あらすじ
歴史の真相を探るとき、そこには必ず「そこに至るまでの過程」と、「その原因となった火種」を見出すことができる。昭和16年12月8日未明の真珠湾奇襲に始まる太平洋戦争開戦にも、もちろん「そこに至るまでの過程」があった。本書は、日本がなぜ、太平洋戦争開戦を決定するに至ったのか。その過程を克明に描いた歴史ドキュメントである。一般的に「太平洋戦争への道」といえば、満州事変から論じられることが多いが、著者は「“海軍がなぜ開戦にノーといえなかったか”遠因をさぐるため」に、あえて昭和5年のロンドン海軍軍縮条約批准をめぐる統帥権干犯問題を第1章においている。それは、「複雑に絡んだ昭和史の謎を解く鍵は統帥権という“魔物”にある」からだという。手記や資料から歴史的事実のみを徹底的に拾い出しつつ、11年間におよぶ昭和史の転換点をドラマのように活写した文章は、長年『文藝春秋』の編集に携わった者の芸そのものである。
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Posted by ブクログ
このところ、ずっと近代史(主に戦争について)の本やドキュメンタリーを読んだり見たりして勉強してきたが、この本には詳細かつ複雑な情報が山盛りで、読み通すのに時間と根性が必要だった。
この時代の戦争への道を見る時、情けないのは、誰も本気で戦争をする気がなかったにも関わらず、だれも戦争を止められなかったのではないか、と思えるところだ。希望的予測と甘い判断で、戦争に突入してしまった。
また、戦争を後押ししたものとして国民感情があるが、それを形作られるのにメディア(新聞)が大きな役割を果たしていたことだ。大衆は煽られやすく、一方向に傾きやすい。判断は情報に左右される。今のマスコミも腰抜けで、政府への批判はないに等しい。よほど目と耳を澄ましていないと、グローバルな視野で判断することはできないだろう。
『「昭和史の転回点」はどこにあったのか』は、この本のサブタイトルだが、これを、ずっと考えている。これを、この先の未来に生かすことが、筆者の願いであったはずだ。
こうして読んでいて、暗澹とした思いになるのは、筆者が書いているように、結局、戦争が国力の争いであるということ。一度、始まってしまうと、国を亡ぼすまで終わりが見えてこない、ということ。
ここから今のウクライナ侵攻について考えると、ロシアが強大な国力を持つ国だけに、経済制裁をしても効いてはこないし、戦争の終わりまでには、まだまだ長い時間がかかるのではないかと思えることだ。一方、ウクライナは小国だが、欧米を中心に世界が結束して支援をしているため、簡単に国力の底が尽きることは考えにくい。
戦争など、起こしてはいけない。それが、どうして学べないのだろうか。
「『そうです。日本はこれらの条約をことごとく破りました。日本は公然たる戦争をやりました。満州の自衛とか自己決定とかいう議論はでたらめです。しかし日本は満州を必要とし、話は要するにそれにつきるのです』。しかし、このような人々は少数派に属する。日本人の大多数は本当に彼ら自身をだますことについて、驚くべき能力を持っている(駐日大使グルーの分析)」