あらすじ
「寂しい大人になりたくない」吉谷美鈴。
「馬鹿な大人になりたくない」雨宮達彦。
「ぼくは一体、どんな大人になりたいんだろう」と、本書の主人公・秋庭樹。
中学2年の4月、進路指導調査書を白紙で提出したことを、担任からとがめられ、樹は自分の将来について、否応なしに考え始める。
実業家である父親は、小さな建設会社を足場に、高利の貸付、土地の売買、レストラン・スナックの経営などで成功をおさめていたが、地元の人からはよく思われてない。
父が経営する店の一つ、トップレスバー〈フラワーヘブン〉の踊り子・ナンシーさんの踊りを見て以来、彼女のことが気になって仕方がない――。
幼なじみである、成績抜群なのにどこか冷めている達彦・病弱な母に変わって家庭をやりくりする美鈴。地方都市の小さな町を舞台に、中学2年生の幼馴染み3人組が、迷い、悩み、成長していく姿を瑞々しく描く。
文庫化を機に、19年ぶりに大幅改稿。5年後の3人を描いた中篇「フラワーヘブン」を特別収録。あさのあつこの原点ともいえる、傑作青春小説。
感情タグBEST3
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地方都市の小さな町の中学2年生、幼馴染男子2人と女子1人の物語。
男子2人が進路調査票を白紙で提出したことから物語が始まる。
進学するのか、どこの高校を目指すのか、親が成功者で様々な企業展開をし、
風俗営業もすることから黒い噂のある父をもつ主人公の樹と成績優秀だが、
学校に意味を見出せずサボりがちな達彦に2人に付き合うヒロイン?の美鈴。
3人の思いが展開していく青春物語。
単行本が出たのは1998年で中学生の青春物語だったが、
18年後に文芸誌で発表された、大学生になったその後の物語が追加されて、
19年を経ての文庫化。
中学生の物語が、フラワーヘブンという物語が加わることで、
パソコンの普及がこれからって時代から、一気に現代の物語に変わり、
90年後期の小説という感覚が一新された。
当時はまだまだITという言葉は言われていなかったかな。
追加のフラワーヘブンを読むことで、感動が生まれました。
Posted by ブクログ
地方都市の夜のお店も経営する屈指の実業家の子どもで中学2年生の秋庭樹は、吉谷美鈴と雨宮達彦と幼なじみのクラスメイトです。進路指導調査書を白紙で提出した樹は、思い描く将来のことがよくわからない状態です。樹は父親の経営する「フラワーヘブン」というトップレスバーで、スポットライトを浴びて踊るフィリピンから来たダンサーのナンシーに惹かれます。悩み成長していく主人公たちを描いた青春小説です。20歳になった樹たちの物語も掲載されています。
中学生が主人公の青春小説ですが、夜の街を知っている大人に読んでもらいたいお話です。
Posted by ブクログ
自分自身のなかに、きちんと正しさを持っているのは、貴重なんじゃないかなと思います。それを貫くことは、はたから見ると大変だと思うけれど、本人からしたら、当たり前のことなんだろうなと。それ以外にはできないないことだから、周りから見るほど、自分を保つのは苦労してるわけではない気がします。
回りくどい(笑)。
夢を捨ててほしくなかったってあるけど、二十歳じゃ、まだまだでしょう。40、50歳になってどうなってるかだと思います。
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20年以上前に発売された著者の青年期の体験が基になったような作品。そういった意味では著者の原点とも言える作品かもしれない。
どんな大人になるか。それは誰しもが一度は考え通過するところ。しかし、それを考えるときは大抵具体的なビジョンは描けていないもの。ただ何となくという漠然としたものを持っているにすぎない。そんな中学生たちの葛藤と成長の姿を描く心地よい作品。
Posted by ブクログ
中学2年生という多感な時期の少年を主人公に、その友人や親との関わり、大人の価値観とそれを簡単には受け入れられない思春期特有の心理が描かれています。
大人になるにつれて「世の中では真面目に純粋に生きることはできない、それを手放すことが大人になることだ」という事をなんとなく感じながら、色々なものを手放していったりするわけですが、その「手放したもの」の中に、人間にとって大切なものが入っているのだろうな、そんなことを思わされました。
「中二病」という言葉があるように、大人になってから青臭いことを言っていると嘲笑されたりすることもありますし、人間本来の持つ「正しさを追求する」ことを渇望するのは確かに生きにくさを感じることだと思います。
ただ、他人が何を言おうが守る価値のあるものは存在しており、それは多数決でも一般常識でも測れるものではないし、そういうモノサシとは違った次元のところに大事なものはあるんじゃないのかなと。
読み始めた時は、もはや中学生の主人公たちに感情移入なんかできないのでは?と思ったりもしたのですが、作者の表現力なのか、全くそんなことはありませんでした。
まぁ自分自身、中二病的なところがあるので余計かな。