あらすじ
神功皇后、持統天皇、北条政子、淀殿……連綿 と続いた女性権力者の系譜を掘り起こす。女性天皇はいかなる状況で登場したか、天皇や将軍の「母」はいかに権力を掌握したのか、なぜ時代とともに女性は権力から遠ざかったのか。多様な史資料を駆使し、社会構造や女性観の変遷、東アジア諸国からの影響を検討して謎に迫るとともに、日本の特性をも明らかにする。天皇の退位を控え、転換点にある今こそ読みたい注目作!
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Posted by ブクログ
原武史の『皇后考』では、明治以降の歴代の皇后が神功皇后と光明皇后を参照しながら皇后としてのアイデンティティを確立したことが述べられていた。
本書では考察の対象となる時間・空間が拡張され、古代からの日本での「女帝」のあり方と、中国、韓国、沖縄などの「女帝」について触れられている。
序章と終章から、著者が本書を書いた理由が、日本の女性の政治進出が進まない事へのいらだちがあるように読めて、興味深かった。
あとはメモ。
・明治以降の皇后が影響を受けた光明皇后は、唐の武則天を見習っていた
・「血の穢れ」の概念は奈良末期から平安初期に、中国からの影響でうまれた
・平安時代の摂関政治時代も、実は皇太后が政治的権力をもっていた
Posted by ブクログ
今上天皇の「おことば」を受け、平成が終わろうと、そして新しい世になろうとしている。
そこで登場するのが、現皇太子後の天皇の問題だ。
万世一系、男系による皇位継承がずっと保たれてきた、というのが保守派の意見だが、それに異議を唱えるのが本書の立場だ。
事実を事実として認め、有益な視座を提供する(序章より)ことが本書の目的である。
読んでみると、なら、平安までは女性が男性とほぼ同様に扱われていたのがわかる。
確かに院政が行なわれていても、女性は完全に蚊帳の外というわけではなかったようだ。
武家政治が始まっても、将軍の母などが力を持っていた。
一条兼良の『小夜のねざめ』では女性だからと言って卑下せず、北条政子らをモデルとして大いに政治に励むように激励している(136〜137頁)。
しかしそれが変わったのが大正期。
同じ本を題材にしながら全く逆の立場を主張する者が出てきた。
江戸期に女性の権力が封じられ、明治以降は皇后の「女性化」が進んだのだという。
終章、278〜279頁は是非とも心に留め置きたい。
男尊女卑という概念はもとより日本にはない。
これが日本の真の伝統だ。
「ジェンダー的役割分業観を歴史的に相対化する視点を養」うことはこれからの時代に当然の教養であり、それこそが未来を考える上で重要な土台なのである。
Posted by ブクログ
神功皇后から始まり、現代の皇后陛下まで、代々の権力のそばにあり、また権力そのものの力を持っていた女性たちについて書かれています。権力者の、妻であり、母であり、影で支えつつ、政権を支え続けた彼女たちの大きな影響について知ることができます。またその歴史が、模範としてきた中国や韓国などとも、似て違っていること。最終的にそれが、現代の日本での女性の社会進出に影響を与えていること。ちょっと突飛な結論と感じますが、わかるような部分もあり考えさせられました。歴史に出てくる、権力を持った女性の姿を読むにつれ、似たような構図になっている身近な家庭や会社などの組織に既視感を覚えることもありました。現代社会を見る、別の角度からの視点に気づくことができたのではないかと思います。