あらすじ
東京裁判以来、日本では、張作霖爆殺事件に関する膨大かつ詳細な調査・研究が積み重ねられてきた。しかし、満洲(現・中国東北部)に生まれ、清朝末期から中華民国初期の軍閥の時代を生きた人間としての張作霖の全体像は、ほとんど知られていない。
本書は、基本史料はもとより、改革開放後、とりわけ2000年以降に公開された史書、報道、論文の類に依拠し、張作霖の生い立ちから爆殺に至る軌跡を再構築したものである。草莽から身を起こした張作霖は、けた違いの器量によって乱世を駆け上がっていく。匪賊を斃し、モンゴル兵と死闘を演じ、常勝を誇る大軍閥と激突、革命軍にも白旗を掲げることはなかった。満洲を勢力圏とする日本に対しては、その力を利用しながら、傀儡の道を選ぶことなく、最後は日本軍に殺された。
側近や仇敵らのサイドストーリー、日本側の思惑などを盛り込んで、張作霖の人物像と時代の空気を重層的に描くと同時に、激動する近代中国の実像に迫り、遠くない未来に奈落が待ち受けている日本の運命を浮き彫りにする力作である。『覇王と革命』(小社刊)で軍閥混戦の時代を描いた著者が満を持して放つ本格評伝!
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Posted by ブクログ
【張作霖の生涯からは、近代中国の激動が見える。遠くない未来に奈落が待ち受けている日本の運命もまた、はっきりと見える】(文中より引用)
世が乱れる清朝末期に躍り出て、瞬く間に東北の王となった張作霖。1928年に爆殺されるまでの駆け抜けた半生を、膨大な情報量を基として臨場感たっぷりに描いた作品です。著者は、読売新聞社の中国駐在編集委員などを務める杉山祐之。
「張作霖爆殺事件」という単語の連なりでしか知らなかった人物だったのですが、大河ドラマの世界顔負けの波乱の人生を送っていたことがわかり、まず伝記として最高に面白い読み物でした。同時に張作霖から眺める清朝の崩壊や近代日本の対中外交が伺える点も、高評価をあげたくなりました。
知らないことがまだまだたくさんあるようです☆5つ