あらすじ
トヨタ、JR、住友銀、関電、帝国ホテル、フジサンケイグループ、日産、神鋼、東芝。大企業10社の仁義なき社内抗争!
企業はビジネスの場であると同時に、政治の場でもある。社内抗争がもっとも先鋭化するのは、社長の座の争奪戦だ。本書は大企業10社の赤裸々な権力抗争の内幕を抉り出した、権力の座をめぐる企業内の熾烈な抗争劇。リアル・半沢直樹の世界が展開される!
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Posted by ブクログ
30年全国紙の経済記者として活躍し、現在は経済ジャーナリストとして活躍する著者。長年企業の栄枯盛衰を追ってきたからこそ著せる著書だろう。
国内大手企業10社において過去発生した解任劇を、古くは戦前まで遡って解説している。1冊で10社の事を纏めているのでざっくり感は免れないが、ポイントはしっかり押さえられている。
会社組織、特に経営陣の人事が、如何に人間臭く泥臭いかが分かる一冊。
Posted by ブクログ
本書の紹介文にある通り、名だたる大企業。トヨタ、JR、住友銀、関電、帝国ホテル、フジサンケイグループ、日産、神鋼、東芝。これら大企業10社の社内抗争劇について。本当かは分からない、週刊誌のような記事でもある。だが、これも紹介に書かれるように、実際に企業はビジネスの場であると同時に、政治の場でもある。従い、社内抗争は自然発生的に起こるものだろう。だからこそ、これを抑止して最大限収益に目を向けるガバナンスが重要だ。
「リアル・半沢直樹の世界」と書かれるようにその迫力やドロドロ感は確かなのだが、残念なのは、取り上げられる事例が、少し古い。現役については書けない事もあるだろうし、中々こぼれ話も出てこないのだろうか。出てこないのだとしたら、徐々に企業の体質は改善しているとも言えるのかもしれない。
今、とある会社の重役による違法薬物疑惑が業界を賑わしている。「裏話vsホットな話題」という、ディープな世界か、浅くてもホットで臨場感のある話題か。本書は、前者である。なので、鮮度は低い。鮮度が低いネタではあるが、ガバナンスの観点を学べるという点と、その分よく聴取されているという所が本書の魅力だ。
著者の視点で切り抜かれた部分や独自の表現も当然ながらあるが、その魅力を伝える部分を一部抜粋。
― 石田の社長在任中の最大の判断ミスは、一九五九年にトヨタの本社所在地の地名を挙母市から豊田市に変えたことだ。奈良時代から一三〇〇年間、挙母と称されてきた歴史ある土地の名前が、トヨタの三河モンロー主義の近視眼的な判断で消えてしまったのだ。トヨタの本社所在地の表示は、挙母市大字下市場字前山八番地から、豊田市トヨタ町一番地に変わった。歴史ある地名をして、自社の名前をつけるとは、思い上がりもはなはだしい。傲慢だと批判された。ホンダの対応は好対照だった。本田技研工業が三重県鈴鹿市に鈴鹿製作所を建設する際、鈴鹿市側から「本田市」に名称を変更する意向が伝えられた。ところが、創業者本田宗一郎は丁重にこれを断った。「古来より伝統ある市の名前を一企業の名前に変更すべきではない」というのが、その理由だ。
― 『フライデー』誌の質問に対する亀高の答えは、「木島さんが亡くなったあと、その家族の方の就職の面倒を見るといったことはあったかもしれません」である。この点を、広報幹部にただすと、「調べたことがないので、事実関係はわからない」「何故、調べないのか?事実でないなら、はっきり否定すべきではないか」とたたみかけると、(否定せず)で終わった・・・神鋼が児玉誉土夫、木島力也に食いちぎられる原因をつくった経営陣の内紛は、まるでガン細胞のように社内を蝕んでいたのである。
― 帝国ホテルの筆頭株主となった金井は一九五三年(昭和二八年)四月一六日、帝国ホテルの会長に迎えられた。だが、犬丸は金井に挨拶もしなかった。金井を無視してワンマン経営をつづけたため、激烈な抗争に発展した。金井犬丸対決がピークに達したのは昭和三一年。横井英樹が帝国ホテルの株を買い始め、それに呼応して金井が株を買い増した時だ。見るに見かねた大株主で取締役だった朝日麦酒(のちアサヒグループホールディングス)の山本爲三郎社長らが仲に入り、横井の買い占めた株式は犬丸社長らに、金井会長の株の一部は山本爲三郎社長と親しい日本冷蔵(のちニチレイ)に持たせ、日本冷蔵の木村社長が監査役に就任し、金井会長には代表権を与えることで、金井大丸戦争は一時休戦の形となる。