あらすじ
かつて「科学立国」として世界を牽引した日本の科学とハイテク産業の凋落が著しい。経済の停滞にとどまらず、原発事故のような社会への大打撃を招きかねないイノベーションの喪失。その原因は企業の基礎研究軽視にとどまらず、政策的失敗にあったことをベンチャー支援策に成功した米国との比較から解明する。さらに科学の発見からイノベーションが誕生する原理を明らかにし、日本の科学復興に向けた具体的な処方箋を示す。科学と社会を有機的に結びつける“国家再生の設計図”。
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Posted by ブクログ
日本社会、企業が科学技術をどうみなし関わってきたかが分かりやすく解説されている。アメリカとの制度的、およびその背景にある考え方の違いが興味深い。学問の関わりを示す「分野地図」は覚えておきたいと思う図。原発事故等の個別の案件からの詳しい掘り下げも。
Posted by ブクログ
日本のイノベーションが途絶えた理由を具体的な事例検証も交えながら分析し、どうしていくべきかの提言までをまとめた一冊。表に見えている特定ジャンルの知の進化に邁進するだけではだめ。土壌の中で常に知の探索を進めていくことが重要。また、探索を探索で終わらせず、具体的な形にしていく支援の仕組みをもっと作っていかねばならない、ってなお話。新書でそんなにページ数多くないけども、中身が濃くて読み応えがあった。読む価値のある一冊だと思います!
・優秀な科学者が企業で飼い殺しにされて、新しいことにチャレンジできていないのが問題。優秀な科学者や技術者が企業を飛び出して、起業できる世の中にすることがイノベーションを生むための根治治療に繋がる。
・山登りのワナに気を付けろ!一度登ってしまった山を下りて別の山にいくのは、本当に難しい。たとえその山登りが死のハイキングだと薄々気づいていたとしても、ほとんどのケースではそのまま山を登り続ける。
・科学者にも既知派と未知派の両パターンがいる。企業にはどちらも当然必用だが、ひとたび山登りのワナにはまると、既知派が力を持ち、未知派の居場所がなくなり、次の種作りが進まなくなり、結果としてますます今登っている山を下りられなくなる。
・交易条件。国際競争力をみる指標。輸出価格÷輸入価格が1より大きければ国際競争力がある。
・米国の競争力の源泉はベンチャー起点のイノベーション。これが機能している背景には政府が取り入れたSBIR(small business inovation resarch)というプログラムがある。無名の科学者を企業家に転じさせる「スター誕生」システム
・市場規模が小さく、不確実性が高いものは、リスクが高く、大企業は投資をまわせない。しかし、次世代のイノベーションの種はつねに、その不確実性の先にある。このギャップを埋めるために政府が投資を肩代わりする仕組み。
・SBIRには3段階のステージがある。アイディアを探索するステージ⇒アイディアを具体化するステージ⇒ベンチャーキャピタル紹介等本格化するステージ
・1つめのステージで募集をかける科学技術のお題を、きわめて具体的に政府が提示する。政府の事務局が科学の知見を持ち得ており、どのようなジャンルのアイディアを具体化していくべきかを指し示せることが、この仕組みが成功している大きな要因。
・一方日本も、遅ればせながら日本版SBIRを導入するも、無名の優秀な科学者の冒険を支援するものではなく、中小企業の延命に使われる結果になってしまっている。
・科学とは、まだ誰も知らないことを知る発見するための研究。真っ暗闇の中をろうそくも持たずに自分の経験と勘を頼りに1人探検するようなもの。一方技術とは科学の発見を世に有用なものとして届けるための研究である。
・イノベーションダイアグラム。
既存技術⇒(演繹・守)⇒パラダイム持続型技術⇒(帰納・破)既存の知⇒(創発・破)⇒創造された知⇒(共鳴場・離)⇒パラダイム破壊型技術。
・トランスサイエンスの問題。科学がもたらす負の側面をどうコントロールするか。コントロールする人間側の判断の危うさをも理解した上でどう設計していくかを考えていかねばならない。そのためには、科学リテラシーが問われる。
Posted by ブクログ
日本の大学、企業の学術論文数は90年代後半から激減。
特に物理学分野で顕著。
アメリカSBIR(スモール・ビジネス・イノベーション開発法)
政府の外部委託研究費の一定割合を拠出の法令化。
応募して採択されると3段階に賞金を授与される。
1.可能性の探索競争:15万ドル
2.具体的にビジネス化の可視化競争:150万ドル
3.ビジネス支援:ベンチャーキャピタル紹介
研究者から企業家への仕組み
3つのタイプの科学者
1.研究者
2.プロデューサー(科学行政官)
3.イノベーター
博士号の純粋科学者がイノベーターになっている。
累計100億ドルの賞金に対し、収益は45倍にもなっている。
ノーマリーオフ
物理限界を超えない設計になっていなかった。
福島原発。福知山線。
寡占独占企業はイノベーションの必要がない。
減点法、いかにリスクに近よらず、幸せに過ごせるかという発想に陥る。
ブレークスルーしないと世界に通用しない。
リスク回避のための補助金ではなく、
リスクにチャレンジした者が利益を得る仕組みに。
知の越境
2つ以上の学問を関連付けながら修める。
誰もが科学する人へ。