あらすじ
本物の思考力は、先人の文章を読むことによって磨かれる──。着想し、論理を練り上げ、効果的に表現するという言語表現のすべての過程に作用する「思考」。古今東西の思索者たちは、どのようにそれを働かせてきたか。本書では、彼らの文章を自在に切り取り、さまざまに組み合わせることで、そのパターンを抽出しようと試みる。そこで分類された10の思考法は、私たちが本気で何かを考え、ひとに伝えようとするときの確かな指針となるはずだ。知的実践の基礎技術を網羅した前著『知的トレーニングの技術』の応用編となる、画期的な試み。
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Posted by ブクログ
思考のための文章読本
著:花村 太郎
出版社:筑摩書房
ちくま学芸文庫 ハ 44 2
むずかしかった。文章読本というのにだまされてはいけない。
いろいろな思考を試みて、文章におとしていくのがいいたいことかとおもいました。
読み書き、考えるための話題や手法を提供するのが本書とある
そして、実用と探求の二段構えの文章読本である
思考しているときには言葉はかき消え、言葉に注目すると、思考がすり抜けてしまう
思考と言葉とは同時にとらえることができない、不確定の関係にある
記憶のストックの中から、方法的にヒントになりそうなものを例文として切り取ってまとめたものが本書である
単語の思考とは、語義を縮小する方向と、拡大する方向との2つがある
語彙の使い方は、意味論(セマンティクス)というより、語用論(プラグマティズム)の延長上にある
語源の詮索をするのではなく、そこから出発する、つまり、語義の由緒をただすことから、出発する思考もある
思考を正しく導く規則は四つある 明証の規則、分割の規則、順序の規則、枚挙の規則 である
反証、全部と一部を区別することからはじめよう
問いの思考ー明確に問うくせをつけるにはどうしたらいいのか、それは疑問文が明確かどうか、吟味する習慣をつけるということだ
ひとりで考えるときにも、自問自答している、つまり、自己内対話をしているわけだ
肥大化していくシステムはついには自己の否定にまで行き着く
通年では、国家や民族の文化をひとつの単位とするのが慣習になっているが、国家は人工的で恣意的なまとまりであるし、民族も学問的にはあいまいな観念にすぎない
特異点の思考は、デリタの脱構築という思考につながっていく
目次
序 思考の形態学
1 単語の思考―単語は巨大な思考単位である
2 語源の思考―原初の宇宙観に立ち会う
3 確実の思考―方法的懐疑と論理
4 全部と一部の思考―反証・量化・代用
5 問いの思考―思考に形をあたえる
6 転倒の思考―視点の転換
7 人間拡張の思考―メディアと技術の見方
8 擬人法の思考―どこまでがヒトか
9 特異点の思考―誇張法の系統樹
10 入れ子の思考―思考の原始構成
あとがき
文庫版あとがき
引用文献一覧
ISBN:9784480097491
出版社:筑摩書房
判型:文庫
ページ数:272ページ
定価:1100円(本体)
2016年09月10日第1刷発行
Posted by ブクログ
「知的トレーニングの技術」の応用編。文章例に見る、10の思考のパターンを筆者なりの視点で解説
単語の思考
語源
確実
全部と一部
問い
転倒
人間拡張
擬人法
特異点
入れ子
思考のための文章読本を読んでいて興味深いフレームワークは以下の3つ。
・ラングーエクリチュールースタイル
・論理ー思考ー思想
・一般ー特殊ー個別。
なぜ興味を引くかいうと、、
社会×個人を考えると、人間が自分個人の個別の状況を 理解するということや表現するということ、は人間が社会全体の状況を、普遍的に理解するということや表現するということと並列に捉えられる。その中心にあるのが言語だということだと常々考えてきた。この観点からは、ラングとスタイルというのは、それぞれ社会と個人に対応する。
他方、新鮮なのは、ここで提示されているのが、社会と個人という二分法ではなくその中間体があるということである。確かに普遍的な論理学と言うことでは、結局固有性が乏しいし、逆に、個人の文体スタイルを追求しすぎるあまり普遍性がないのは文字通り独りよがりになる。思考するということはこの中間体に相当するいうことであり、それを自分なりの個別の状況に当てはめるということだといえそうなのが、興味を引く。ここでいう「思考」はむしろ「学ぶこと」ととらえた方が適切かもしれない。