あらすじ
「ものの集まり」や「連続」という素朴な概念。ここから広がる世界は実に深遠だ。19世紀にカントールが集合論の基礎を築くと、ラッセルを筆頭に様々な数学者がパラドックスや難題を発見した。それから現在に至るまで集合論は大発展を遂げ、今やその基礎概念は現代数学のみならず、論理を駆使する哲学にも欠くことができない。本書は古典的集合論の基礎を「集合の代数」「濃度」「順序数」の三部に分けて解説。コンパクトながら懇切丁寧な叙述で独習用としても最適。『数学序説』の著者による、定評のある入門書。
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Posted by ブクログ
集合論を、かなり高度な情報も含めてコンパクトにまとめた入門書。集合論の入門書には、位相空間などの内容を含めたものも多いのだが、この本は、集合論だけで一冊の本にしている。カバーする範囲も広く、集合論だけにしぼってそれなりの深さで知りたい、という向きには定番的な入門書だと言えるだろう。例もそれなりにあり、基本的にはわかりやすい。
ただ、記述を簡潔にするあまり、作者にとって自明なところがこちらにはわからなかったりもするので、おそらく数学プロパーでない人にははっきり意味を測りかねるところがたまにある。こうしたところは気長に取り組む構えが必要でしょうねぇ。
Posted by ブクログ
中学だか高校だかの数学で、確か集合論の超初歩は勉強した気がする。あの、Uみたいな、「カップ」というやつ。
さてこの本ではそういう基礎から入るが、瞬く間に私はつまずいた。「濃度」という用語が出てくるのだが、これが、「塩分濃度」などの一般的な「濃度」とはまったく違う意味で、なぜ何一つ共通点の無い表象に同じ日常語を用いるのか? と疑問になってしまった。良質な高校教師とかだったら、「これをどうして濃度と呼ぶかというと・・・」と説明してくれるにちがいないが、この本では割愛されていて、私の疑問は疑問のまま、もう真剣に読解を進める気が失せてしまった。
集合論は完全に数学の世界なので、どんどんどんどん話はややこしくなっていき、専門用語も矢継ぎ早に飛び出してくる。私の目には、どうしても数学者って狂気じみた人々というイメージだ。しかし非常に頭脳明晰な狂気である。
その狂気に満ちた世界を、この本は垣間見せてくれた(笑)。
ただし、集合の各要素(「元」という)は必ず独立した個体でなければ、この学問分野自体、成立しない。ゲッターロボみたいに、途中で3つのメカが勝手に合体して1個になられてしまってはわけがわからなくなる。もちろんアメーバが分裂して個体数が増えても困る。さて「完全に独立した個体」なるものは、日常のこの世界に存在するのかどうか。
まあ、高等な数学にはひきつった笑顔で敬礼しておこう。