【感想・ネタバレ】沖縄現代史 米国統治、本土復帰から「オール沖縄」までのレビュー

あらすじ

太平洋戦争中、地上戦で20万人強の犠牲者を出した沖縄。敗戦後、27年ものあいだ米国統治下に置かれ、1972年に本土復帰を果たすが、広大な基地は残された。復帰後の沖縄は保守と革新が争いながら政治を担い、「基地依存経済」の脱却を図る。
だが1995年の米兵少女暴行事件を契機に「島ぐるみ」による、2010年代には普天間基地移転・歴史認識をめぐり、保革を超えた「オール沖縄」による要求が国に行われるようになる。本書は、政治・経済・文化と、多面的に戦後沖縄の軌跡を描く。さらには中国の台頭による複雑化する沖縄の人々の基地感情も記す。

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Posted by ブクログ

【揺れる島々の話】戦後から先日亡くなられた翁長知事の当選までの沖縄現代史をまとめた作品。社会・政治・経済・文化に分けながら、時々の流れを詳述しています。著者は、特に戦後から沖縄の日本復帰までを専門とする櫻澤誠。


圧倒的な情報量が収められており、沖縄について考えを深める中で非常に有益な作品だと思います。とかく感情論に流れがちな議論を防ぐべく、限りなく抑えた筆致で歴史が綴られている点にも好感を覚えました。

〜基地の整理縮小の行方とともに、日本政府が基地と振興の「リンク論」を強めるなかで、沖縄21世紀ビジョン基本計画で沖縄県と県内市町村が一体となれるかが、これから計画を進めるうえで重要な課題となるだろう。〜

評判の高さは伺っていましたが☆5つ

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2018年08月13日

Posted by ブクログ

同タイトルの新崎盛暉『沖縄現代史 新版』よりも緻密な叙述。戦後の沖縄のあゆみ(米軍による占領から「オール沖縄」の形成まで)について、ある程度の知識があることが前提となっているように思う。正直、沖縄のことはよく知らない……という人はまず新崎盛暉『沖縄現代史 新版』を読んだほうがよい。
沖縄返還(本土復帰)前後の、沖縄の世論の変化に、いかなる力学が働いていたかを知ることができる。経済や文化的な側面は、新崎盛暉の本ではあまり取り上げられていない視点。

図表も多く、特に以下のものが参考になった。
・米軍占領期の統治形態変遷(p7)
・戦後沖縄の政党変遷図(p13)
・立法院選挙結果(pp41,48,54,82,93,99,124,136)
・主席・知事選挙の結果(pp136,172,199,234,240,276,286,295,305,319)
・在日米軍基地の変遷(沖縄と本土の比率、p168)
・沖縄振興予算の推移(p322)

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2017年12月31日

Posted by ブクログ

個人的に2000年以降の沖縄問題については昏かったこともあって読んでみました。読みやすかったし僕としては割りとフェアな筆致だったと感じます。
オール沖縄、というチーム組み、戦い方は、ちょっと泣かせますね。でも沖縄現代史の業ですが、きっと長続きはしないわけですが。
実はウクライナなどでまた戦争の足音が聞こえてくる中でいうと、日本の安全保障を考える上で沖縄は避けて通れない。

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2022年07月09日

Posted by ブクログ

沖縄史の研究者が、ち密な研究の成果を細かな出来事まで記載している本である。対象は、沖縄史を細かい部分まで理解したいひと向けであって、概略をつかみたいひとには少し冗長的であるのでおすすめはできない。

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2016年07月24日

Posted by ブクログ

 はじめは日本中世史を勉強しようと思っていたのが、卒論から修論、博論まで戦後の沖縄をテーマに論文を書き、沖縄現代史が専門になっているという著者による1945年から2015年までの歴史。「『沖縄問題』はとかく先入観を持たれがちである。近年でも、沖縄経済は基地に依存している、あるいは(略)。沖縄現代史についても、1950年代から本土同様の保革対立を前提とした理解がいまだに根強い。復帰運動は革新勢力が担ったものである、あるいは、保守=基地依存派、革新=基地反対派といった単純な理解もされている。本書で明らかにしたように、こうした先入観はすべて誤りである。」(p.347)というのがポイントであると思った。単純な二分法で収まりきらない話が「沖縄問題」と言うことなんだろう、と思う。ちなみにその「基地依存」については、72年度には15.5%が、90年度は4.9%で、「90年代に入る時点で基地への経済依存度は相当程度下がっていた」(p.219)、さらに観光収入が「基地関係収入の2倍近く」(p.220)ということらしい。90年代なので30年前?だけれど。でも9.11テロの時には風評被害があって「観光業と米軍基地は両立しない」(p.285)ということで、観光とか旅行は平和じゃないとできないもののはずだから、2つがあるというのは確かに考えれば単純な事情で済まされないということも分かる。「経済的に基地依存はやむを得ないという理屈は、沖縄県内ではすでに現実味を失ってきている。沖縄は基地があるがゆえに豊かな生活ができるという主張は、県内所得や失業率が長く全国最下位であり続けてきた一方で、返還地域の再開発が経済効果をもたらしている事実によって、空虚なものとなっている」(p.330)ということだそうだ。
 というのを理解したのが精一杯で、本自体は、人名や団体名がふんだんに出てきて、こういう話し合いをした結果こうなって、投票した結果がこうで、ということが事細かに書いてあり、これも通読しただけでは結局よく分からなかった。特に政治の話がメインだけど、現代の政治の歴史ってふつうの日本史でも難しくてよく覚えられないのに、それの沖縄版。なので正直斜め読みしてしまったところも結構あった。これから修学旅行の引率で沖縄に行く、ということと、それに関連して映画『宝島』を見たりして、沖縄についてもっとちゃんと知ろうと思ったのだけど、おれにはだいぶ難しかった。
 そんな中でも印象的だったところのメモ。まず、戦後の「復帰論」と「独立論」について。「復帰論と独立論の対立は、単なる『日本追従』論と『米国追従』論の対立だったわけではない。沖縄アイデンティティを保ちながら、いかに沖縄をよりよくしていくかの方法をめぐる対立であった。独立論はもちろん、復帰論もまた、沖縄の自治、自立を意味する『独立論』的思考は存在していた。双方とも戦争を拒絶し、沖縄の政治経済の安定を望むことに違いはなかった」(pp.33-4)というところは分かりやすかった。なんでも二分法にして理解するのは良くない、という話。あとは、前に修学旅行の引率をした時には、摩文仁の丘とか、確か他のところにも「京都の塔」みたいなのがあって、なんで京都?とか思ってたけど、これらは「都道府県慰霊塔」であるということすらも知らなかった。「都道府県慰霊塔の建立は、日本が経済復興から高度成長期に突入して自信を取り戻し、復興・成長の礎としての戦死者という歴史認識を共有かするために行われたもの」(p.115)ということだが、それらの共通する特徴の1つとして「沖縄住民への言及がない」(p.114)という特徴がある、という話。ちなみにその摩文仁の丘にある「平和の礎」も修学旅行で行ったが、これにもいろいろ問題があって、「沖縄戦の犠牲者数のなかで旧植民地出身者はほとんど意識されてこなかった。これが問題化されたこと自体が画期的」(p.268)だし、朝鮮半島出身者からすれば刻銘されることは「子々孫々永代の恥辱」(p.269)というのも、考えれば分かるけど、全然気づかなかったことがショックだった。あとは、戦後すぐには歴史認識というものが起こらず、そうするといつ、どのような歴史認識がどのようにして形成されたか、という話も興味深い。「一人ひとりの証言は個の体験だが、それが積み重なることで住民からの視点による沖縄戦認識が確立してくる。(略)そうした証言は、復帰に対する違和感のようなきっかけがあることで、集中的に湧き出してくる。戦後の手記・小説・映画や援護法の枠組みのなかで作られてきた日本軍を中心とする沖縄戦認識と、住民の体験をもとにした沖縄戦認識が閉蔵する状況になる」(p.161)というのは、常に歴史は捉え方がつきまとうということを表していると思った。あとは沖縄県立芸術大学出身の人と仕事をすることがあって、この大学の設立の意図も初めて知った。当時の知事の発言によると、「普通の県が普通の大学をつくるような発想ではない。沖縄の伝統文化、伝統芸能を残すために芸術大学をつくってそこで研究しながら保存し、さらに発展させることがどうしても必要」(p.208)ということだから、本当に使命感みたいなものを感じる。さらにこの知事は、「沖縄の心」とは、「ヤマトンチュー(大和人)になりたくて、なりきれない心」(同)、「ヤマトゥの文化に迎合することなく、誇りを持つ心」というのは、本土人には難しいことだけどちゃんと理解して尊重しようとする姿勢をできる限り持とうとすべきなんだと思う。だいぶ前に話題になっていた「歴史教科書問題」も、その時は不勉強だったけど、p.224に解説されている。「地上戦のなかで、一般住民が直面した戦争の悲惨な現実を重視する沖縄側と、日本軍との共生共死に重点を置こうとする国民史をめざす日本政府・文部省」(p.225)という構図がある。
 そういえば最近、沖縄に行くので沖縄のことが英語で書かれた教材を使って「沖縄の人は長生きだ」と書いてあったが、これもデータによると沖縄はもはや長寿県ではないということらしく、最初に紹介したところにあった、先入観だなと思った。とにかく人名、団体名がたくさんあって整理しながら読まないと難しいと思える本だったので、初心者にとってはもう少し読みやすい一般向けの沖縄現代史の本を読もうと思った。(24/10)

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2025年10月25日

Posted by ブクログ

沖縄の戦後から現在にかけての歴史についてまとめた本。先入観を持ちがちな沖縄現代史であるが、経済的な面において、基地への依存度はそれほど高く無いことなどの先入観を取り払う記述、他にも対立軸を明確にしながら記述を進めている点に特徴がある。沖縄現代史の初歩を知りたい人には有益。
本書を読み、考えたことの一つには、沖縄の未来を考える必要があるということである。沖縄は、日本復帰を肯定的に捉えている人、基地の必要性を肯定している人が大半であるものの、本土との「構造的差別」(不必要な基地が本土によって押し付けられている)に苦しんでいる。こうした状態で、どのような姿が今後あるべき姿なのか、ということを考える必要があるのでは?そして、それを踏まえて沖縄と向き合うかが重要なのでは?と思った。

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2016年01月07日

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