【感想・ネタバレ】双子は驢馬に跨がってのレビュー

あらすじ

「アメトーーク!」読書芸人特集・光浦靖子氏紹介でブレイク! 監禁される親子、救出に向かう双子と驢馬――独自の世界観で注目を集める気鋭が描く、荒唐無稽な冒険譚。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

彼の想像力が好きだ。
驢馬は驢馬のことを言っているのか、飼育されているのは誰なのか、その寓意性とでも呼ぶべきものが、好きだ。
この物語は、小説を書くことについて語っているのだと思う。
双子が驢馬に跨って親子を助けに来るだろう、という想像。想像は創造され、まず驢馬がU夫妻の元へやって来る。やがて双子が誕生し、旅に出る。
書き始めたのは良いけれど、時にどこへ向かっているのか分からなくなることもある。それでも目指すべき結末へ向かって進んでゆく。後戻りは出来ない。
親子は外の世界へ出たいと望みながらも、監禁生活に甘んじているようにも見える。配下たちが食事を持って来る隙を狙って逃げ出すことは出来ないのか。四人がかりで壁を黒く塗りつぶす作業をしていた時には、逃げ出すチャンスもあったように思える。でも、ただ二人は絶望する。地図の作成から絶望、そして囲碁の世界への陶酔。
作者が道に迷っている時でも、双子たちの旅は続く。なぜなら、誕生した時点で、作者とは別の人格として意思を持ち始めるからだ。
そして一通の手紙が、交わるはずのない世界を交わらせる。まるで一冊の本が、現実の世界と物語の世界を交わらせるかのように。
双子たちは親子のいるペンション、つまり旅の終着点、結末であるはずの場所へたどり着く。しかし結末は結末とならず、むしろ始まりとなる。なぜ終われないのか。その答えが親子の現在の状況を示す、この一文なのだと思う。「最後の一局を目指して打ち始めたはずなのに、終わりなく打ち続けられたら、という思いが高まり、親子は名勝負の連続、その幸福に溺れていった。」
終わらせたくない物語、というものがある。意志を持ち始めた登場人物たちは物語の中で確かに息づき、物語の時間の中を生きる。その物語に寄り添っている時、私達もまたその物語の時間を生きる。時間に限りがあるように、またページに限りがあるように、いつかその物語は結末を迎えるはずなのだ。しかし登場人物たちが確かな存在として生きていればいるほど、その物語の時間から抜け出せなくなる。それは、物語としては幸福なことである。幸福でありながら、同時にそれは現実を捨てることをも意味し、失われていく記憶は、そのことを示しているのではないだろうか。
しかしこの小説は、別の観点からも読めると思う。その重層性は、とても美しい。

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2017年10月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

岡上淑子さんの装画に惹かれた完全なジャケ借りで手にした初めての作家さんでした。
面白かったです。不条理過ぎて内容が無い気がするお話だったのですが最後まで惹き付けられました。
記憶も自らの名前も失い、理由もわからず監禁されている「君子危うきに近寄らず」と「君子」の親子と、彼らを救出するために驢馬と旅に出た双子のそれぞれの日々が綴られていきます。
双子のみつるとことみも旅の中で記憶を失っていき、その事の恍惚も描かれていました。心身ともに軽くなっていくことの心地好さ、陶酔はわかる気がします。
驢馬の名前がナカタニ、途中暫し旅を共にする駱駝の名前がフルカワなのも可愛い。旅で出会う大人はアルファベット1字のイニシャルのみというのが対照的でした。
ラストは、双子は親子までたどり着くのですが解放まで至らず、オーナーへ会う為の旅がまた始まる…という結末でした。結末まで不条理で面白かったです。
新たな読書体験でした。この作家さんの世界も触れていきたいです。

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2019年07月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

記憶を無くしたままどこかの一室に閉じ込められている父と息子。

親子は互いに血の繋がりがあるのかどうかすら、記憶からない状態で、
いつか双子が驢馬に跨って、自分たちを助けてくれるだろうと信じて励まし合う日々を送る。

壁に書いた地図は、食事を運んでくる男たちによって真っ黒に塗りつぶされ、
トイレの壁で囲碁をやるようになり、再び壁に食器を使って地図を書き始めた。

そこから遠い土地では、双子は長い年月をかけて驢馬と共に旅を続けていた。

結局、親子と双子は出会いそうで出会わない。
出会わないんかーい!ってツッコミ入れそうになる最後。

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2018年02月19日

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