくぞ立ち直りました。
しかし、世の中には上記の3要素を失って苦しんでいる弱者がたくさんいることでしょう。彼ら彼女たちのその状況を理解し、手を差し伸べる姿勢を持つ人、彼らの苦しみに耳を傾ける人が増えれば増えるほど、良い世の中になっていきます。
それは、小林さんの意見ですが、僕も全く同じ意見です。
残念ながら現代社会は弱い立場の人の気持ちを考えない人が多すぎるように思えます。そんなことでは結局自分自身の首を締めることなりますし、また、いつでも自分が弱い立場になり得るのです。
この著書がどれだけの人に読まれているかは僕にはわかりませんが、多くの人に読んでもらって社会についてもっと考えて欲しいと思います。
Posted by ブクログ
体調悪く、働けない日々が続きこの先どうするか。絶望感の中読んだ。
生活保護について、実体験の文章から色々考えさせられる。
捨て身にならず、できる事は、やり続けていかなくては。と思えた本でした。
Posted by ブクログ
ご自身の体験記で貧困や精神障害が、血で書かれたようなすごい迫力で圧倒される。生活保護を受けていても気高さを失わないところが素晴らしかった。この本と、スピリッツで読んでいる柏木ハルコさんの『健康で文化的な最低限度の生活』と今読んでる途中の鶴見済さんの『0円で生きる: 小さくても豊かな経済の作り方』を合わせて読むと、全部うまく回りそうだ。
特に精神病のクリニックで、薬の業者が来た途端診断がうつ病から統合失調症にされてしまうのがひどかった。経済に食い物にされてしまう恐ろしさがあった。
Posted by ブクログ
「死にたくなった」人の特効薬になる本を探して購入。
ワーキングプアから、精神疾患をきたし、生活保護になる至った作者の体験がつづられている。
私は、本書を「死にたい」気持ちを解決するためではなく、「死にたくなった」人の気持ちを知るために購入したのだったが、メンタル系の書籍の中で最も心に響いたのは本書である。
そもそも、本を書く人なんて優秀ではないか。「死にたい」を理性と賢明さで克服した人間からのアドバイス。有能であるが故に心に変調をきたし、結果として有能な活動を行っている人間。ルサンチマンと呼んでもらって構わないけれど、どうしても自分や大多数の人に比べて境遇に隔たりを感じてしまう。
対して、著者は確かに本を書いているが、経緯は親近感を感じる。短大を出て就職した先が、ブラック企業だったのだ。そして、生活保護というセーフティネットに引っかかるところまでなるべくして落ち込んでしまった不条理とも言える境遇である。
しかし、先に賢人たちを強者だと罵ったあとに、著者の弱者としての立場に哀れみを感じて、それがまた、自分に快楽として作用しかかるのを感じた。著者は私よりも、ずっと強く、ずっと立派な人間である。この立場の境目は動的で連続的であることを忘れてはならないと肝に銘じた。
本書で気づかされたこと、
私たちは、仕事をしたくない、したくないと日々口にするが、仕事をすること、つまり社会を回している感覚というのは自分の存在意義に直結する。そして、そうできない、やむにやまれぬ理由で普通でいられず苦しんでいる人が、多くいるということを認識しなければならない。
また、私は、生活保護を受ける人達を恥ずかしいと思ってきた。しかし、本書で追い込まれた人達の立場を知り、責めるべき理由なんてないことが分かった。生活保護は不運な人を救う日本人の良心ではないだろうか。
最後に、これこそが「死にたくなった」人に必要な考え方ではないかと感じた著者の言葉を引用したい。
“だけどまだ、人生の途中だ。これから先も失敗したり、絶望したりするかもしれない。けれど、それはすべて必要なことなのだ。私はこのままでいいのだと思った。”
過去と未来の悲しみと苦しみをひっくるめて人生を全肯定すること。これが、「諦める」でもなく、「前を向かせる」でもない、過酷な境遇から復活を果たした著者が語る至言である。