あらすじ
新聞記者の由良が出会った、盲目の調律師・徳田。いつしか二人の記憶は、時代を超えてある村の記憶へと接続する。雑誌掲載時より話題!「救い」と「犠牲」を現代に問う傑作!
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Posted by ブクログ
初出 2016年「文藝」
「徳田は何者なのだ?」 みんなそう思うだろう。
1(章)では新聞記者の由良が盲目の調律師徳田と出会って惹かれ、月夜に舟で島へ行く(女が舟で島に来る)という昔から見ていた互いの夢が繋がっていたことを知る。由良は養蚕の取材を進めていたが、徳田は部屋で蚕を飼っていた。
2(章)は由良川沿いの蚕都と呼ばれた村(綾部?)での養蚕の盛衰が描かれ、河口沖の神島の社に妊婦が舟で「お許し参り」に行く習慣があり、村の養蚕を廃業する時には、一番の飼い手みすずの幼女すずなが神(洪水を防ぐために社に閉じ込められた盲目の男の子)への供え物として送り込まれた。
3(章)で1(章)と2(章)が繋がる。
由良は失踪して徳田の部屋に住み、徳田はいなくなる。盲目となった由良の意識は、彼女から抜け出し時空を越えてすずなが自分で、蚕に体を食われるという奇怪な真相にたどり着く。
十分怖い物語だが、緑内障のために薬で遅らせても徐々に視野が欠けつつある私には、見えなくなる恐怖も味わった。