あらすじ
招待先のアイルランドの荘厳な子爵邸で、ポアロと盟友キャッチプール刑事は再会を果たす。その夜、ディナーの席で、招待主である著名作家が、全財産を余命わずかな秘書に遺すという不可解な発表をした。動揺した人々がようやく眠りについたころ、おぞましい事件が……。〈名探偵ポアロ〉シリーズ公認続篇第2弾
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Posted by ブクログ
クリスティへのオマージュに満ちた作品。もちろん探偵は、ポアロ。ある日突然自分の遺産を、自分の息子たちではなく、病気で余命の短い秘書に相続させるという老婦人。その意図は何なのか?というのが、最初の方の謎。しかし、その後、被害者に意外な事実が発見されて、そこから見え方がガラッと変わる作品でした。最後の終わり方は、いかにもクリスティなら、こうするのだろうなという終わり方でした。
Posted by ブクログ
ソフィー・ハナ版2冊目。前のより面白かった。ポワロとして、と言うのはもう置いておくことにした。
ちょっと独特のユーモアと言い回しの癖というか否定の否定みたいな複雑にしようとするきらいがあるけど、これって訳の問題かなあ。
話として面白かったな。
Posted by ブクログ
ミステリ作家で元子爵夫人のレディ・プレイフォードの屋敷に招かれる。彼女の遺言が変更され、全財産を秘書のジョセフに遺すと発表される。そしてその晩にジョセフは殺害される。クリスティの世界観を踏襲してポアロの推理が展開される。犯人は意外のようで意外でもない人物だった。推理は多少強引なところもある。もっと推理にキレが欲しかった。ポアロがもっといやらしいほど自信家であったならもっと良かったかもしれない。ポアロが前面に出ている感じがしなかった。改めてクリスティの人物造形などが優れていたことに気がついた。作品としては及第点だが、クリスティの域には達していない。
Posted by ブクログ
評価は少し辛口にしましたが、前作『モノグラム殺人事件』に比べれば面白く、星4つの評価にも相応しいと思います。(それを星3つにした理由は後述。)
『モノグラム〜』に出てくる登場人物が揃いも揃って魅力がない、というより嫌悪感を感じる人達ばかり(その最たるものが、今回も語り部を務めるキャッチプール)に比べれば、『閉じられた棺』の登場人物はどこか憎めず、アガサ・クリスティーが描いてもおかしくないようなキャラクターが集まっています。語り部のキャッチプールも、前作のようなこちらが辟易するような独白は今回控えているので、その分少しは読みやすくなっていると思います。
『モノグラム〜』のメイン・プロットがクリスティーの《十八番》の応用で興味深いものでありながら、他にも色々盛り込みすぎたために、話が散漫となったのに比べれば、『閉じられた棺』のプロット自体はシンプルであり、
謎その1「なぜ被害者は殺されねばならなかったのか」
謎その2「なぜ被害者の死体はあのような状態であったのか」
という2つの謎で構成されており、その真相もなかなか意外性があります。
さて、ここからは本作の欠点です。相変わらず作品全体が冗長であるのは否めません。1つ1つについて丁寧に書かれてはいるのでしょうが、書き込み過ぎのような感じがします。クリスティー文庫に換算して、前作『モノグラム〜』の487ページ、本作490ページという文量は、クリスティーのポアロ・シリーズの中では格別長いわけではありません。(『ナイルに死す』が573ページ。)しかしながら、クリスティーの諸作に比べて簡潔な文体ではないので、読むのが一苦労です。
《以下、直接的なネタバレではありませんが、物語の構成に関して少し触れているので、ご注意下さい。》
例えば、第34章(405ページ)から事件関係者を集めたお馴染みの《ポアロ劇場》が始まるのですが、第36章の最終行(456ページ)にて「謎その1」が解明し、そこまでの流れは問題ありません。問題は、その後の第37章(エピローグの1つ前の最終章)において「謎その2」が解明するのが474ページ付近、謎その1とその2の解明の間に17ページも費やしているのですが、そこで《ポアロ劇場》の主導権を握っているのは、ポアロさんではなく犯人側。そのせいもあって、謎その2が解明されたときのカタルシスが減弱しています。
これが、本当のエルキュール・ポアロであれば、(すなわち、本当のアガサ・クリスティーであれば、)謎その1とその2の真相をもっとテンポ良く披露することで、劇的な効果を場内に(読者に)与えることを狙うはずです。そういうこともあって、この作品の評価を減点しました。