あらすじ
羽生善治氏を破った20代の新名人はいかにしてその勝利を掴んだのか? そこには理想をイメージする圧倒的な思いの強さ、それを現実化する緻密な思考力があった。将棋ファンからビジネス、人生設計……全ての夢を持つ人に贈る一冊。
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2016年、羽生先生を破って26人目の名人になった、佐藤天彦さんの書籍。
棋士の本は論理的で非常に読みやすいが、今回内容で特に印象に残ったのは、
「彼に負けたのなら仕方がない」と思われるように
という項目だった。
棋士は誰でも負けることの辛さを知っているし、時には相手の人生を変えてしまうような勝負に勝たなければならない。
この時に、自分が傲慢で、相手に「なぜあんな奴に負けたのか」と思われると、自分もつらいし相手にも良くない。
そうならないために、将棋の強さももちろんだけど、将棋に対する姿勢や立ち振る舞いも磨かなければならない。
羽生先生のファンだけど、こういう考えを持った20代の人が名人を獲ってくれて、今は良かったと思います。
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職場の地下の本屋で偶然見つけて、同年代で将棋界のトップといえる名人位を獲得した人がどんなことを考えているのか知りたくて購入。
基本を大切に、目の前の勝利や名誉に囚われるのではなく、目指すべき理想や本質的な部分での成長を見据えて、できることから取り組んでいくこと。自分を追い込むというより(それが必要となることも当然あるけれど)、自己否定せず環境を整えるという方法もあることなど、明日からまた頑張ろうと思える一冊でした。
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この本は2017年の発売なので、天彦さんが名人に在位していた時に書かれた本ですね。
それまで14年間、羽生さんと森内さんとで持ち回り状態だった名人位を突如奪った若きホープに主催社の朝日新聞社が、なぜあなたは名人になれたのか、それを1冊書いてくれと言われて書いたのではないかと想像を逞しくしてしまいます。天彦さんも律義にハウツー本になるようにしようと頑張って書いている感じがまた微笑ましいです。まぁ、そんな貴族なのに真面目な天彦さんが私は好きなのですが。
天彦さんの将棋一途でないところが良く出ていると思いました。
Posted by ブクログ
棋士・佐藤天彦さんが、将棋での経験を通して確立してきた考え方について語った本。
目先のことに囚われすぎず、長い目で見て物事の本質をつかむこと。物事の本質をつかめれば、それが長い人生の中で必ず役立ちます。
何事もまずは「楽しむ」気持ちを持つことも大事です。楽しむ気持ちを持つことで心に余裕が生まれます。心に余裕を持てば、思考の幅も広がります。
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棋士の方の文章が好きでよく読んでいる。16年羽生さんを破り名人位、同年叡王戦優勝と今最もアツい棋士の一人。そんな方がどのような文章を書くのか興味があって購入。
ぱっとした見た目から、すごく真面目そうという印象。趣味がクラシックとファッション、あだ名が貴族、むむ、なんだかものすごい中2臭がするぞ、ということで好みの人物像であった。
読んでみると非常に謙虚な文章でますます好きになった。また、ファッションに興味を持ったきっかけのコラムがあったが単にナルシストであるわけではないようで、自分は他の人からすれば変な格好をしているかもしれないと思いつつ、でもひとそれぞれ自分がいいと思う格好をすればいいじゃないか、というスタンスらしかった。素晴らしい。私はかっこいいと思ってます。
これからのますますのご活躍を祈念しております。
Posted by ブクログ
佐藤天彦先生の本。
独特のファッションと髪型で貴族というニックネームでも有名な、数少ない名人位経験者です。最近では、振り飛車も指し芸域を広げているが、その辺の経緯も本書に触れられていました。
昔、週刊将棋という読み物があり、当時の才能あふれる奨励会員(三段)の特集「平成のチャイルドブランド」が組まれたことがあります。そのメンツとは、豊島、広瀬、糸谷、中村太地、戸辺、稲葉、そして佐藤天彦という当時勝ちまくっていて仲間内でも1目置かれていた連中。時代は羽生七冠ブーム前後なのでポスト羽生の金の卵有力候補としてクローズアップされた記事でした。
また天彦先生は奨励会三段リーグで次点2回(順位3位)を取りフリークラス(順位戦にだけ参加出来ないプロ棋士四段で、順位戦復帰には30局以上の対局でいいとこ取り勝率6割5分が必要)編入の資格をゲットしていましたが、その権利を放棄して見事4期後(!)にトップ2位通過を果たし18歳で棋士(四段)になりました。その後、この権利をゲットしながら行使しなかった人は現時点でもいません。ちなみに、行使しなかった時点で次点数は2から1へと減らされます。コンスタントに勝っていたはずの天彦先生でさえフリークラス権利放棄から2年4期もかかった事実。加えて26歳という年齢制限もある奨励会突破の難しさが良くわかる事例です。
最近(でもないか)の話題では、コロナ禍での2022年末A級順位戦対局中にマスクを長時間していなかったとの相手棋士(永瀬拓矢王座)からのクレームで警告無しの初の一発レッドカード処分(反則負け、しかも天彦先生優勢の局面)に。もちろん、連盟臨時対局規定に「対局中はマスク着用」とあったものの、従来ならまずマスク着用を促すという事前警告があった。この件将棋ファンとしては、あくまでも盤上で勝負をつけて欲しかったし、マスク着用を相手に促すこともなく、即失格処分を主張した相手の勝利へのこだわりにも注目が集まりました。(ちなみに佐藤は日本将棋連盟に不服申立書を提出したが、2023年1月13日に連盟より却下された)
本書は2017年発売ですので、そんな話題は語られていませんのであしからず。
閑話休題。将棋界には因縁の対戦があります。文字通り、因縁絡みの負けられない対局という意味です。上記のような事情から佐藤天彦対永瀬拓矢戦もそうだし、もっと強烈なのが三浦弘行カンニング疑惑事件でしょう。
騒動の発端は、三浦の対局中の離席(特に久保利明との対局で30分以上離席したと久保利明が勘違いした事)や指し手の傾向(特に渡辺明との対局で三浦が局後の感想戦で示したコンピュータ将棋風の指し手)などを怪しんだ一部の棋士の告発によって、三浦がスマートフォンあるいはスマートフォン経由でパソコンを遠隔操作し、コンピュータ将棋ソフトを対局中に不正使用したのではないかとの嫌疑がかけられたことである。
日本将棋連盟の聞き取り調査に対して三浦は疑惑を否定したものの、調査のために休場することとなり、最終的には休場届の未提出を理由として連盟から出場停止処分が下された。三浦は第29期竜王戦挑戦者に決定していたが、出場停止に伴い挑戦者が丸山忠久に交代するという異例の事態となった。
その後、第三者委員会による調査が行われ、
・不正行為に及んだ証拠がないこと
・告発の理由とされていた30分以上の離席が映像分析により実際には存在しなかったこと
・告発の理由とされていた感想戦で示した指し手は事前に三浦が棋士仲間と研究していた手であったこと
などが結論づけられた。
連盟は三浦を復帰させた上で謝罪・和解し、三浦の疑惑が完全に晴れた旨を宣言した。
三浦の名誉回復と前後し、騒動の責任を取って、7人の日本将棋連盟理事のうち、谷川浩司(会長)、島朗(常務理事)の2名が辞任、青野照市(専務理事)、中川大輔(常務理事)、片上大輔(常務理事)の3名が臨時総会で解任された。(Wikipedia)
ちなみに竜王戦に急遽対戦相手となった丸山忠久九段はこの時点で連盟の一方的処分はおかしいと発言しています。
この一連の騒動で、竜王戦の挑戦者として勝ち上がった三浦弘行八段との対戦を拒否した渡辺明竜王、さらに自身の勘違いによって不正疑惑を招いた久保八段など、三浦弘行氏からすれば因縁の相手と言えるでしょうね。
ってことで、天彦先生も含め上記因縁絡みの対戦成績を調べました。(2024年6月末時点)
★永瀬拓矢:佐藤天彦=8:5
ただし、マスク騒動以降は佐藤天彦4勝1敗と巻き返しています。
★渡辺明:三浦弘行=18:10
騒動以降は三浦弘行4勝3敗!
★久保利明:三浦弘行=17:15
騒動以降は三浦弘行6連勝含む6勝2敗!
果たして、対戦相手に若干負い目があるのか、かつてのおさまらない怒りが勝利への原動力となっているのか興味のある所です。