あらすじ
近年、異常気象によるゲリラ豪雨が日本各地で多発するようになり、大きな被害が出ている。首都・東京でも、ゲリラ豪雨のために家屋や地下街への浸水、交通網の乱れが出るなど、人々の生活に影響を及ぼす事態となっている。
地球温暖化による気候変化が要因のひとつと考えられるが、東京都建設局課長、江戸川区土木部長などを歴任した著者の土屋信行氏は、「それ以上に、行政の対策が後回しにされていることが問題だ」と語る。
たとえば、江戸川放水路や荒川放水路はそもそも、利根川水系が氾濫し、東京の中心部が浸水することを防ぐために作られている。言い換えれば、江戸川以東、荒川以東に水が逃げるようになっている。放水路が作られた時代には、それで問題なかった。だが、都市開発が進んだこの地区をいま豪雨が襲えば、多くの世帯が甚大な被害を受けかねない。にもかかわらず、放水路の東側は100年近く、放置されたままだ。
土屋氏が危険だと指摘する都内の場所は、他にもいくつもあるが、その1つが東京駅。周辺が低地であるため、実は水没と隣り合わせの状況にある。また地下鉄も早急に対策が求められている。現在の構造のままだと、地下鉄に流れ込んだ水が、日比谷駅や銀座駅あたりで吹き出すことが懸念されている。すでに、台北の地下鉄で同様の事態が起きており、復旧には3カ月をようしたという。
多発するゲリラ豪雨に対して、洪水対策の第一人者が、都内の危険地区を示すとともに、あるべき強靭化の方策を提案した必読の書。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
タイトルが少し刺激的ぽくてあれだけれど、
内容は、
首都圏大規模水害のリスク(江戸期の河道付け替えも踏まえて...)、
気候変動(適応策の重要性)、
東京東部のゼロメートル地帯の高潮や"地震洪水"リスク、
山の手のゲリラ豪雨リスクとXRAIN、
さらには、過去の大水害から学ぶこと(まちづくりにもいかすこと)の重要性、
といった、バランスがとれている網羅的な内容で、かつひとつひとつの事項の記述がわかりやすいし適切。
「東京」を切り口にして、水害とか川とかについての基本を学ぶ入門書として、とてもよいのでは、と思った。
(若手職員むけ勉強会で、参考図書リストに加えた。)
Posted by ブクログ
茨城栃木の水害の恐ろしさを目の当たりにしてタイムリーな本を見つけた。自分が住んでいるところは荒川放水路の左岸にあたる川口市である。街には浸水したときの水位がテープで電柱に記してあり中には5メールのところもある。過去には水害で大きな被害を被ったこともあったようで、市民には身近な災害である。この本を読んで、首都圏というのは関東平野を囲む高い山々に降った雨雪が一気に集まる場所であるということに改めて気付かされた。そのため地味は豊かで産業が発達する反面洪水にさらされる運命にあり、古くから河川の付け替えや開削といった治水が行われてきた。利根川や荒川の流路変更は大事業であったことを知った。そして自分に身近な荒川放水路も昭和の初めに完成している。日本人は自然と共生してきたなどいう耳に快い言説は嘘であり、むしろ自然と戦ってきたといえる。そしてそれは完成せず現在も継続中であるということは気に留めたい。「コンクリートから人へ」などというふんわりした言葉に乗せられてはいけない。改めて思った次第である。
Posted by ブクログ
「人が住んでいいない場所では、台風が襲来しても、火山が爆発しても、地震が起きても、それは災害ではなく自然現象でしかありません。人が住んでいるからこそ、災害なのです。」
「台風が日本を襲ってくるのではなく、日本が台風の通り道にいるのです。」
「日本を攻撃するのに大量の軍隊も核兵器も必要ありません。無人攻撃機1機で足りてしまうかもしれません。ゼロメートル地帯の堤防をわずか1か所決壊させるだけで、日本は機能を失うのです。」
これらの言葉を肝に銘じて生活していこうと思った。今まで災害に遭わなかったことは、幸運でしかないのだ。
それにしても、昔の東京の水害の話は知らなかったことだらけで、小中高と東京の学校に通ってたのに、一体私は何を教わっていたのかと思った。自分の住んでいる地域の災害の歴史やその文化って、小学校中学校で必修にしてでも教えるべきものではないのかしら?もしかしたらふなっしーはいなかったかもしれない・・・と考えられる、東京の水害の話はとても興味深かった。
Posted by ブクログ
先日の西日本豪雨のこともあり、積本していた水害関係の新書三冊を連続して読んだ。
三冊ともに共通しているのは、江戸時代の利根川東遷事業が首都圏の水害リスクを高めたと主張している。
本書は東京の水害の歴史から、もともと東京が水害に弱いことを指摘し、スーパー堤防やダムによる治水を主張する。
Posted by ブクログ
歩道橋はまるで滝のよう。マンホールからは噴水のように
水が吹き上がり、住宅街の路地にはにわかに川が出現する。
近年のゲリラ豪雨や台風の際に見られる都市での洪水の
風景だ。
東京は雪に弱いと言われるけれど、それは雪が消えたら
自然と解消する。だが、水害はどうだ?水浸しになった
家屋は再建するのに時間がかかる。堤防が決壊でもすれば、
修復作業には多くの労力と時間を要するだろう。
本書は東京都の職員として主にまちづくりの仕事に携わって
来た著者が、江戸時代からの水害を引きながら、自然災害に
対する首都機能の脆さを指摘している。
歴史をさかのぼって河川の付け替えや放水路の開削がどの
ように行われたか。過去の水害でどれほどの被害があったの
か等は勉強になった。
また、祖先たちが自然災害に対して残した言葉に多くの
警告が含まれていることは、改めて考える必要があると
思う。
だが、その先人の言葉を無視して本来なら人が居住するに
適さない場所だったところにも現在は家屋が密集している
と指摘するのはどうなんだろう。
明治時代と現在では人口が違うと思うんだよね。しかも、
東京都は今でも湾岸エリアの開発が進み、高層マンションが
ぼこぼこ建っている。しかも売れているらしい。お高いんで
しょうに、お金があるとことにはあるのね。あ、これは
貧乏人のひがみですけど。
東日本大震災以降、富士山が噴火したらとか、南海トラフ
地震が起きたらとか、首都直下型地震が起きたらとか、
シミュレーションをして恐怖を煽るようなテレビ番組が
多く放送された。
では、どうしたらいいのか。その具体策ってないんだよね。
「こんな大変なことになりますよ。だから備えておきましょう」
といわれても、精々防災グッズを揃えるくらい。あとはハザード
マップのチェックかな。
本書もそうなんだよな。結局、頑丈な堤防を作りましょうって
ところへ落ち着いちゃう。それって、個人ではどうにもならない
ことだよね。自治体の問題。スーパー堤防は無駄って言っていた
のは民主党政権時代の事業仕分けだっけ。
江戸はその昔、多くの川が流れる水の都だった。それでも何回
もの水害に苦しめられた。その川を、都市開発の為に暗渠にし、
水を吸収して行くれるはずの土の道をアスファルトで固めた。
これはもう、どうにもならないんじゃないかな。せめて早い
時間に安全な場所に避難するのがせいぜいだろう。だって、
著者が都の職員時代、実際にどんな水害対策を考えたまち
づくりをしたのかなんて記されていないんだもの。
ちょっとおまけ。昔、江戸川区新川周辺は果樹園が多くあった
そうだ。名産は「新川梨」。ところが大正6年の水害で畑は
壊滅状態。この時、多くの農家が水害の被害を受けない高台
の地を求めて千葉県へ移転したのがきっかけで、船橋等が
梨の産地になったとか。
知ってた?ふなっしー??
Posted by ブクログ
○元東京都職員の土屋氏の作品。
○土木建築や防災を専門とする著者による、東京都における水害リスクを、過去の歴史や他国の状況などを踏まえ、警鐘を鳴らす作品。
○河川についての構造や防災対策、地形がもたらす影響など、具体的な説明でリスクが分かりやすい。
○これだけ人が集中する東京が、これほどのリスクにさらされているということが意外であり、心構えが必要であると認識した。
Posted by ブクログ
自然災害リスクが高い都市ランキングで東京・横浜地区が世界1位となったらしい。低地への人口集中と水害にたいする備えの甘さがリスクを高めている理由のようだ。
本書の中では東京都の話がほとんどであり、残念ながら横浜の話はでてこない。歴史、先人達の意見を尊重することが災害たいsくには重要とのことなので、横浜周辺において過去の災害を知らせるような石碑があったら着目してみることにする。
また、自然災害は行政区分とは無関係に発生するということも肝に銘じておきたい。
地震や台風が多い日本に住んでいるのだから、その発生メカニズムだけではなく、防災対策についてももっと普段から論じても良いと思う。
地震発生時に地下鉄は安全だが、水害が予想される時には最も危険となる。