あらすじ
いま、「ゆとり世代」の若者の転職が増えている。自分らしいキャリアを模索して転職をくり返す人や、「ここではないどこかへ」と気軽に会社を渡り歩く人が増えているのだ。本書は、若者たちに綿密なインタビューを実施、分析し、転職するように彼らを煽る社会構造をあぶり出す。〈意識高い系〉の若者は何を考えて転職するのか? 転職する若者が抱えるリスクとは? 若者のキャリアに社会はどう向き合うべきか? 同世代の社会学者として、人材会社社員として、若者のキャリアに向き合ってきた著者が回答を示す。上司の世代も当事者の世代も必読の一冊。
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Posted by ブクログ
■一つの会社での就労期間が短い人材は転職するたびに転職や再就職が難しくなっていくということが分かっている。このようなプロセスの中で彼らのキャリアは不安定なものになっていく。
■「学歴の高低」は「転職による年収の増減」「満足度の向上と低下」に直接影響を与えるという分析結果もある。
・育った家庭の経済常用による本人の学歴や初職への就職に対する影響まで視野に入れると格差の再生産構造が見えてくる。
・家庭の経済状況が厳しかったものは高い学歴を獲得しづらくその結果厳しい労働環境の企業に就職し,そこから抜け出そうと転職したとしても状況は改善されず,むしろ更なる厳しい状況に陥っていくという負の連鎖の構造が見えてくる。
■若者のキャリアが転職によって不安定なものとなるとしたら彼らにとって重大な問題であるばかりでなく,社会的不安や社会的損失の引き金になると考えられる。
■太田聰一は若年失業者の増加が,
①日本の人的資本レベル(人材が身につけている知識や技能のレベル)の長期低迷
②貧困の連鎖の可能性
③若年労働市場の悪化による少年犯罪発生率上昇の可能性
④自殺者増加のリスク
⑤年金制度指示の困難化
⑥晩婚化及び少子化の促進
といった様々な問題を引き起こす可能性を指摘している。
■大卒者が職を失ったりキャリアが不安定化したりするとしたら労働力の有効活用という観点からも大きな問題となる。
・国民の4人に1人が65歳以上である「超高齢社会」を世界で最初に迎え生産年齢人口が圧倒的に減少傾向にある日本において無視できない問題。
■日本経営者団体連盟(現・日本経団連)の「新時代に『日本的経営』」1995
①個人の努力に報いることを目的としない終身雇用や年功序列といった「集団主義」的労働慣行によってサラリマン,特にホワイトカラーは会社に対する不満を募らせ生産性が上がっていない。
②厳しい環境を生き残り,社員の「自己実現」や「個性の発揮」を引き出すべく各社員の能力を存分に発揮できるの力主義・業績主義を採用する。
③能力が発揮されなかった場合には社員の能力ではなく職場が求める能力と社員の能力のずれという「雇用のミスマッチ」に原因があると考える。
④「個性尊重・自己実現」の視点からは能力や適性が合わない環境での仕事はふさわしくないため,企業を越えた横断的な労働市場を形成し,人材の流動化を図らなければならない。
■若者の転職者の3つのパターン
①意識高い系
・自分にとっての働く意義を明確に認識し仕事を通して実現したいことをはっきりと考え,そのために転職をしていたパターン
・「キャリアアップを目指す」「やりたい仕事に就く」「仕事のやりがいが重要」そういった意識を持って仕事に取り組み仕事の内容を通して実現したい希望が満たされるか否かに就労の満足度を判断する基準が置かれる
②「ここではないどこかへ系」
・働くことの意義が意思決定のたびに移り変わりながらキャリアを形成していたパターン
③「伝統的キャリア系」
・転職先で働き続けることを望む
・自律的キャリアと対比されるキャリアである伝統的キャリアを転職先で歩もうとするパターン
■「近代型能力」
・基礎学力
・標準性
・知識量,知的操作の速度
・共通尺度で比較可能
・順応性
・協調性,同質性
■「ポスト近代型能力」
・生きる力
・多様性・新奇性
・意欲,創造性
・個別性・個性
・能動性
・ネットワーク形成力,交渉力
■
Posted by ブクログ
修論ベースにした本だけど、なるほどこれだけ書ければ修論も本になるなという感じ。
日本のキャリア観の変化を丁寧に辿っていて、キャリア思考も社会の影響を受けているとかはそのとおり。転職するゆとり世代をカテゴライズしていて、意識高い系という懐かしい言葉もあったし、ここではないどこかへ系といった造語も出てきた。
就活の問題点や理不尽な自己責任など、それがブラック企業に繋がる構造といった社会学的に面白い指摘があった。
面白かったのはキャリアコンサルティングというのか、キャリアアドバイザーの面談に立ち会って記録しているところ。転職を考えている人間にはここだけでも実利があっていい。
Posted by ブクログ
「好き」を仕事にすること。
「自己実現」として働くこと。
キャリア教育によって導かれてきたことから起きてきたこと。
「よい」「悪い」ではなく、本書を通して起きていることを知ることができて、参考になりました。
過剰な自己責任を促すことにもつながり得る声かけ、自分もしてきたかもと、自らを顧みる機会ともなりました。読めてよかったです。
Posted by ブクログ
キャリア自己責任論が課題なのは特に個々人のキャリアサポートをする際に忘れてはいけない視点だろう。
個人と社会の関係にうまいことなにかできないのが難しいところだと思った
Posted by ブクログ
職選好をやりたいことから、得意なことを生かす転職やスキル獲得のための転職へ。スキル形成に着目したキャリアアドバイズへ。
ここではゆとり世代を対象としているが、高齢者を簡単にリタイアさせない社会という面からもこれは必要な視点だろう。
Posted by ブクログ
<どんな本?一言で紹介>
3年以内3割で会社を離れるゆとり世代。
彼らが転職に至るキャリア観と、それに至る社会的背景を知れる本。
<どんな人におすすめ?>
転職を考えているゆとり世代。
ゆとり世代を部下に持つ人。
自分のキャリアをうまく描けないゆとり世代。
<読んだら、どんなことが分かるの?>
ゆとり世代の「転職をポジティブに捉える」キャリア観と、その社会的背景。
・自己実現のための「自律的なキャリア」と、環境適応のための「自律的なキャリア」
・若者転職者3パターン
・若者の転職が抱えるリスク
・会社に隠される極端な「自己責任」
<日々の生活、仕事などに活かせるポイント>
1.迷ったら、エージェントなどの「進路指導」を個別に受けよう
2.現状の不満を理由に転職を繰り返すと、スキルや経験が蓄積されないリスクがある。
不満が生じるたびに転職する人より、1つの軸がある人材のほうが、経験値を上げる機会が豊富にある。
また「ここではないどこかへ系」の中には、転職をくり返す中で仕事への諦めが芽生えるケースもある。それにより、劣悪な労働環境までも無意識に許容してしまうりすくもある。
3.思い描くキャリアに必要なスキルが不十分な場合や、想定通りに進められない場合がある
企業側の採用基準に沿うスキルや専門的知識の欠如。もしくは他の求職者のレベルに達しない。こうした状態ならば、いくら意欲が高くとも、当然働く機会は得られない。
さらには、働く意義にこだわりすぎて、キャリアを練り直すためのブランクをとった結果、再就職が難しくなってしまうこともあり得る。
<感想>
自分の世代のキャリア観を知れた。
現状を明文化されたもので知るって大事だ。
ただ、この本を読んでも自分のキャリア選択にはあまり参考にならないかも知れない(エージェントに聞こう、、)。
Posted by ブクログ
ゆとり世代について分析した一冊。
ただ、転職については様々な事例を挙げるだけで、明確な結論みたいなものはなく消化不良気味。
元が大学院の修論が元だったみたいですが。
Posted by ブクログ
「オススメ」
転職市場になんらかの形で関わる人が読まないとあんまり面白くはないかも。就活生や転職者が読むと話の風呂敷が広がりすぎてどうすりゃんだとはなりそう。笑
「学び」
・主体的に考えるようになった若者が多いように見えて社会の要請でそうなっている人が多いだけだからそれを完全に自己責任化するのは違うんじゃないのか、という熱い主張が伝わってきてこの人の感じる”不”には共感できた
(本人も言及しているようにそこに至る根拠はまだ弱いなとも思ったが)
・やりたいこととできること(できるようになること)のギャップが不の再生産を引き起こすという巻末の言葉が重い…。最近意識高い系に向けた意識高い転職サイトが増えてきたからそこへのアンチテーゼとして良いこと言ってんなーと。