あらすじ
目をこらすと今も見える、あなたの隣の幽霊……鬱蒼とした原宿の館に出没する女の子、戦時中活躍したミシン、ぼけたおじいちゃんの繰り返す謎の言葉、廃墟と化した台湾人留学生寮。温かいユーモアに包まれ、涙がこぼれる七つの幽霊連作集。
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Posted by ブクログ
幽霊にまつわる7つの短編をおさめた1冊。どこかで紹介されていたので手に取ってみたのだが、思っていた以上に良い作品集だった。捨て作なし、どの掌編も味わい深くて余韻がよい!
中でも好きな作品は…となると、読者の好みによって分かれるんだろう。俺はしいて上げたら「きららの紙飛行機」「ゴーストライター」かな。
それにしても、中島京子という作家をマークしてなかった自分の不見識さがもう!こんだけエエ短編を書くのだから他の作品も期待大!過去作追いかけることにしよう。読みたい本がまた増えるぞ(笑
Posted by ブクログ
とても良かった。
読後少ししんみりした気分。
7つの短編のどれも良かった。
三十年近く前原宿の一軒家で愛し合った女の話。
ゴーストライターの新米がバーで誰にも知られないまま死んでいく人の話を聞く話。
中でも好きなのは、ミシンの履歴。戦前に作られたミシンは戦争により持ち主が代わっていく。戦後徐々に使われる機会は減り押入れで忘れられたかと思ったが…
余談だが昔テレビで見た古い映画を思い出した。戦争で生死が分からない夫の帰りを待っていた妻は戦後何年も力になってくれた夫の友人と結婚する。そこに捕虜になっていた夫が帰って来る。複雑な思いで夫と暮らすが、心に深いキズをおった夫との暮らしは辛いものだった。生活の為妻は夜なべでミシンを踏む。夫にはそれが機銃攻撃の音に聞こえる。モノクロの画面にミシンの映像が印象に残っている。心を病んだ夫につくそうとする妻、二人の幸せを願い身を引いた友人。命がけで帰って来たけれど誰も幸せに出来ない夫。結末忘れてしまったけど。池部良の暗さとミシンの音。
きららの紙飛行機もいい。
戦争で浮浪児となった少年の幽霊とネグレストの女の子の話。二人が同じ様に飢えて同じ様にすえた臭いをさせているのが悲しい。
亡霊たちも心に残る。
中に出てくる大岡昌平の詩は泣きたいくらい。野火は高校生の頃読んでそれ以外知らなかったけど本当に戦争を知っている人の書いたものは今どきのある種戦争を美化した、戦争で死んだ人を美化したようなものとは違う。森友の幼稚園はやはり異常で作家も嫌悪感を感じたのだろうな。
キャンプはあちらの世界の入り口の話だろうか。多分満州からの引き揚げと難民でボートピープルの人。全体の雰囲気がいい。
廃墟は少し何が言いたいか分からなかった。
キーワードは戦争だろうか。しんみりと心に残る。
Posted by ブクログ
よくある都市伝説のような幽霊談ではないし、「ゴースト」というテーマを全てにあてはめる必要もないのだけれど。
自分の見ているもの、目には見えないけれど確かにそこにある気配や、それに関わることができる人がいる。ものの持つ履歴には、人の思いが入っている・・・。
日常に潜む非日常を、こんなにも豊かに描ける中島京子という作家さんは、やはりすごいです。
Posted by ブクログ
ハロウィンだからとかじゃないけど、たまたま好きな作家の短編集を読み出したら幽霊がテーマでした。
しかも、戦争で傷ついた人たちに焦点を当てている。
幽霊と言っても震えあがるほど怖くない。
しみじみ。
Posted by ブクログ
7つの短編を収録。一編ずつ独立した話だけれど、タイトルの通り、どのお話にもゴーストというか幽霊というか、この世にはもう存在していないものが共通して出てきます。不思議で悲しいけれど、全然怖くはありません。祖父に会いに来ていた「リョウユー」のことを想う孫娘の話と、少女きららと少年の霊の話が好きでした。キャンプのお話も印象に残りました。
Posted by ブクログ
今もどこかにいるゴーストたち短編。
原宿のあった古い家で出会った女の正体、少女、若い女性、老婆。
古道具屋にあった今は動かないミシンが辿ってきた過去。
浮浪児だったケンタと、母に育児放棄されている現代の少女の交流。
認知症になったおじいちゃんが、しきりに言っていたリョウユーのこと。
どこに向かっているのかわからない死後のキャンプで、思いは残された息子たちのこと。
台湾の知り合いと見に行った日本の廃墟。
駆け出しのゴーストライターが飲み屋で出会った、ゴーストについて熱弁する彼ら。
かつて世界中であった、日本でもあった戦争の気配。
Posted by ブクログ
ゴースト(幽霊)と聞くと、この世に思いを残し、成仏できずに彷徨い続ける姿を思い浮かべてしまう。
でも「ゴースト」に出てくる7つの幽霊は、哀愁漂う寂しいものだった。
第五話「キャンプ」戦争により傷つけられた多くの人々。
難民キャンプの母たちが悲しい。
第七話「ゴーストライター」より
<ゴーストはなんにもできない。ただ、横にいて、思い出してもらうのを待ってる> 。
なにかするのではなく、その人を思い出すのがいいのかな。そして、第四話「亡霊たち」の文中でも書かれている、「靴の話ー大岡昇平戦争小説集」大岡昇平著 を読んでみようか。
Posted by ブクログ
様々なゴーストにまつわる短編集。
戦後の混乱期、交通事故で亡くなったケンタの霊が、ネグレクトの少女に会う「きららの紙飛行機」、
年老いた曽祖父が、戦争時代の僚友に会う「亡霊たち」、
戦時中、乳飲み子を亡くし、小さな子供達と離れ離れになってしまった母の霊の「キャンプ」など、戦争をベースにした話に惹かれました。
著者の筆致に、私には読みにくいものもあるため、一部好みではないものもあったが、独特の世界観に魅了されました。
三井のリハウスのCM、樹木希林のお婆ちゃんの家見て、共通する印象を持ちました。
Posted by ブクログ
『小さなおうち』以来の中島京子。7つの短編は時代背景も似ていて、懐かしさや昭和のぬくもりを感じさせるテイスト。巧みなストーリーテリングぶりが相変わらずみごとだなぁと各章ごとに思わされる。
本書のタイトルにあるようにゴースト(亡霊)たちが関わる不思議なお話だけど、怪談の様相はまったくなく、時代背景や史実に基づいた、あるいはしっかり取材した事実も巧みに活かされた、実に地に足のついたストーリーだ(幽霊の話なのにね・笑)。
亡霊、幽霊と書いたが、モチーフは土地、建物、あるいはモノに宿った思い、"念"といったものだろうか。目に見えて現れないものに、姿や形を与え、その意を語らしむ。新しい表現かもと思ったが、そもそも小説家の仕事とは、そういった、我々一般人が言葉に出来ない、さまざまな想いや感情を巧みに文章化するものともいえる。改めて、そう思える作品たち、なので上手いな、みごとだな、と思わされるのだった。
なかでも「ミシンの履歴」は秀逸なお話。ミシンというモノを通して描く昭和史、戦前戦後の女性の立場、社会進出の様子などがよく判る。「頼まれればどんなものでも縫った」とまるでミシンが仕事を引き受けて衣服を仕立てていったかのような表現が面白い。
「きららの紙飛行機」に出てくるケンタという幽霊は、何度もこの世に出て来ては一定期間を過ごし、実際死んだときと同じように、同じ場所で同じ交通事故で死ぬ(というのも変だが)運命にあるらしく、ぐるぐると同じ人生(?)を繰り返す。『ハリー・オーガスト、15回目の人生』等、リプレイものの話をどことなく彷彿させる面白い設定だ。
「亡霊たち」「キャンプ」は、そこはかとなく反戦のメッセージをにじませる。とくに「キャンプ」はいろんな人種が入りまじることからも、昨今の中東情勢からの連想で、いわゆる難民キャンプなのかなと読み進むと、、、この設えには唸らされた。
そして終章「ゴーストライター」。
社史や立身出世譚を本人たちに代わって執筆するなど代筆業を主に営む小さな出版社に就職した主人公が、とある日とあるバーで、ゴーストたちからゴーストライターの極意を聞くという面白おかしい作り。ユニークな設定や昨今話題となったゴーストライター話や過去の有名な代筆の話などを巧みに織り交ぜながら、実は言わんとするところが、本書のバックボーンというか、全編に一本の筋を通すお話であり、小説家としての著者の思いも語られているのかなと感じるところ。つまり、こうだ。
職場の上司、三流編集長は、ポートレート撮影に喩えてゴーストライターの極意をこう説く;
「『おしごと』するカメラマンはね、実物より、ちょっとだけ美人に撮るわけよ。それと同じでね、書くときも、実物より、ちょっとだけよく書く必要があるわけ」
それを聞いていた、そのバーにいた男(恐らく幽霊)は、編集長が寝落ちしてから主人公にこうアドバイスする。
「人というのはね、そうそう、簡単には気持ちを変えないよ。容易には口を開かないよ。口を開かせるには、こちらの思いを伝えなければならないんだ(中略) そうだよ。こちらに思いがなくて、どうして人に語らせることができるかね」
男が出て行った後を継いで、女(こちらも幽霊?)が言う、
「死んだ者の執念とか、怨念が、生きている人に憑りついてなにかを動かすなんて、そんな古典的なことを、あの人はまだ信じたいのよね(中略) そんなことはないの。起こらないの。実際は逆なの。生きている者の怨念が、あたしたちを骸から引っ張り出すの」
死んだ者の怨念という喩えで、この短編集の骨子を見事いい放っているんだなぁ。生きている者、つまり著者中島京子が、小説の形を使い自分の思いを、ゴーストをして語らしめているのだなということがよく判る。実に、お見事!!
Posted by ブクログ
幽霊にまつわる短編集。
幽霊っていうと、落武者みたいなイメージだけど、本書では戦中・戦後の過酷な時代を生きた人の幽霊が多い。
戦争に出兵したおじいちゃんの「僚友」の話。
孫である主人公が、おじいちゃんの戦時の足跡をたどるように文献を読んだりするところ、わかるわぁと思いながら読みました。
Posted by ブクログ
短編小説を読んでるかのような各章ごとに主人公が変わっていき面白さはあった。
昔のことを振り返りながら各時代の情景が思い出されるので興味深いところもある。
一つのストーリーのインパクトにかける。
Posted by ブクログ
言葉や周りの風景、道具にゴーストの影らしきを思わせる雰囲気がある短編集。個人的に 亡霊たち が好きだ。戦争に行ったおじいさんが惚けて何度も、リョウユウを来たと繰り返す。仲のいい孫娘が探ろうとするが真実が分からないままおじいさんは亡くなる。奥が深い素敵な作品だと思った。
Posted by ブクログ
初めての中島京子さん。
小川洋子さんの小説に出会った時の感覚を思い出した。
人や場所や物には必ず歴史がある。
誰にも語られなかった言葉や想い。
その人が、その物が、その場所が目に見える形で無くなってしまったとしても、誰かの心の中に生き続ける。
その誰かさえ無くなってしまったとしても、もう目に見えないけれどこの世界を形作っているんだと思う。
怖くない幽霊の物語。
幽霊というよりそれは、ゴースト、と読んだ方がしっくりくる。
切なくもあり、読後は心が仄かに温かくなった。
他の作品も読もうと思う。
Posted by ブクログ
ゴースト(幽霊)をテーマにした短編集。
実際に幽霊の登場するものもあり、昔のものの魂みたいなものだったり、様々。
「キャンプ」に出てくる逸話が、「おさるのジョージ」の作家夫妻の話とそっくり、と思ったら、それをモデルにしていた。なぁんだ(笑)
Posted by ブクログ
*目をこらすと今も見える鬱蒼とした原宿の館に出没する女の子、二〇世紀を生き抜いたミシン、おじいちゃんの繰り返す謎の言葉、廃墟と化した台湾人留学生寮。温かいユーモアに包まれ、思わず涙があふれる7つの幽霊連作集*
幽霊のお話と言うよりも、目には見えない、あたたかくて柔らかくて大事な何か…のお話。特に「ミシンの履歴」と「きららの紙飛行機」が心に染入る。中島京子さんの、淋しくてやるせないのにほわりと温かな何かが残る読後感が好き。
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幽霊をモチーフにした7編の連作集。
7編いずれも、先の戦争と戦後に何らかの関わりを持つ。
ただ、連作といっても、各作品の舞台や登場人物には何の繋がりもないし、作風も見事なくらいバラバラ。
ネット上の感想をいくつか眺めてみると、戦争孤児を題材にした『きららの紙飛行機』、SFっぽい作風の『キャンプ』あたりが好評価のようだが、反戦臭が直截的過ぎてやや鼻につく。
人を描いて教条的になるよりも、『原宿の家』『ミシンの履歴』『廃墟』など、建物やモノに化体して時の流れを感じさせる作品が好ましい。
そういえば、作者の直木賞受賞作は『小さいおうち』だったね。
Posted by ブクログ
タイトルの示すとおり、ゴーストの登場する7編からなる短編集。
幽霊といっても怖がらせるオカルトではなく、背景にある戦争や昭和の設定がうまく生かされていて、現実の出来事とリアルに結びついている。
亡くなった人たちの切ない思いを、今を生きている私たちが受け継いでいくことの大切さを静かに教えてくれる一冊だった。
Posted by ブクログ
温かい気持ちになったあとに、思わず涙があふれてしまう。
――風格のある原宿の洋館はGHQの接収住宅でもあった。
そこに小さな女の子はなぜ出没するのか?
戦時中、「踏めよ 殖やせよ」と大活躍し焼夷弾をあびながらも生き延びたミシンの数奇な運命とは?
少しぼけた仙太郎おじいちゃんが繰り返す、「リョーユー」という言葉の真意は孫娘に届くのか?
おさるのジョージの作者たちは難民キャンプで何をしていたのか?
やわらかいユーモアと時代の底をよみとるセンスで、7つの幽霊を現代に蘇生させる連作集。
【目次】
第一話 原宿の家
第二話 ミシンの履歴
第三話 きららの紙飛行機
第四話 亡霊たち
第五話 キャンプ
第六話 廃墟
第七話 ゴーストライター
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これだけ科学も医療も発達しているのに、話からにことは数え切れないほどある。
見えるものだけが真実だとするのはあまりに乱暴で短絡的だ。
本書は「ゴースト」にまつわる七編の物語だ。
『ミシンの履歴』
祖母が使っていたミシンを思い出した。
祖母は工賃をもらって仕立物をしていたそうだ。
幼い頃は手作りの手提げや服や色々なものを作ってもらっていたけれど、既製品の方がカッコよく見えて、使うのが少し恥ずかしかった。
それでも、祖母のミシン部屋は好きで、いつもそこにいたものだ。
私の思い出はともかくとして、戦前から戦後にかけてミシンがたどった歴史は九十九神と化したミシンの思い出だ。
必死で生きてきたあの時代。
そこに想いを馳せる。
『きららの紙飛行機』
少年と少女の物語。
ケンタが話すことはもはや現代人は何を言っているかわからず、外国語のようだ。
「浮浪児」のケンタは、いつか成仏できるだろうか。
できてほしい、と切に願う。
ケンタからもらった紙飛行機を、きららは飛ばし続けられるだろうか。
願わくばそうあってほしい。
『キャンプ』
手塚治虫の『日本発狂』を思い出す話だ。
物語の展開は全く違うのに、キャンプがそれを思い起こさせるのだ。
彼女たちはどこへ行くのだろう。
惑うことなく、光さす方向へ歩いていけたら良いのに。
Posted by ブクログ
幽霊をモチーフとした短編7編。原宿の家、ミシンの履歴、きららの紙飛行機、亡霊たち、キャンプ、廃墟、ゴーストライター。
戦争時代のグレーの夢のイメージ。現代から離れた過去があるところ。
Posted by ブクログ
目には見えないけれど、無力だけれど、人を恨んだり祟ったりもできないけれど、いろんなところにいっぱいいるゴーストたち。そんなゴーストたちを描いた七編の短編集。
Posted by ブクログ
タイトルから怪談的な話を予想していたのだが、1番心に残ったのは反戦のメッセージだった。特に未練を残して死んだ人たちがあの世に渡る前にいる「キャンプ」の話が印象に残った。
Posted by ブクログ
ミシンの履歴、きららの紙飛行機、キャンプがお気に入りかな。作品によって好き嫌いがありそう。何かしら戦争が絡んでいて、中島さんらしいといえばらしい。けど、思わず涙はしませんでした。
Posted by ブクログ
ゴースト、幽霊に関する短編。
第一話の『新宿の家』が好き。
こんなにうっとりしたのなら、相手がゴーストであってもいいじゃない。都会の中で時間が止まったような場所ってそれだけで味があっていいもんだな。