あらすじ
痴漢は、依存症です。
痴漢の多くは、勃起していない。
痴漢の多くは、よき家庭人である。
痴漢撲滅を目指し、加害者を見つめ続ける性犯罪・依存症の専門家が、社会で大きく誤解されている「痴漢の実態」を解明する。
世間の“痴漢像”には誤解がいっぱい。
・痴漢は女性に相手にされない、さみしい男である。
・性欲をコントロールできないから、痴漢に走る。
・肌を露出した女性は、痴漢に狙われやすい。
・電車内に防犯カメラを搭載すれば、痴漢は減る。
・痴漢よりも、冤罪事件が問題だ。
……など。
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Posted by ブクログ
とにかく性犯罪の加害者への罰則が軽すぎる。
捕まっても起訴すらされないとか、被害者に非があるかのようにいわれてしまう風潮とか何なんだろう、と常々憤っていた。議論が加熱すると必ず冤罪がどうとかいう話が持ち出されて、めちゃくちゃになる。
何なの、おかしくない?ってずっと思ってきた。
この本には、そのあたりの話まできっちりと書かれている。
驚いた。
性犯罪者は性欲が異常に強くて理性でそれが制御できないのだから、被害を無くすためには去勢するしかない、くらいに思っていた。痴漢は減らず、性犯罪者がまっとうに裁かれない現実に苛立つと、極端な願望を抱くしか救いがないから。
まずその今の現状がおかしいことはまた別の話として、痴漢の人物像や、痴漢をする目的、自分からはなかなかやめられずどんどんエスカレートし捕まるまでやめられないこと、逮捕されても家族への罪悪感はあっても被害者には謝罪の気持ちはない等、思っていたのとは違い、諸々衝撃的な内容だった。
ただ捕まって刑に服しても再犯率が高いことから、再犯防止プログラムが必要なこと、そして加害者家族へのケアのことまで痴漢をとりまく現状、問題や課題までよくまとめられていて、法律や環境が早く整って、とにかく早く痴漢被害が無くなる世の中になってほしい、と思った。
Posted by ブクログ
著者は加害者臨床を専門とする精神保健福祉士/社会福祉士。特に日本における痴漢のメカニズムと再犯防止プログラムに関する内容であった。
著者が男性であることに少なからず意義があると思う。
全体を通して、痴漢を発生させている社会背景やメカニズムが具体的かつ明瞭に書かれていた。一方、どう再犯を防ぐか、発生させなくするかという点は薄め。実際、これからもっと検討も議論も必要なのだろうなと思った。
性犯罪は常習化しやすいこと、痴漢は学習された行為であること、日本においては男性の生きづらさや一部残る男尊女卑、満員電車などをはじめとする社会要因を踏まえ、痴漢行為はストレスコーピングとして繰り返されるのだと理解した。
冤罪に関するデータが不足しているとのことだが、本書の発行から4年経っているので探ってみたい。
また、新型コロナによる在宅ワークが進んだ以降の痴漢に関するデータが気になると同時に、そこでストレスを対処できなくなった人たちの対処方法がどのように変わっているのだろうと、少し怖くなった。
Posted by ブクログ
徹底して被害者の側に立った上で、痴漢行為を依存症として治療の必要と治療法を解説する。痴漢をしてみたくなる気持ちが理解できなくはないため読んでいて苦しくなる。満員電車に乗る環境になくて本当によかった。前から『それでも僕はやってない』の、普段はやっているけど、その時だけは本当にやっていなかった痴漢冤罪事件の話を作ってみたいと思っていたのだけど半端じゃなく大変そうだ。
著者がその立場になく、分析したり解説したりするのが仕事とは言え、ここまで書くならあなたはどうなのだ?というのが気になった。痴漢は性欲とも実は密接ではないという論もあるのだが、それでもなお性欲を持っていること自体に後ろめたさを感じさせられる。
先日映画にもしていただいた『チェリーボーイズ』がまさに認知の歪みをベースに作られた物語であるので申し訳ない気持ちになった。