あらすじ
<本と日本史>は「本」のあり方から各時代の文化や社会の姿を考え、当時の世界観・価値観を究明する歴史シリーズである。本書が扱うのは、親鸞聖人の手紙や『平家物語』などの「声の記録」だ。その当時、文字を知らない大多数の民衆には「声」によって文化や思想が伝えられていた。親鸞聖人が遠隔地の弟子に向けて語りかけるように書いた情感溢れる手紙を読み解き、当時の知識人と民衆の関係性を鮮やかに描き出す。また、同時期に成立した『平家物語』にも触れ、「声」が「文字」として書き留められることで成立した中世文化の誕生の背景を解き明かす。日本中世史学の泰斗による研究の集大成となる一冊。【目次】まえがき――中世を体現する本/第一章 親鸞の著述/第二章 中世の手紙/第三章 世の移り行きを書く/第四章 平家の物語/あとがき――中世の声と文学/参考文献
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
信仰における疑問を主題としてやり取りされた親鸞とその弟子や係累の手紙から、まとまった作品である著作には無い書き手の心情が映されている声を感じ取れるということ。歴史をテーマにした文学作品で、『保元物語』あたりまでは閉じた貴族社会内部にネタを取材していたが、さらなる武士の台頭をはじめとする中世社会の複雑化から『平家物語』においては書き手の貴族の知りえない広範囲の情報をも外部から取り入れられるようになったということ。
Posted by ブクログ
特に楽しみにしていた『平家物語』の章は、あらすじ紹介がメインで少し残念。
「鎌倉時代になって盛んになる京都と東国の文通は、簡単に行き来の叶わないところにいる相手への思いの中で書かれるために、内容も対象化されていることを見落とすわけにはいかない。」
こういう所は、意外と見落としがちな視点で、例えば自分の送った日付を入れることや時候の挨拶にも意味が浮かんできて面白い。
「『これこそ平家の悪行のはじめなれ』と記しているが、この一文は重要な意味を持っている。清盛の悪行が次々に起って、やがて平家を滅ぼすことになるのを暗示することばで、語りを聞く人には強く印象に残る。物語の作者と語り手は、人間世界を超えた高いところにいて、物語の結末を知悉している。」