【感想・ネタバレ】詩の礫のレビュー

あらすじ

2017年、フランスの文学賞、「ニュンク・レビュー・ポエトリー賞」!

「詩の礫」は、福島在住の詩人・和合亮一氏が被災6日目から「ツイッター」で発表を開始した新たな形式の詩です。140字という独特な制限の中で記された言葉は、迫真性と臨場感にあふれ、圧倒的な言葉の力は、極めて短期間で1万人を軽く超える読者の支持を得ました。湧出する感情のまま、まさに礫のごとく向かってくる詩の数々は、故郷・福島への愛しさ、肉親、子、友、自然への慟哭、震災への行き場なき怒り、絶対という概念を失った世界の不条理を描き、読者の心の深い部分を痛いほど衝いてきます。(以下、本書より)

<今、これを書いている時に、まだ地鳴りがしました。揺れました。息を殺して、中腰になって、揺れを睨みつけてやりました。命のかけひきをしています。放射能の雨の中で、たった一人です。>

<どんな理由があって命は生まれ、死にに行くのか。何の権利があって、誕生と死滅はあるのか。破壊と再生はもたらされるのか。>

<避難所で二十代の若い青年が、画面を睨みつけて、泣き出しながら言いました。「南相馬市を見捨てないで下さい」。あなたの故郷はどんな表情をしていますか。私たちの故郷は、あまりにも歪んだ泣き顔です。>

<命を賭けるということ。私たちの故郷に、命を賭けるということ。あなたの命も私の命も、決して奪われるためにあるのではないということ。>

<誰もいない 福島 静かな雨の夜 静かな涙は誰が流しているの この世を去ったその人を想いながら 想うしかない まぶたの中で目覚めるのは海>

テレビ、新聞、雑誌、ラジオなど、「詩の礫」は多くのメディアに取り上げられました。修羅のごとく言葉をつむぐ姿は、読者を大いに共感、驚嘆させること必至です。ぜひご一読を。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ツィッターで綴られた「刃」。礫と書いてあるが刃としか思えない。言葉が持つ力を信じたい。和合さんの書いた言葉が力を持って、刃となって、見えない敵「幽霊」に立ち向かって行ってほしい。本当にすごい詩だ。知らない間に泣いている。

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2011年11月26日

Posted by ブクログ

凄まじい。
凄まじいの一言に尽きる。

この人は詩で、つまりは言葉で格闘しているんだ。

言葉が、本当に礫のようだ、と思う。

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2011年09月20日

Posted by ブクログ

福島在住の詩人、和合亮一が放つ「咆哮」。
福島の、日本の、日本に住む人々の悲しみ、怒り、やるせなさ。
5月の「決着」は圧巻。

言葉のチカラ。
僕たちは今日も明日も生きる。何処で生きる?何の為に生きる?
感じ入りました。
忘れずに、背負って生きていく。

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2011年09月06日

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 和合隆一の詩集に出会った。これは、詩集なのだろうか?Twitterでつぶやいた言葉が編集されている。しかし、これを読みながら、身体が反応する。身体に寒さが押し寄せた。
 私は、東日本大震災があったときには、中国の雲南省の昆明にいた。福島から3800キロメートル離れていた。インターネットで、大津波の押し寄せる映像を見て、福島の原発の水素爆発を見た。激しい衝撃を受けた。現実とは思えなかった。そして、原発事故の13年経って、いま原発から20kmのところにいる。その空白を埋めている。そして、原発事故は、終わっていないと感じる。

 2011年3月16日の夕暮れから始まる。和合亮一は、高校教師。職場があるので福島に残ることを決意した。そして絶望していた。「これで、福島も、日本も終わりだ」と。放射能の恐怖。「行き着くところは涙しかありません。私は作品を修羅のように書きたいと思います」明日には自分の生活が消滅するかもしれないその夜に、誰かに受け止めてほしいと思い、言葉をパソコン上に投げた。

 放射能が降っています。静かな夜です。
 ここまで私たちを痛めつける意味はあるのでしょうか。
 この震災は何を私たちに教えたいのか。
 余震が続いている中で、言葉を紡ぎ出している。

 震災に遭いました。避難所に居ましたが、落ち着いたので、仕事をするために戻りました。
 本日で被災六日目になります。物の見方や考え方が変わりました。
 放射能が降っています。静かな静かな夜です。
 屋外から戻ったら、髪と手と顔を洗いなさいと教えられました。
 私たちには、それを洗う水などないのです。
 私は故郷を捨てません。故郷は私の全てです。

 私が避暑地として気に入って、時折過ごしていた南三陸海岸に、一昨日、1000人の遺体が流れ着きました。今、これを書いている時に、また地鳴りがしました。揺れました。息を殺して、中腰になって、揺れを睨みつけてやりました。命のかけひきをしています。放射能の雨の中で、たった一人です。

 世界は誕生と滅亡の両方を、意味とは離反した天体の精神力で、やすやすと在り続けている。
 私の大好きな高校の体育館が、身元不明者の死体安置所になっています。隣の高校も。
 外に出ようたって、放射能が降っています。
 絶対安全神話はやはり、絶対ではありませんでした。
 父と母に避難を申し出ましたが、両親は故郷を離れたくないと言いました。
 ところで腹がたつ。ものすごく、腹が立つ。
 どんな理由があって命は生まれ、死ににいくのか。何の権利があって、誕生と死滅はあるのか。破壊と再生はもたらせるのか。

 行方不明者は、「行方不明届け」が届けられて行方不明者になる。
 翌朝5時に、水をもらうために並んだ。すでに長蛇の列だった。
 私たちの故郷は、あまりにも歪んだ泣き顔です。
 また揺れた。とても大きな揺れ。揺れながら、階段先の扉を開けようか、どうしようか、悩んだ。放射能の雨。ガソリンはもう底をつきた。水がなくなるのか、食料がなくなるのか、心がなくなるのか、アパートは、俺しかいない。これまでと同じように暮らせることだけが、私たちが求める幸福の真理だ。

 こうやって、3月16日は終わる。余震が続く中で、外は雨が降っていて、不安な心を持ちながら、負けないぞと繰り返しつぶやく。一体、何に負けないのか?言葉が鋭敏に、暗闇の中に放り出される。そのTwitterに、励ましの言葉がやっていく。言葉は放り投げただけでなく、帰ってくるのだ。つぶやきの塊を吐き出しながら、この福島にいることを根拠に、つぶやいている。それは、詩ではなく、つぶやきである。心の中に浮かぶ言葉を、つぶやくことで、自分を支え励ます。
 「明けない夜はない」とつぶやく。
 茶の間の時計と本棚の小さな時計が2時46分を指したまま、転がっていた。

 私は震災の福島を、言葉で埋め尽くしていやる。コンドハ負けねぇぞ。
 あなたはどこにいますか。私は暗い部屋で言葉の前に座っています。あなたの言葉になりたい。
 
 心が叩きつけられても、明日に向かって、言葉をつぶやいていく。つぶやくことでつながり、そして生きることの意味を知り、死に直面する。なくなってしまう街に向かって、言葉で埋め尽くすのだ。
 
 大きな青空。阿武隈川。雄大なアタタラ山。会津の旗。太平洋のきらめき。
 福島を捨てるな。

 文字を追いながら、心の中に浮かぶ言葉を、拾い集めて、呟き、前に進む。その情景が鮮やかに浮かぶ。こうやって、私たちは、前に向かっていくのだ。そして福島の未来を作るのだ。

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2025年03月23日

Posted by ブクログ

震災直後に起きた大きな感情の起伏が言葉に。何度も繰り返し、「明けない夜はない」と出てくるが、明けた日には何が待っているのか。。。言葉は信じられる。しかし、言葉だけでは、何かが足りない。

後半に出てくる、自分で自分を責め、振り返り、はね返し、立ち上がる瞬間。そこに立ち会えて、私は言葉とはなにかがやっと分かった気がした。和合さんは、まぎれもない詩人。まぎれもない人間。それが言葉になっていた。

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2013年06月14日

Posted by ブクログ

福島在住の詩人のつぶやき(ツイッターで)。
家族と離れ福島での生活をつぶやいている。
時に怒り、時に泣く。余震。
図らずも泣きそうになった。あの日々は私にとって暗鬱で、それがよみがえった。

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2012年04月21日

Posted by ブクログ

震災と原発事故直後から綴られた、まさに精神のドキュメントといえる作品。これほどまでに言葉が切れ味鋭く、切実さを持って迫ってくる詩は初めて。詩の力の凄まじさを感じた。

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2011年10月24日

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