あらすじ
知的創造は形式的な模倣ではなく、その根本まで突き詰めることで初めて可能になる──。そんな明快な観点に立ち、一世を風靡した名テキストが遂に復活! まずは、計画の立て方、発想法、モチベーション管理といった知的生産に欠かせない土壌づくりからスタート。そのうえで、実際的な文章の書き方、読み方から批判的思考の秘訣にまで踏み込んでいく。さらに、付録としてフロイトやボルヘスなど偉大な先達が用いた手法をまとめ、自分なりの思考法を磨けるように構成した。文庫化に際しては、定評ある旧版の内容をさらに精選し、新たにコラムも増補。知的生産のすべてをこの一冊に!
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Posted by ブクログ
だいぶ前に一度読んだが、改めて仕事での「思考力プロジェクト」をきっかけに再読した。理路一貫した内容で、かつ語り口が味があって、ポジティブに知的生産に臨む態度が促される。松岡正剛よりカジュアル、立花隆よりシステマティックな印象。
立志:志を立てる
青春病克服:人生を設計する
ヤル気術:やる気を養う
気分管理:愉快にやる
発問・発想:問いかける
基礎知力測定:自分を知る
知的交流:友を選ぶ・師を選ぶ
知の空間:知的空間をもつ
知的生産過程のモデル:論文を書く
蒐集:あつめる
探索:探す・しらべる
知的パッケージ:分類する・名づける
分析:分ける・関係づける
読書:読む
執筆:書く
思考の空間:考える
知的生産のための思考:推理する
科学批判:疑う
思想:直観
発想法カタログ
自分が知的なことに関心をもつのは、
・世界の動きが「読める」ようになりたい
・人生を「意味づける」ことができるようになりたい
からだ。
その意味では、下記の二つの考える技術がとりわけ重要といえる。
発問・発想:問いかける
・みずから問いを発することができるようになること
・問いは知的好奇心からうまれる。知的好奇心は自分のなかの知的空白部、つまり欠如の感覚から出てくる
・問いを答えやすい形式にするのが、発想術だ
・あるテーマ(問い)が与えられたら、そのテーマを答えやすいかたちに分解したり置き換えたりするトレーニングが発想法の根本(テーマ分析法)・・・例。「日本のエネルギー危機をどうするか」
・問いそのものの位置をズラしたり、置きかえたり、分割したり、要するに動かしてみるというこのダイナミック発想法は、いろんな分野で発見を生む有効な方法
分析:分ける・関係づける
・分析とはとにもかくにも分けること、分解すること
・分析が必要なのは、問題にしている対象が複雑すぎるから
・ただ、分類・整理をするのではなく、分けられた諸要素間の関係や規則性を見つける
・論理の訓練も必要。帰納法と演繹法があるが、前者は発見的な価値のある方法であり、演繹法は思考の正しさを保証し、最短コースで回答にたどりつく経済的価値をもう方法
読書:読む
・読書の目的によって、読書態度も変わる
ー外在的読書:問いが本の外部にあって、本は手段にすぎない。速読法
ー内在的読書:その本を読むこと自体が自己目的であるような場合で、読み終わったあとの結果を何も予想しない。①学ぼうとする意識が強い求道的なあり方と②エンタテインメント的色彩の強い場合に二分される。前者は通読向き、後者は拾い読みでも構わない
・読むとは、本という客観と自分主観との合成物をつくること
・記憶術は、読書の一法。血肉化するための手段
①記憶すべきものの範囲をはっきり限定する
②忘却曲線を利用する(20分、9時間)
③記憶の場所性、空間性を利用
④記憶容量を一語に縮減
⑤自己講義法
⑥書写法(南方熊楠)
執筆:書く
・メモをとることは執筆への第一歩だ
・ノートに書くということは、この世にたった一冊しかない自分用の書物をつくるということだ。ということは、ノートにも本と同様、タイトルと目次とノンブル(ページ)が必要ということだ。ノートも小見出しをつける
・文学的文章を書こうとする場合には、感覚的なデータを集めることが必要になる。文章によるスケッチ・トレーニングは、島崎藤村や田山花袋など自然主義文学の作家たちがはじめたものだ。
・あつめたデータから構想をつくる。テーマをいくつかの小テーマに分け、それら小テーマを関係づけて組み立てた骨組みが構想だ。
・構想を構成のかたちに具体化するポイントは、文章を線である、肝に銘じること
・内容構成のテクニックで、柱をたてるという方法がある。
・パラフラフを掌握せよ
・語彙肥大症と文法肥大症。前者は、エピソードにつぐエピソード、後者はエピソードも具体例もなしにひたすら論理だけがストレートに展開していくケース
・フロベール型とバルザック型。前者は、将棋倒し式に書いていくタイプ、後者は、断片を先に書いてあとで組み合わせるタイプ
・カード式文章執筆法。
ー構想メモを何度もデータとのあいだを往復しながら、だんだんに「目次」の形をしあげていく
ー目次ができたら、それぞれの章や節で書くべきことがらを、カードにメモしていく(一枚一項目)(原稿の下書きをカードに書く)
思考の空間:考える
・考えるということは身体的行為・・・自分にあった思考のポーズを発見し自覚すること
・思考は言語行為であること・・・他人と対話または討論しながら自分の考えをまとめる
・物質的行為であること・・・ひとりでやる思考のトレーニングとしては、書きながら考える。
・考える場所は、ノート→書斎→牢獄→都市→異国→地球と広げていける
知的生産のための思考:推理する
・有効な問いのたてかたをまなぶ これが思考術のトレーニングのアルファでありオメガだ。
・だから、解答(生産物)が出ないような思考(労働)は、本人にとってはどんなに楽しいものであっても、知的生産にとっては失敗であり、時間の浪費にすぎない。
・解答がでるように問いの仕方を工夫することが、科学的思考における問題設定のポイントだ。
・科学的な思考は、まず「常識」にたいして異議を申し立てる。問いと答えとを直観でむすびつけて自明なことをしていた、それまでの思考法に反省をせまり、それにとってかわろうとする。「空想から科学へ」というわけだ。
・「慣性の法則は実験から直接に導かれるものではなく、ただ、観察と矛盾しない純粋の思索によってのみ得られる」
・あらゆる理論は一時的な仮説の状態にある
・科学の役割としての認識と応用
・歴史的思考と論理(構造)的思考
・科学の批判の思考:実験科学の思考方法、エコロジー的命題と文化人類学的命題
思想:直観
・節約モデルの思考と浪費モデルの思考
・パズル解きの科学から抜け出た問題領域での「考える」ことを、思考術ではなくとくに「思想術」と呼んでおきたい
・ぼくらはたんに受動的に世界を受け入れているのではなく、たえずそれに意味を与え、それを構成しつづけている。生きている、ということの証はこの「意味付与」ということのうちにある。
・浪費こそが、人生の価値と意味とを生産する
発想法カタログ
1 夏目漱石の「自己本位」の発想
2 翻訳文化のなかで考えるための多国籍思考
3 ウェゲナーの地図思考
4 フロイトの《痕跡読み》の手法
5 バシュラールの物質的想像力
6 ボルヘスの迷宮思考
7 ロジェ・カイヨワの対角線の科学
8 知のいたずら者たちのトリックスター思考