【感想・ネタバレ】新版 家族喰い 尼崎連続変死事件の真相のレビュー

あらすじ

“二十一世紀最大の謎”を描ききった事件ルポの白眉!

まさに未曾有の怪事件。発覚当時63歳の女を中心に、結婚や養子縁組によって複数の家庭に張り巡らされた、虐待し搾取する者とされる者が交錯する人間関係。その中で確認された死者11人。この複雑きわまる尼崎事件の全容を執念の取材で描いた、事件ノンフィクションの金字塔。文庫化にあたり70ページ大幅増補。
解説・永瀬隼介

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

2020年10月12日記述

新版 家族喰い
尼崎連続変死事件の真相
小野一光氏による著作。
2017年8月10日第1刷。
単行本として2013年11月に太田出版にて発行された。
本文庫は単行本に加筆修正の上、新たに文庫版補章を付したものです。
文庫版補章初出
週刊文春2016年8月25日号、9月1日号、9月8日号、9月15日号、9月22日号、9月29日号

著者の小野一光氏は日本のルポルタージュ・ノンフィクション作家
1966年、福岡県北九州市生まれ。
西南学院高等学校卒業。白夜書房で編集に携わり、
雑誌記者を経てフリーライターに。
「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、
風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』『殺人犯との対話』『震災風俗嬢』
『新版 家族喰いーー尼崎連続変死事件の真相』など。

角田美代子らファミリーによる連続殺人事件は大きく報道され知っている方もいるだろう。
ただ詳細は本書を読まなければわからない。
その事を痛感した。
あれだけの大量の死者が出ているだけにヤバい事件だろうと思っていた。
それ以上にヤバいと思う。
主犯の角田美代子は自殺した時も大きく報道された。
その点が松永太による北九州連続殺人事件との相違だ。
マスコミでの報道がされている点が大きく違う。
松永太による事件は豊田正義氏の著作、
消された一家―北九州・連続監禁殺人事件―(新潮文庫)に詳しい。
角田美代子もかなりおかしい思考回路だと思う。
それ以上に松永は異常だとも思えた。

民事不介入の原則を悪用した親族間をマインドコントロール、洗脳していく手法は極めて悪質だ。
民事不介入だと言って、日本各地の警察がまともに取り合わなかった事が犠牲者を増やした事は間違いない。
この事はもっと警察批判、警察の責任者が糾弾されるべきだと思う。
マスコミは警察から情報を得るという利害関係がある為にそういった警察の不祥事、ミスを大きく報道しにくい構造がある。
寺澤有氏の一連の著作にも警察がいかに自浄能力の無い組織であるか描写されている。
その自浄能力の無さを本書を読むと垣間見る事が出来る。
犠牲者、被害者、あるいは暴力を強制された加害者のいずれも角田美代子の支配下に置かれていた。
彼らの自己責任だなどと言うつもりは毛頭ない。
しかし自分の身は自分で守るしかない。
北朝鮮の拉致被害者達も同様だ。
警察の不作為による犠牲者はこの尼崎での犠牲者だけでは無いのだ。
また角田美代子のような人間と相対する時はアンガーマネジメントなんぞクソくらえでぶちギレ相手と徹底的に喧嘩し暴力を使い闘争する必要があるのだという事も分かった。
喧嘩は厳選してやるものだ。
こういったヤカラとしか表現出来ない悪質な半グレとは断固戦う必要がある。
その事を読む中で何度思っただろう。
*もちろん角田美代子達は確実に勝てる相手にだけ暴力や搾取をしていたようだ。
その事にも腹が立つ。
周りの人間もこういった異常を見たら、警察抜きに暴れまわっても良いと思う。

印象に残った部分

角田美代子もX(ある集団)の関係者もこれと同じようなことを続けとったんや。
年寄りやら弱者を食いもんにして、少しでも反抗する素振りを見せたら、こうやって暴力を使って脅すわけや。

(2002年に福岡県で発生した北九州監禁殺人事件の主犯松永太に対しての印象)
もし悪魔という存在を具現化するとしたら、それは一目見てわかる邪悪な顔ではなくこのような屈託のない顔をしているだろう。
背景に底知れぬ闇を抱える彼を前にして、そう感じずにはいられなかった。

続いて決めたのは、濃い場所で独自の濃い人脈を作るということ。
これについては、みずからの経験則に頼るしかないが、事件について知っている義侠心を持った人物を見つけ出し、その人物の信頼を得るようにする、ということである。
方法としてはいたってシンプルだが、もっとも難易度の高いものだ。
しかしそれを理想形と設定し、目指すようにした。

尼崎連続変死事件の捜査線上に浮上すらしていない安田(仮名)さん
かつて印刷会社で働いており、退職後は年金暮らしをしていたのだという
安田さんは悪い人ではないねんけど、お酒が入るとええ格好をする癖があってな、
けっこうお金があるいう話をしてしまう人やねん。それで美代子に目えつけられたんやろな
→警察には行ったが、相手にされんかったと・・この人物もやはり何らかの民事不介入にされてしまったのだろうか。詳細がわからない。

月岡靖憲(つきおか・やすのり)
1953年生。角田美代子の5歳下の弟(月岡は美代子の父方の名字)
角田三枝子、猪俣光江の四男・四郎(名前のみ仮名】とは中学時代の同級生。
2007年に逮捕され、2件の恐喝と1件の詐欺罪で懲役14年の実刑判決を受け服役中。

恐喝や脅しによってお金を巻き上げていく手法に類似点がある。
やはり血は争えないのか・・遺伝子の凶悪性、凶暴性というものはあるのだろうか。
特に詐欺罪として裁判になった2000年に女子大生だった方への2005年までの恐喝・暴力・肉体関係を強要した件も相当に悪質だ。
なぜ懲役14年で済んでいるのか理解しがたい。
この角田美代子の弟の話だけで1冊の本が出来上がるだろう本来は・・・。

「私が思うに、オカン(角田美代子)が自殺したんは、事件がバレたことやなくて自分が家族やと信じとった者に裏切られたという思いが強かったんやないでしょうか。
それがショックで死を選んだんやと思います」
そう語る谷岡さんの意見に、私もまったく同感だった。
こんな話がある。
2004年頃、美代子はパチンコ店で知り合った若いカップルを一週間ほど自宅に軟禁し、その女性の実家に落とし前を要求したことがあった。
しかし、その女性の知り合いに現役の暴力団員がいて、逆に脅されたのだ。
その際に美代子は「☓☓様のご身内の方とは知りませんでしたので、本当に粗相な対応、どうかお許しください。知らなかったでは済まないことも充分承知しております。なんとか今回だけはお許しください」と平身低頭して謝罪を続けたという。
自分より強い者には徹底的に弱く、弱い者には徹底的に強い。
それが美代子だった。
自分を強く見せるためには手段を選ばず、虎の威を
借りることが必要であれば、迷わず借りた。
そうして、美代子は虚勢が通用する相手しか、毒牙にかけてこなかったのである。
それは相手に勝とうとするのではなく、勝てる相手を選ぶということで徹底していた。
そして、自分が勝てると見た相手に対しては、決して歯向かうことのないよう、
絶対的な恐怖を与えて支配した。
弱い者を恐怖で支配するためには生贄が必要であり
忠誠を確認する手段として用いたのが、タブーである家族殺しの強要だった。
まさにそれは家族喰いともいえる所業である。
だがその結果が、まとめて自分に跳ね返ってきたのだ。
これまでの犯行が発覚したあと、美代子が絶対的に支配していると信じた家族たちは警察の追求にたやすく落ちた。
皮肉にも彼女自身がそこで家族殺しに遭遇する
ことになり、卑怯にも自殺を選んだ。
私はそう見ている。
美代子は決してモンスターではない。
弱いからこそ相手を殺した。
そうしなければ、自分がいつ寝首を掻かれるか、不安でしょうがなかったのだ。
無辜の人生を蹂躙し尽くした64年の生涯は、かくして身勝手に幕を閉じた。

0
2021年12月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

凄まじき洗脳。
この場所ならではの独特な地域性がありそう。
被害者たちはたまたま罠にスポッとはまってしまった人たちなのだろうなと思う。

登場人物が多すぎて39頁やその近辺の頁の相関図を何度も見た。(が、読み終わってから気付いたが366頁に一覧があった)

全体に、事件の大きな動きが分かってよい内容だったけれど、ところどころ「俺アゲ」的な自惚れた文章だったり、カッコつけた変なシメの一文があったり...あれはなんなのだろう。
週刊誌だからかな...。
大変な時間と労力のかかった本なのだろうけれどそういうのがなければよかったな。

後半の追加された部分はちょっといい話風というか...
更生話がメインで結局谷本さんとルイの話だけ。

相当やばいのか、あまり関係はなかったのか...集団Xやその中心人物とされるZの話はどこへ行っちゃったのでしょうか。。。

まあでも
逮捕後のルイの洗脳とそれが解ける間にいるような心境の手紙が一番心に残った。
「私には実感があるから本物だという感覚が残っていますが」
強い洗脳をされたことがある人にしか語れない言葉だろうなと思った。

1
2018年07月31日

「ノンフィクション」ランキング