あらすじ
大統領選挙、日米関係、シェールオイル、銃、移民問題……。池上さんが、アメリカの今を現地取材、解説した一冊。大統領選挙で、日本はどう変わる? 超大国アメリカが抱える問題、世界に及ぼす影響について徹底解説! 2016年の大統領選は、結果がどうなろうと、日本にとってパンドラの箱を開けてしまったのです。日本とアメリカの関係はどうあるべきか、日本はどんな姿勢で外交や防衛に挑むべきなのか、あらためて考える時期が来ています。(本文より)<目次>●はじめに ●第一章 日本から見たアメリカ、アメリカから見た日本 ●第二章 世界最大の産油国、アメリカ ●第三章 銃を持つ国、アメリカ ●第四章 移民の国、アメリカ ●第五章 2016年大統領選のゆくえ ●おわりに
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Posted by ブクログ
池上彰さんの本は私の教科書。どの本もあちこちに付箋を付けながら読んでいます。知らなかったことがいっぱい。
戦後アメリカは日本に多大な影響を与えてきた。日本の自衛隊の前身は保安隊、その前身は警察予備隊。この警察予備隊というのはアメリカが日本に作らせたものだというのも知りませんでした。
キューバとアメリカが国交回復したのは記憶に新しいですが、背景には原油安があるというのも全く思いつきませんでした。それまでキューバは反米国家ベネズエラから原油の供給をうけていたが、そのベネズエラが原油安で大打撃を受けベネズエラを頼れなくなったキューバはアメリカと接近し関係回復、という構図です。
アメリカも大きな産油国であるのに、原油安で被害を受けたのが反米国ばかり。これは偶然か?と含みを持たせて書かれています。
この本はアメリカ大統領選前に書かれたもの。ドナルドトランプとヒラリークリントンの戦いを「いわば、嫌われ者どうしの戦い」だと評しています。政治経験がゼロで暴言だらけのトランプと、メール問題で国家レベルの危機を起こし隠蔽工作を働いたクリントン。無知で失礼なヤツか、信用ならぬ政治家。究極の選択だったと思います。そのどちらかを選ばなくてはいけないという葛藤は私の周囲のアメリカ人たちを見ていても当時ヒシヒシと伝わってきました。
本によると傍若無人なトランプの発言が実はしたたかに計算されたものであるということ。日本の核武装容認発言も「アメリカが国家衰退の道を進めば」という前提条件を付けてあり、イスラム教徒入国禁止も「米当局が事態を把握するまでの間」という前提。過激発言をしてマスコミに取り上げられる炎上商法も計算づくなのですね。
不法移民問題はアメリカが抱える問題の1つだが、「移民」そのものについては日本に置き換えても他人事ではないだろう。高齢化する日本人を支える若い世代の人口は足りず、外国からどんどん移民を受け入れるしかなくなっていくのかもしれない。言語の違い、宗教や文化の違いの受け入れ態勢を今以上に整えていかなくてはいけなくなるのかも。
私もアメリカでは移民。移民側がするべき事も多々あると思う。その国に順応しその国の言語を覚えその国の法やマナーに従って生活することは基本中の基本だと思う。移民として私を受け入れてくれたアメリカをリスペクトすることは、私自身の文化や言語を大切にしながらでも容易に出来る。こういうことは移民だけではなくヨーロッパに安住の地を求める難民にも言えるんじゃないだろうか。受け入れる側が寛容さを持つと同時に、受け入れてもらう側のそうした努力が摩擦が減るきっかけになると思う。
池上さんの本を読むたび少しずつ賢くなっていくような気がします。