あらすじ
『日比谷公園の鶴の噴水が歌を唄うということですが一体それは真実でしょうか』──昭和九年の大晦日、銀座のバーで新聞記者・古市加十に話し掛けてきたのは、来遊中の安南国皇帝だった。奇妙な邂逅をきっかけに古市が皇帝の妾宅へ招かれた直後、彼の眼前で愛妾が墜死、皇帝は忽然と行方を晦ましてしまう。この大事件を記事にしようと古市が目論む一方、調査を担当する眞名古明警視は背後に潜む陰謀に気付き、単身事件に挑む──。絢爛と狂騒に彩られた帝都・東京の三十時間を活写した、小説の魔術師・久生十蘭の長篇探偵小説。初出誌〈新青年〉の連載を書籍化、新たに校訂を施して贈る。/解説=新保博久
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Posted by ブクログ
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いやー驚いた。
怪奇系ミステリかと思って読み始めたので、びっくり。
げにおそろしきエンタメ小説である…! ん? 誤用か? まぁいいやまさか昭和初期の探偵小説で上質な入れ替わりコメディ読まされることになるとは思いもしなかったし驚きのあまり誤用くらいすらぁな。所謂十人十色の推理合戦、がこういうふうに使われるとは。脱帽。
そしてその中に溢れる機智と諧謔と。あとはもう、なんと云ってもことばの、台詞の、筆致のセンス。そのセンスを、これでもかと緻密な文章で描き出している。絢爛、とはこういうことを云うんだろうな、という文章。だから、そんなはずはないのに読み易い。たまらん。
昭和初期の東京は三歩歩けば奇書に当たると聞いたけど、果たして。☆4待ったなし!
Posted by ブクログ
幻想的な昭和の東京の大晦日から元旦にかけての短時間に起きた出来事を多方向から。
「作者」目線で物語が進められていくのはかえって新鮮?
結局はやくざ崩れの抗争でしかなかったというのが肩透かし感なのだけど。
悪役か、という風貌の真名古が結構、人間味のある人で、重要な役どころであった加十の呆気ない死に様にちょっと残念。